自衛隊のクルマ
御殿場の東富士演習場に、「平成23年度 富士総合火力演習」を見に行ってきました。これは陸上自衛隊の演習を公開する国内最大の火力演習だそうで、年に1度、8月に行われています。うーん、どう紹介しましょう。ミーハーな目線もあり、真面目に抱いた感想もありますが、とにかく……。
数日間で行われるこの演習の大きな目的は「自衛隊の学生さんたちに火力の効果と現代戦における火力戦闘の様子を認識させること」で、全国から見学に来ていた模様。また最終日の日曜日は一般公開し、「陸上自衛隊の様々な能力について我々一般国民が理解を深められるように」という広報活動の役割も担っているようです。外国の部隊や武官の方たちも招待され、日本の戦闘能力の高さを見せつけちゃう機会でもあるようでした。私は最終日の1日前、土曜日の演習に伺いました。
確かに実際に見てみなければどれだけ大変でさらにキケンかつ難しそうなことをやっているのか、そしてそのために日々訓練をしているのだということはわかりにくいもの。私も御殿場には試乗会や富士スピードウエイなどもあるため、わりと頻繁に行くことがあり、演習場の近くを通ることもあります。自衛隊の方たちを見かける機会もありますが、近づいても覗いてもいけない特別な場所とそこの人々……という目に見えない境界線がありました。
それにPCに“センシャ”と打ち込む場合は“洗車”の文字に用があるような私です。恥ずかしいことに、そもそも“火力”と聞いても「発電じゃないし……」なんて具合で、意味が分かりませんでした。火力演習とは銃や戦車などが火砲を用いた実弾射撃を行う演習が見られる特別な日です。
とにかくその音と迫力、そして緊張感は目の前で見学してこそ、よりリアルに感じられるもの。会場に入って迷彩色のヘリコプターを間近で見ただけで興奮し、一糸乱れぬ様子でやって来る戦車や装甲車の動きは、見る側にも緊張感を与えます。そして砲弾の大きさにもよるのですが、ドーンとかバーンという音と発砲時には後方で見ている私の体にバッバッバ~という衝撃波(というのでしょうか)が当たり、衝撃の大きさを感じることができました。ほぼ同時にドファ~と吹き出すような火炎が飛び出し、数百mから数千m先の目標で爆発が起きる……という感じです。本当に大きさにもよるのですが、戦車から発せられる砲弾の中には明らかに私の予測を大きく超えた音や迫力を持つものがあり、その大きさにはショックにも似た驚きがありました。衝撃を受けたのは富士の裾野の大地だけでなく私も同じでした。
そんな迫力に圧倒されていた私も、少し落ち着いてくると気になるのが、戦車や装甲車、ヘリコプターの種類や動き。御殿場の街中でもトヨタのメガクルーザーや三菱パジェロベースの軍事車両のほかに気になるSUV風なクルマに出会うことがあり、メーカーが気になるのは職業病でしょう(写真で紹介します)。
他にもキャデラックに採用される赤外線暗視装置の採用など当たり前であり、戦車にはシトロエンで知られるハイドロ技術が使われていることなども初めて知った次第です。観測ヘリコプターや戦闘ヘリコプターもカッコよく、輸送用のヘリコプタ-からはまるでクモの子が出てくるようにバイクに乗った隊員たちが次々と出てくるし、クルマの中から人を満載したクルマが出てくる様子にはショーを見ているようなワクワク感がありました。
だんだんミーハー目線が出てきたでしょう? 総合火力演習は演習を見る価値はもちろんですが、見学スタンド裏のお店も面白かったんです。サーキットにレース観戦に行ったときの、グランドスタンド裏のような感覚に似ています。専門用語を活かしたネーミングのお菓子や実際に敷地内の売店で販売されている用品の販売、戦車や軍用ヘリコプターマニアにも好まれそうなグッズが売られていました。
用品と言えば、各地から見学に来ていた自衛隊員たちが身に着けていたバッグにもいくつか種類があり、どれもカッコよかったぁ。迷彩グッズはファッションでも身近であり、街中でオシャレに着こなしている人たちを羨ましく見る私にとって、目の前で見る“ホンモノ”がヨダレが出そうなほど魅力的に見えました。
リュックサックだけでも何種類もあるようだった。どれも実用性が高いのだろうなぁ | ブリーフケースっぽいものもカッコイイ | 個人的に一番気に入ったのがこの小さなバッグ。たすき掛けにして使っている方が多かった |
今回は一般非公開の夜間演習も見られ、戦車が採用しているキセノンヘッドライトの実力(数千m先まで青白い光が届いていた)に驚き、夜間ということもありより砲弾の火やミサイルの閃光、照明弾の明るさを真っ暗な演習場の中でリアルに見ることができました。「そう言えば今日は隅田川で花火をやっているんだったなぁ」なんてことを思い出したりもして……。不謹慎ですね。しかし演習という平和な環境下で見る私はこれが実戦にならなければいいなと、つくづく思い、願う気持ちも強まったのは間違いありません。あんなに激しくてキケンな事が実際に行われなければよいと……。
年間を通して、試乗会やドライビングスクールのお仕事などで行く機会の多い御殿場。道中の高速道路でも御殿場市内の道路でも自衛隊の方たちや彼らが乗る車両と出会うことも多いのです。以後、そういう方たちとすれ違う際には、以前よりも親近感を抱きそう。それから、車輌の種類などにも「あっ、あれは○○○だ」などと反応する自分が容易に想像できます。
火力兵器を用いた演習を目の当たりにできた今回ですが、自衛隊は東日本大震災では最大で7万人の自衛隊員の方たちを派遣し、現在も災害派遣活動を継続中です。今回はその様子も紹介されていました。20年以上この総合演習を取材されている方は、「“援助”と“軍事”行動は全く別の性格を持ちますが、“何かを護っている”ことには、共通のポリシーが存在しているようです」とおっしゃっていました。深い言葉です。
見学に行った直後から、冷蔵庫が閉まる「バンッ」という音や、どこかでお布団を干すのに布団をバンバンと叩く音、空を飛ぶヘリコプターなどの音に反応してしまいます。この日の砲撃の音や衝撃を思い出す日々がしばらく続きそうです。それに戦車に乗ってみたくなりました。どんな動きや音がするのでしょう……。
ちなみにこの総合演習は毎年一般募集により抽選で当たると実際に見ることができます。相当人気があるらしく倍率がかなり高いらしいのですが、おすすめです。まさに「百聞は一見にしかず」の世界を見て、知ることができます。
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2011年 9月 2日