ニュース
NEXCO東日本、外環道 三郷南IC~高谷JCTの工事現場見学会を実施
2017年度完成予定。完成後は湾岸線と常磐道を約15分で接続
(2014/6/5 15:56)
NEXCO東日本(東日本高速道路)は6月4日、2017年度の開通に向けて工事を進めている「東京外かく環状道路(外環)」の千葉県区間と呼ばれる三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間の工事進捗状況を紹介する報道機関向け見学会を実施した。
東京外かく環状道路は、「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)」「首都高速中央環状線(中央環状線)」と合わせて「3環状」と呼ばれる一大道路事業。首都圏から他地域に向けて放射状に伸びる各自動車道と相互に連携させ、交通環境を大きく整備する「3環状9放射ネットワーク構想」として各地で道路工事の用地取得と建設が進められている。すでに北側に位置する関越自動車道・大泉JCTから東北自動車道・川口JCTを経て、常磐自動車道・三郷JCTの先にある三郷南ICまでが開通している。
千葉県区間での事業計画は、初期計画が1969年に決定されたものの、当初の自動車専用道路を高架上に作る案に反対が出て、1996年に自動車専用道路を半地下構造にして道路両側に環境施設帯を設けるという現行方針にシフト。2015年度の完成に向けて事業が進められてきたが、用地取得などの遅れを受けて開通目標を2017年度に見直している。
整備区間はすでに開通している三郷南ICから、京葉道路・市川IC脇に新設される京葉JCTを経て、首都高速湾岸線と東関東自動車道・市川JCTを結ぶ道路となっており、開通すると湾岸線から常磐道までが現在の約40分から15分に短縮され、湾岸線から東北道までの所要時間も約30分になると予測している。
京葉JCT
今回の見学会は千葉県区間の南側に位置する京葉JCTを新設する工事現場からスタートした。千葉県区間は道路のほとんどといえる部分を「掘割スリット構造」という半地下で構成することが大きな特徴となっているが、それと同時に環状道路であるという基本コンセプトにより、既存の高速道路や国道、電車や地下鉄といった社会インフラとバッティングしやすいという弱点を抱えている。これにより、千葉県区間では既存の交通に影響を与えないよう、さまざまな特殊工法が用いられているという。
最初の見学場所となった京葉JCT予定地では、京葉道路とこれをオーバーパスする国道298号はそのままにJCTを成立させるため、新しい高速道路やランプウェイなどはすべて地下を通す計画となっている。
地上の道路を利用しつつ地下で工事を行うため、京葉道路と国道の両方に一時的な切り替え道路を作って交通を迂回させ、その間に地下に函体を構築するという手順を踏んでいる。とくに京葉道路では、2009年12月から4年間という歳月をかけて工事を完成させたとのこと。また、今後予定されているランプウェイの工事では、複数のトンネルを組み合わせる複雑な計画となっている。
京成本線交差部
千葉県区間のなかには、なんと駅の真下という場所も含まれている。京成本線・菅野駅は2013年度の平均乗降数が1日あたり4128人で、付近にある学校の生徒も利用する大切な社会インフラだ。この菅野駅に対する影響を最小限に抑えるため、この場所では非開削工法の「R&C(Roof&Culvert)工法」が採用されている。名前に使われているルーフは「水平箱形ルーフ」を指し、カルバートは「ボックスカルバート」を意味する。工事では、まず菅野駅と交差する予定地の前後を掘って作業スペースを確保し、地盤を保護するために地中連続壁を設置。そこに地上にある駅舎や線路などの加重を支えるために水平箱形ルーフを貫通させ、その下の地中を、作業スペースで組み立てたボックスカルバートを、逆側から牽引ケーブルで引きながら掘り進めていくという工法だ。
高速道路、国道、連絡路を構成する今回のボックスカルバートは、内部を3枚の壁で4つに仕切った高さ18.4m、横幅43.8m、延長9.35mという函体を4連2層で使用。R&C工法で世界最大級を誇る内容となっている。作業の進捗状況は、水平箱形ルーフの貫通が終了し、この場でボックスカルバートを組み立てる前段階とのこと。眼下の作業スペースに置かれた重機や作業員が小さく見えるほどの広大さだが、これでも予算を抑えるためにボックスカルバート2つを収めるだけに止めているということで、実際に利用されるボックスカルバートがいかに大きなものであるかがうかがえるとともに、その巨大な物体を、地中で引っ張りながら進めるという工事のスケールに驚かされた。
掘割スリット構造
当初計画では横幅40mで高速道路を高架構造とする予定だったが、予定地周辺がすでに市街地化されていたことなどから、千葉県区間では地表より低い場所に高速道路を構築する半地下構造を採用。換気と採光のため中央にオープンスペースを設ける「掘割スリット構造」は1回掘った部分を埋め戻すという手間のかかる工事のため、工費はおよそ3倍ほど必要となっているとのこと。
新葛飾橋
江戸川を北側に渡った先までが千葉県区間。国道298号の2本の橋の間に建設されている「新葛飾橋」は、橋桁などは完成し、路面となる床版など高架部を構築する最終段階に進んでいる。残る大きな作業は、都道451号を挟んで三郷南IC側に建設されている「東金町高架橋」との接続。すでに送り出し構台も設置されており、交通量が少なくなる深夜に都道451号を交通規制して作業する予定とのことだ。