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「平成25年度富士総合火力演習」リポート

射撃をする74式戦車
2013年8月20日開催

 陸上自衛隊は8月25日、「平成25年度富士総合火力演習」を静岡県御殿場市の東富士演習場畑岡地区で開催した。

 総合火力演習は陸上自衛隊が日ごろの訓練の成果を国民に知らせるために、毎年この時期に開催している公開演習だ。戦車や自走砲などといった実際の車両が目の前で実弾射撃を行う姿が見られる貴重な機会だが、見学するには事前にハガキやネットで抽選に応募する必要がある。毎年6月ごろになると募集が開始されるが例年その人気は高く、今年の倍率はハガキ応募が15.9倍、インターネットからの応募が21倍となった。特にネットの倍率は昨年の14.4倍から大幅に増え、注目度の高さが伺える。なお、応募の際には「青少年券」と「一般券」の2種類があり、来場者に29歳以下の人間が含まれる場合は青少年券で応募したほうが当選確率は高いそうだ。

20日早朝の東富士演習場。すでに点検射撃の準備を終えた車両が並ぶ
演習の合間といった空き時間には音楽隊による演奏も披露される

 Car Watchでは、8月20日に行われた予行演習の様子を取材した。予行演習といっても、本番の25日とほぼ同じ内容で演習が展開されている。演習内容は例年どおり、10時~11時10分までが前段演習、11時25分~12時までが後段演習として実施。その後、13時からは演習に参加した車両を間近で見学できる装備品展示も行われた。なお、演習開始は10時だが、6時30分ごろから1時間ほど「点検射撃」と呼ばれるテストのようなものが行われ、戦車などが演習前にひととおりの射撃訓練を実施する。少しでも多く実弾射撃の様子を見たいなら早めに会場入りするのがお勧めだ。

 前段演習では陸上自衛隊の主要装備を実弾射撃も交えながら紹介していく。昨年初めて演習で姿を見せた10式戦車はもちろん今年も参加。スラローム射撃などを披露した。これを目当てに見学しに来たという人も多かったはずだ。そのほか、特化部隊のりゅう弾砲射撃一斉射撃など見どころは多い。

10式戦車。最新鋭の主力戦車だけあって注目度は一番
スラローム走行中の射撃が一番の見所
90式戦車
74式戦車
203mm自走りゅう弾砲
99式自走155mmりゅう弾砲
155mmりゅう弾砲 FH70
りゅう弾砲部隊は会場外に配置された部隊と連携して射撃を披露。弾頭を空中で遅延させて炸裂させ、富士山を形作るサービスはもはやお馴染みだが、毎回見事に成功させる手際はさすがだ
89式装甲戦闘車
96式装輪装甲車
軽装甲機動車
軽装甲機動車から01式軽対戦車誘導弾を発射
87式偵察警戒車
87式自走高射機関砲
島嶼に侵攻する敵部隊を想定した演習

 後段演習はシナリオに沿って演習を展開するもので、今年も昨年に引き続き島嶼に侵攻した敵部隊を撃破するという内容で演習が行われた。まずは侵攻してきた敵艦船に対して洋上攻撃を行うという想定で、海上自衛隊のP-3C対潜哨戒機と航空自衛隊のF-2戦闘機が会場に飛来。その後は偵察ヘリによる情報収集、輸送ヘリによる偵察用オートバイや高機動車などの空輸が行われ、情報収集能力を強化しながら敵情を把握。偵察部隊が収集した情報を元に、特化火力による遠距離からの砲撃、地雷処理車による地雷原の処理が実施されたあと、戦車・装甲車などが投入され、敵を殲滅するという流れで演習が実施された。

海上自衛隊のP-3C(左)と航空自衛隊のF-2戦闘機。雲が低かったせいか昨年に比べて少し高度が高めだった
88式地対艦誘導弾によって敵艦船を洋上でできるかぎり撃破する。会場では射撃はされなかった
88式地対艦誘導弾の捜索レーダー
ヘリを使って偵察用オートバイや高機動車、普通科部隊(歩兵)などを次々と輸送。偵察を開始する
87式偵察警戒車、高機動車なども投入して情報収集
りゅう弾砲による射撃で陣地構築中の敵を撃破
りゅう弾砲部隊は味方部隊の前進を援護するため煙幕を発射
戦車などの前進を援護するため、92式地雷原処理車が地雷処理を開始。数珠のように繋げられた爆薬が炸裂し、地雷を爆破処理する
10式戦車と89式装甲戦闘車が機動性を活かして敵の前衛部隊を攻撃し、後続の突撃を支援
90式戦車が投入され、敵部隊に対して突撃を開始
煙幕と共に全部隊が演習場に突入し、状況終了となった
装備品展示の様子。平日ということもあって見学者はやや少なめ

 なお、今年は特に新しい車両などは演習に登場しなかったが、13時からの装備品展示には「12式地対艦誘導弾システム」が初めて展示された。平成24年に調達が開始されたばかりの最新鋭車両で、88式地対艦誘導弾システムの後継となるものだ。

12式地対艦誘導弾システム。車体は重装輪回収車をベースとした8輪駆動。三菱重工製
発射角の高さも特徴だそうだ

(清宮信志)