【6 Hours of Fuji】富士6時間耐久レースリポート【6時間経過時】 トヨタが地元で優勝、力走の中嶋一貴選手がWEC初優勝 |
FIA 世界耐久選手権 第7戦 富士6時間耐久レースは、17時を迎えて感動のゴールを迎えた。優勝は、アウディの追撃を振り切ったトヨタ TS030 Hybird(7号車)が、トヨタ所有のサーキットである富士スピードウェイで見事地元優勝を飾った。特に、最終の4スティントは、すべて中嶋一貴選手が力走を見せ、最終ピットストップをタイヤ無交換という賭けに打って出たアウディ e-tron quattro(1号車)を振り切ってみせた。
トヨタは今年の第5戦ブラジルで新生WECで優勝を飾っていたものの、その時には中嶋選手は国内の選手権に参加するために欠席しており、中嶋選手にとってはこの第7戦での優勝が初優勝となる。スポーツプロトタイプカーの世界選手権で日本人選手が優勝したのは、1992年のWSPCにおいて故小河等選手が優勝して以来となる快挙を成し遂げた。
アウディ e-tron quattro(1号車) |
■最後のピットストップでアウディがギャンブルに
セーフティーカーの導入、そしてそのセーフティーカー導入の原因となった接触でのストップアンドゴーペナルティを科せられたことにより、1位のトヨタ TS030 Hybird(7号車)と2位アウディ e-tron quattro(1号車)の差は1分以上となり、トヨタがアウディよりも1回多くピットストップを行っても前に出れるだけのリードを確保したことで、レースはトヨタ TS030 Hybird(7号車)の楽勝という雰囲気がサーキットに漂い始めたとき、アウディは最後のギャンブルに出ることを決断した。
199周目に行われたアウディ e-tron quattro(1号車)のピットストップでは、これまでどのピットストップでも行われてきたタイヤ交換をせずに、そのまま送り出すという手に出たのだ。トヨタに比べてタイヤへの負荷が高いとみられていたアウディは、タイヤ交換をすると考えられていたので、これにはサーキットにいた関係者がみな驚かされたことは言うまでもない。
その結果、アウディの2台はタイヤ交換した場合に比べて14秒を節約することができ、トヨタ TS030 Hybird(7号車)の最終ピットストップの結果によっては逆転もあり得る展開になってきた。もちろん、タイヤを換えないということは、タイヤのグリップなどがきつくなり大幅なペースダウンを強いられる可能性もあるので大きなギャンブルだが、ドライバーもそうしたことに長けているA.ロッテラーだということもあり、こうした戦略にでたのだろう。
トヨタ TS030 Hybird(7号車) |
■最後は中嶋一貴が力走、日本車が日本人ドライバーで日本のレースで優勝
こうした雰囲気を打ち破ったのが、トヨタ TS030 Hybird(7号車)のドライバーである中嶋一貴。中嶋は、チームメイトのA.ブルツ、N.ラピエールよりも速く、コンスタントにタイムを刻み続け、2位アウディ e-tron quattro(1号車)の最終スティントを担当したA.ロッテラーを引き離しにかかった。アウディ e-tron quattro(1号車)が最終ピットを終えた段階で、30秒近くだった差はジワジワと開いていき、最終的には45秒差まで広げて、220周にピットインして最後の給油を完了してコースに戻ってみると、アウディ e-tron quattro(1号車)のわずか6秒前。そこから、トヨタ TS030 Hybird(7号車)の中嶋、アウディ e-tron quattro(1号車)のロッテラーという、フォーミュラ・ニッポンではチームメイトの2人によるデットヒートが展開された。
周回遅れのタイミングなどで一時的に縮まったりしたこともあったが、最終的には中嶋が12秒に差を広げて6時間のレースはチェッカーフラッグ。見事トヨタの地元日本で、自身のWEC初優勝を実現してみせた。表彰台に登った中嶋選手は、非常に嬉しそうな表情を見せており、遅くまでサーキットに残っていた熱心なファンから大きな歓声を浴びていた。
このほか、LMP2ではオレカ03ニッサン(25号車、J.マーティン/T.グラベス/中野信治)が優勝し、LMGTE Proはポルシェ911RSR(77号車、M.リーベ/R.リーツ)、LMGTE Amはシボレーコルベット C6-ZR1(50号車、P.ボーンハウザー/J.カナル/P.ラミー)がそれぞれ優勝した。なお、LMP1クラスにOAKペスカローロ・ホンダ(OAKレーシング)で参戦した佐藤琢磨組は、16位完走という結果だった。
オレカ03ニッサン(25号車) | ポルシェ911RSR(77号車) |
最後に、優勝を受けたトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏のコメントを記す。
「FIA世界耐久選手権でトヨタの強みであるハイブリッドシステムを搭載するTS030 Hybirdで初めて参戦した年にホームで勝利を挙げられて誇りに思っている。トヨタはこれからもモータースポーツ活動を通して、車の楽しさや可能性を広げていくとともに、世界のお客様に喜んでいただける“いいクルマづくり”に取り組んでまいりたい」
(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)
2012年 10月 14日