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岡本幸一郎のメルセデス・ベンツ Sクラス発表会を見てきました

独ハンブルグのエアバス社内で行われたワールドプレミア

 5月15日(現地時間)、ダイムラーは新型メルセデス・ベンツ「Sクラス」のワールドプレミア(世界初公開)を行った。これまで何度か、国内外のモーターショー等で、ワールドプレミアの場に居合わせたことはあるが、今回ばかりはちょっと訳が違った。「ワールドプレミア」という出来事の重みを初めて知った気がするほどだ。なにせ世界のラグジュアリーサルーンを代表する存在であり、メルセデス・ベンツのフラグシップである、Sクラスである。

 筆者も、これまで何台かSクラスを愛車としてきただけに、新しいSクラスがどのようなクルマになるのか、とても関心を持っている。写真では見ていたが、新型Sクラスの実車を目にするのは初めてだ。

 そんな新型Sクラスのプレミアの場として選ばれたのは、メルセデスとは一見あまり縁がないように思われる、独ハンブルグにあるエアバスのプラント兼デリバリーセンターだ。ここでは旅客機「A320」系をはじめ、世界最大の旅客機である「A380」の製造も行われている。

 ドイツ南西部のシュツットガルトに拠点を置くメルセデスが、なぜ北部のハンブルグ? しかもエアバス?と最初は思ったのだが、ステージでの説明を聞いて納得させられた。

 陸の王者であるSクラスと、空の女王であるA380は、ともにフラグシップであり、ラグジュアリーな旅を提供してくれる点でも共通している。そして、ドイツの北方に位置し、国内第2の規模を誇るハンブルグは港湾都市として栄えた歴史があり、非常に国際的な街である。これらのことから、この場所こそ、新型Sクラスのプレミアの場として最高に相応しいと考えたのだと言う。

 この日のために非常に手のかかったアレンジを施したという会場の建物の作りも目を見張るほど。言葉で表すのは難しいのだが、本当に大掛かりで、複数日にわたって展示を行うモーターショーのようなイベントならいざしらず、たった1日のためにこれほどのことを行うのだから驚かずにいられない。

 集まったのは、筆者を含め招待を受けた50~60カ国の約750人のジャーナリストら関係者。ステージでは会長のディーター・ツェッチェ氏ら関係者によるプレゼンテーションが行われ、この日の主役であるSクラスの登場のときを迎える。

シュトットガルトからプライベートジェットで空輸された車両が会場に到着し、降ろされている映像がステージで流された。その車両が、どこかからステージまで入ってくるのだろうと思っていたら、なんとステージ後方の大きな壁が一気に開いた。

 そして、A380が背景に置かれた手前で多数の花火が打ち上げられ、SLS AMGをはじめメルセデスのオールラインアップが一糸乱れぬ隊列で走る中を、Sクラスが走り抜けてステージまでやってきた。

 やや高い位置の座席から見ていると、これが現実に行われていることなのか、CGで作った映像なのか判別のつかない感覚だったのだが、Sクラスがステージに上がったときに、いま見ていたものはリアルであることを確信できた。なんという凝った演出なのだろう。

 そして、ステージ上に置かれた2台の新型Sクラスの後席から、何度もグラミー賞の受賞経験のある実力派R&Bシンガーであるアリシア・キーズさんが登場。自身のヒットソング数曲を熱唱し、ステージは最高潮を迎えた。まさかSクラスのプレミアの場で、彼女の生の歌声を聴くことができるとは思ってもいなかった。

A380をバックに新型Sクラスが登場
R&Bシンガーのアリシア・キーズさんを、ディーター・ツェッチェ氏が迎える

 新型Sクラスの第一印象についてだが、外観は、W221型に用いられたフェンダーやトランクの特徴的な処理は受け継いでおらず、ラジエターグリルはさらに拡大しているものの威圧感は薄まり、パーソナルな印象が増したように思えた。

 インテリアの仕立ての豪華さも印象的。大きくラウンドしたインパネには、大きな2つのTFTカラーディスプレイが与えており、操作方法も進化させたというから、実際に使ってみるのが楽しみだ。ボディーサイズは先代W221型に対して若干大きくなっており、居住空間も拡大しているとのことで、前後席とも広さは文句なし。空調には芳香など新機能を満載したとのことで、どんなものなのか、これまた楽しみである。

 アクティブセーフティについては、カメラやレーダー、レーザーなどのセンサーにより、自車の周囲で起こっていることを常に把握し、必要に応じて最適な方法で対処。また、センサー類の情報は部分的な自動運転にも応用される。パッシブセーフティでは、シートベルトにもエアバッグを内蔵したり、サブマリンを防ぐために座面にエアバッグを追加するなど新たな試みもみられる。

 快適性については、新型Sクラスに初搭載となる「マジック・ボディ・コントロール」に大いに関心を持った。これは従来の「ABC(アクティブ・ボディ・コントロール)」の進化版で、ステレオカメラで前方の路面の凹凸を認識し、路面状況に応じて瞬時にサスペンションを調整するというものだ。はたしてどんな乗り味を提供してくれるのか、楽しみだ。

 日本上陸は、おそらく東京モーターショーの時期になると予想するが、まずは1日も早く、この新しい世界一のラグジュアリーサルーンをドライブできる日が来ることを願ってやまない。

(岡本幸一郎)