ニュース

三菱ふそう、「実燃費」のよさを強く訴えた大型トラック「スーパーグレートV」商品説明会

スーパーグレートVを含む小型~大型トラックの生産ラインを公開

三菱ふそうトラック・バス エンタイヤービークル開発統括部長の中込和宏氏とスーパーグレートV プロジェクトリーダーのトーマス デッカー氏
2014年6月23日開催

 三菱ふそうトラック・バスは6月23日、神奈川県川崎市の同社本社にて、5月に発表した大型トラック「スーパーグレートV」の説明会を開催した。ターボチャージャーの改良などを施した新エンジン搭載により、実燃費で5%以上向上したことを強調、安全装備の標準装備化などを合わせ、プレミアムな大型トラックであることを訴えた。

実燃費は従来比5%向上、他社に比べて最大10%向上

 説明会では、エンタイヤービークル開発統括部長の中込和宏氏とスーパーグレートV プロジェクトリーダーのトーマス デッカー氏が登壇、両者がプレゼンの中でもっとも強調していた点は「実燃費」。燃費改善に寄与した新エンジン「6R10」型は、国内初採用のアシンメトリックターボを採用、2つの非対称の排気ガスルームを持ち、独特の構造により高過給を高いEGRを実現したという。

スーパーグレートV プロジェクトリーダーのトーマス デッカー氏
エンタイヤービークル開発統括部長の中込和宏氏
三菱ふそうセールスジャパン 販売統括部長の倉田玲児氏

 さらに電子制御のウォーターポンプと冷却ファンを採用し、ウォーターポンプは流量を水温に応じて可変制御して効率的なエンジン冷却を実現、必要なだけ回すことで駆動損失も低減する。冷却ファンも同様で余分な駆動を低減しているという。

 また、排出ガス処理では径を拡大して排気抵抗を低減するとともに、断熱フロントパイプを採用して断熱性を改善、排気温度の低下を抑え、DPF(粒子状物質除去フィルター)によるロスを抑制した。

 この結果、中込氏は「従来型と比較して平均5%、他社と比較して最大10%、軽油とAdBlueを合わせた運行コストの削減が実証された」と自信を見せ、デッカー氏は「これまでにないもっとも低燃費な大型トラック。運転すればするほど節約ができ、節約すればするほどほかに投資ができる」と燃費の効果を訴えた。

 中込氏は実燃費以外に重量車燃費基準についても重視しているとし、「全車、燃費基準+5%を達成し、低排出ガス車認定車なのでエコカー減税の対象となる。お客様には実燃費による燃料コストの削減に加え、約55万円の減税を受けられる」と、さらにコストの優位性を訴えた。

 一方、燃費向上や装備向上により車両価格への影響は避けられない。値引きを含めた実際の販売価格についてはコメントを避けたが、三菱ふそうセールスジャパン 販売統括部長の倉田玲児氏は「差額は約2年間使っていただければ十分回収できる」として、コスト低減効果が車両価格の上昇よりも勝るとの見解を示した。

 なお、実燃費の燃費改善の数値には尿素SCRシステムに使用する液体「AdBlue」の消費削減も含まれている。AdBlueの使用量は従来比70%低減としている。

実燃費のよさをアピールする
他社に比べて実燃費10%の仕組み
全車燃費基準達成
新しい6R10エンジン
燃費向上の3つの新技術
排出ガスの効率アップ

基本はAT、安全装備も充実

 スーパーグレートVのトランスミッションは、カーゴ系はすべて2ペダル自動変速の「12段INOMAT-II」とAT化が完了。セミトラクタ系(トレーラーヘッド)は一部で7段MTも選択できるが、12段INOMAT-IIが基本となっている。

 中込氏はこの12段INOMAT-IIについてもよさを評価、「シフトチェンジのタイミングなど、実走行の中で実燃費に悪影響なくドライバーの意思に応える、というチューニングに大変気を使った」とし、自身でもハンドルを握り、公道テストをしてそのよさを実感しているとした。

 安全装備では、運転注意力モニターの「MDAS-III」、衝突被害軽減ブレーキの「AMB」、ブレーキオーバーライドシステムなどを標準装備。長尺のカーゴ系には、高速走行時に疲労軽減効果のあるオートクルーズを標準装備した。

スーパーグレートVに装備した安全装備
ブルーライン・デザインの詳細
スーパーグレートVの特徴

“勝者”を見分けるブルーライン・デザイン

 スーパーグレートVはエクステリア、インテリアでも装備の充実が図られている。環境に優しい製品である三菱ふそうの「ブルーライン・プロダクツ」となっているため、フロントグリルにブルーの色をあしらうとともに、シルバーミラーカバー、フロントスポイラー、シルバーライトベゼルなどを装備している。

 デッカー氏はこのブルーラインについて「皆様の成功をサポートする誇りと自信の象徴として、エクテリアにブルーラインを設定した」と述べ、「(ビジネスの)勝者を簡単に見分けることができる」と説明した。

 またインテリアや装備も充実させており、ブルーラインメーターリングやプレミアムインテリアを採用するほか、USB入力付きのオーディオの標準装備化などを実施している。

 なお、名称となる「スーパーグレートV」の「V」は、勝者を示す「V」、バリューを示す「V」のほか、5代目という意味も込められているという。

スーパーグレートV カーゴFS(8×4低床)、ウイングバン
スーパーグレートV カーゴ FU(6×2後2軸)、ウイングバン
スーパーグレートV トラクタ FP-R(4×2)
助手席ドアにはデカールが貼られる
衝突被害軽減ブレーキのAMBのセンサー。先行車との距離を計測する
運転注意力モニターのMDAS-IIIのセンサー。車線などを監視する
6R10エンジン
ターボチャージャーは右側にある
タイヤとホイールは仕様によって異なる
キャブは大型トラックだけあって高い。シートはサスペンション付き
ステアリングホイール
シフトレバーと各スイッチ類が並ぶ
メーターパネル。ブルーで縁取られていることが特徴
標準ルーフ、フルキャブの室内
バックミラーに相当するディスプレイ

川崎工場でスーパーグレートVを含む生産ラインを公開

 今回はスーパーグレートVの説明に加え、生産ラインの公開も行われた。公開された生産ラインはスーパーグレートVを含む、大型および中型トラックの生産ラインと、小型トラックの生産ライン。

 大型トラックの生産ラインは200m以上におよび、フレームに前後の車軸が搭載されたフレームが運び込まれた後、エンジン、補機類、キャブ、電装パーツ、タイヤを順に装着、完成検査までの工程が公開された。大型トラックとなるスーパーグレートのさまざまなタイプや、中型トラックのファイター、そして海外仕様車までが同じラインを流れ、次々にパーツが取り付けられていく様子を見学できた。

 また、小型トラックも同様にラインを流れる中、フレームにエンジン、キャブと装着され、最後に平ボディー車では荷台の装着までが行われた。小型トラックは生産量が多いため、昼夜2交代で操業しているという。

工場のラインの手前にも「実燃費No.1」と記されている
車軸まで付いた状態のフレームが運ばれてきてラインがスタート
パーツを付けていく
上から搭載するエンジンが運ばれてくる
降りてきたエンジンを搭載する
クレーンを操って所定の場所に収める
エンジンまわりのパーツを装着していく
だいぶ周囲のパーツが付いてきた
さらに装着されるパーツが周囲に並ぶ
キャブが上から流れて合流する
キャブが上から降りてきて合体
キャブとフレームの結合作業中
次にエンジンを動かすための油脂類を注入する。燃料も同時に入れる
最後にタイヤの装着
ホイールに組み付けられたタイヤが、ラインに合わせて横に降りてくる
トラックのホイールは重量があるが、床が持ち上がる構造により装着を容易とした
専用の機械でホイールナットを締め付ける
完成したトラック。これから検査工程に入る。検査工程は非公開
小型トラックのラインも、車軸が付いたフレームが運び込まれてスタートとなる
大型・中型と同様の工程でラインが流れていくが、小型は平ボディー等は工場で架装される
工場の奥にはキャブの生産ラインも見える
当日の計画台数とこれまでに生産された計画台数、スケジュールとの差が表示されていた。第2ラインは小型トラックで昼夜2交代制のため台数が多い
工場敷地には大型観光バスのエアロクイーンが展示されていた
イベント等で見かけることの多い「キャンター エコ ハイブリッドCanna」も展示

(正田拓也)