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スズキ、軽トラック「キャリイ」を14年ぶりにフルモデルチェンジ

CMは「軽トラ野郎」として菅原文太、はるな愛が出演

キャリイの発表会ではCMに起用された菅原文太、はるな愛が登場した
2013年9月20日発売

66万5000円〜113万5050円

 スズキは8月29日、新型軽トラックの「キャリイ」を発表した。14年ぶりのモデルチェンジとなり、新型では悪路走破性や小回り性能の高いショートホイールベース車に統一、主たるユーザーである農林水産業の用途に合わせた。発売日は9月20日、価格は66万5000円〜113万5050円。

グレードは上級となるKX。フロントグリルやフォグランプの装備、オプションで助手席エアバッグが搭載。ウインドーはパワーウインドーとなる

 新型「キャリイ」は、2030mmの荷台フロア長をそのままに居住空間を拡大した。従来型はフロントタイヤの位置によりロングホイールベースとショートホイールベースの2タイプがあったが、新型ではショートホイールベースに統一。その特徴を活かし、3.6mの最小回転半径を実現した。

 ボディーサイズは3395×1475×1765mm(全長×全幅×全高)で、車両重量はグレードにより680kgから740kgまで。

 エンジンはすでに軽乗用車に搭載しているR06Aエンジンを商用車向けとして縦置きでフロントミッドに搭載。ボディーは高張力鋼板を随所に採用、衝突安全性を高めながら軽量化したという。

 その結果、R06Aエンジン搭載や50kgの軽量化により、JC08燃費は後輪2輪駆動、5速MT車で18.6km/Lを実現、クラストップの燃費となった。キャリイに搭載されるR06Aエンジンは直列3気筒DOHCで、各気筒あたり4バルブ、可変バルブタイミング機構VVTを備えている。最高出力は37kw(50PS)/5700rpm、最大トルクは63Nm(6.4kgm)/3500rpm。組み合わせるトランスミッションは5速MTと3速ATが用意され、駆動も後輪2輪の2WDと4輪駆動の4WDが選べる。

 キャビンはフロントウインドーを前方に移動、頭部の前方空間を拡大、旧型に対して運転席のヒップポイントを15mm後方に下げ、ステアリングからヒップポイントまでの余裕を拡大した。アームレスト付きドアトリムを採用、ドアトリム間は1310mmとなった。ドア開口高も30mm拡大、足元開口部を広げ、ヒップポイント高を20mm下げることで乗降時の足つき性を向上、長靴を履いていても足が出しやすくなったという。

 軽トラックといえば、業務で酷使されることもありサビの心配もある。新型キャリイではフレームに防錆鋼板を採用、荷台を含むボディー外板表面で3年、ボディー外板穴あき5年、のサビ保証を備えている。

 安全面では軽量衝突軽減ボディーの「TECT」を採用、フロントフレームやAピラー部を中心に抗張力鋼板の使用部位を拡大、バンパーなどを強化し、56km/hオフセット衝突法規に対応した。Aピラーは細く設計して前方視界を確保している。装備では運転席のSRSエアバックを全車標準。助手席SRSエアバックは上位グレードで4輪ABSなどとセットでオプション装備が可能。

 そのほかの特徴では、多数の収納、ペンホルダー、ショッピングフックの装備のほか、スペースやマルチリフレクタータイプのハロゲンヘッドライトの装備、上位となるKXグレードではクラス唯一となるフォグランプを装備、夜間の農道の走行に備えた。

下位グレードとなるKC。パンバーはボディー同色となる。助手席エアバックを装備しないと大きな収納が現れる
軽トラックに重要な荷台の特性が分かりやすい展示が行われた
初代キャリイ「スズライト キャリイ FB型」(1961年)も展示された

軽自動車に求められる性能を高め、一段と働き者になれた

 8月29日に都内で開催された発表会では、代表取締役会長兼社長の鈴木修氏があいさつに立ち、自身がスズキに入社して間もないころ、新型の軽四輪トラックを作るからと工場建設から担当、はじめて自動車作りを経験した車種が初代のキャリイだと話し、最新となるキャリイを見て「隔世の感がある」と感想を述べた。

 鈴木会長は一時期ほど軽トラックは売れなくなったとしながらも狭い道の日本では「依然として必要なクルマ」と話し、東日本大震災ではがれきがあふれた被災地から「お金よりも救援物資よりもとにかく軽トラック」という要望があり「貧者の一灯としてトラックを提供した」とのエピソードを紹介した。

 また、同社副社長の本田治氏は「今までキャリイは累計で420万台を販売してきた」と話し、キャリイの業種別のユーザー比率では52.1%が農林水産業であるとした。開発の過程では「設計者、企画を担当している者がお客様の現場に行き、実際の使い方を確認して意見を集めたした」と話し、乗り降りする様子を撮影して参考にするなどの過程が紹介された。

 そうした過程の中で完成した新型キャリイについて本田氏は「軽トラックに求められる性能を大幅に高めた。一段と働き者のキャリイになれたと思う」と評価した。

代表取締役会長兼社長 鈴木修氏
副社長 本田治氏
キャリイの販売台数の推移
国内軽トラックの市場
キャリイのユーザー業種構成比
新型キャリイの特徴
軽自動車の購入時重視点
キャリイのショートホイールベースの特徴
軽量化の内訳
キャリイの燃費
キャリイのサビ保証

 副社長の田村実氏からは営業方針についての説明があり、TVCMの放映や代替促進策を行うことが発表された。

 TVCMでは菅原文太と娘役のはるな愛を起用し「より身近に感じていただけるよう、映画のトラック野郎の菅原文太さんとはるな愛さんの強力なタッグで、認知をはかっていきたい」と話した。

 また、「国内の軽自動車市場は全体で前年割れしていて厳しいが、新型キャリイの投入で、スズキの軽四輪の全体の底上げをはかっていきたい」と、キャリイが拡販の要になることもとも明らかにされた。

副社長の田村実氏
キャリイのラインアップ
CMのキャッチフレーズは「軽トラ野郎」

「軽トラ野郎 農家★一番星」のTVCM

 キャリイのTVCMは映画の「トラック野郎」で一世を風靡した菅原文太とはるな愛を起用、トラック野郎ならぬ「軽トラ野郎」としてCMを展開する。農家での収穫された野菜をたっぷり積み込み、積載量の多さと積載状態で坂道を登ることで力強さを演出している。

キャリイについて出演の2人から語られた
室内の広さをアピールするはるな愛
知り合いにもキャリイをすすめると言う菅原文太

 劇中の運転は“娘”役となるはるな愛で、キャリイを買ったのもはるな愛という設定、菅原文太の「お前もすっかり、軽トラ野郎だ」に対してはるな愛が「野郎じゃない〜」と返すなどコミカルな掛け合いのあと、最後には「働く男はキャリイだぜ!」のメッセージで締めるというものだ。放映は9月17日から全国で予定。

 発表会には出演した両名が参加、自身も農業に携わりキャリイを含めて5台ほど軽トラを持っているという菅原文太は「うちにあるやつは窮屈だけど、これだと普通に乗っていられたから、毎年1台ずつこれに変えようと思っている」と感想を話し、「全国の農家はみんなキャリイでいこう!」とし、知り合いにもキャリイを勧めるという。

 小さいころから父親と映画トラック野郎を見ていたというはるな愛は「撮影の中で土のついたお野菜を運んでいたけど、坂道を走る姿が、素敵でした。自分のお店の仕入れはこれでいきたいと思う」と感想を話し「お仕事いただいてから、街の中にキャリイが走ってるのを見て、いろんなシーンで働く人達をサポートしてるクルマなんだと思いました。新型キャリイが仕事をサポートしていくことを願います」と軽トラックに関心を持ち始めたことを明かした。

軽自動車の増税は「弱いものいじめで悲しい」

 鈴木社長兼会長は報じられている軽自動車の増税に関する件にもコメントした。

 鈴木氏はまず「全体は取得税が廃止される、だけどそれが全部軽にかぶってくると。これ、弱い者いじめじゃないかと。率直にそう思いました」と話し、「日本は島国で道路が狭い。ちょうど軽自動車が商売にも通勤にも運搬にも使うには細い小さなクルマでいい。そしてシェアが41%になったということで標的にされるのはどうも弱いものいじめという気がする。理論を抜きにして弱い者ものいじめ。こういう考え方がまかり通るとなると、実に残念というよりも“悲しい”という表現のほうがあってるんじゃないか」と語り続けた。

 報道陣に対しても「(軽自動車のシェアが)41%あるわけで、ぜひ、味方になっていただいて、社会正義のためにバックアップをお願いしたい」と話した。

 鈴木氏はさらに続け「税金で大きいほう(クルマ)に追いやるのは国家にとって得策かと考えていただきたい」「(消費増税とあわせて軽自動車は)増税のダブルパンチになるのが、本当にいいのか」「軽自動車の部品を作っている会社は(登録車に比べて)零細企業が多い、そこも影響を受ける」と次々と懸念される事柄を語った。

 なお、鈴木氏の言う「弱い者」とは全国の軽自動車ユーザー。比較的低所得のユーザーが多いことと、過疎地ではクルマがないと日常生活すらままならないところもあるため、必要に迫られて軽自動車の複数所有をしている家庭などには打撃があるとしている。

(正田拓也)