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NEXCO中日本、新東名 名古屋区間の崩落現場、沈下橋脚を公開

開通は2015年度末に延期。対策を紹介

2014年7月23日開催

実際に崩落した部分。現在は“抑え盛土”を行って上から対策している状況

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は7月23日、豊田工事事務所(愛知県豊田市)において会見を実施。2014年度末に開通予定としていた新東名高速道路 浜松いなさJCT(ジャンクション)~豊田東JCT間について、工期を1年延長し、2015年度末開通予定に変更すると発表した。

 この7月から金子剛一氏の跡を継いで同社の代表取締役社長CEOを務めることになった宮池克人氏は、この要因について「複数の切土のり面で地滑りの兆候や大規模な崩落が発生したこと」「自然由来の黄鉄鉱・重金属を含んだ土砂が推定以上に大量発生したこと」「橋梁基礎の沈下が発生したこと」の3点を理由に挙げた。

 それぞれの事象については「地滑りの兆候は2013年7月以来、額田、広田、設楽原、県境付近の4個所で見られ、これらの調査を行い、識者の意見などを加えていろいろと対策をすすめてきたところ」だという。しかし、それに加え「(建設中の)岡崎SA(サービスエリア)で今年2月に、切土のり面で大規模な崩落が発生した。これについても識者の意見を聞きながら対策を検討、着手したところです」としている。

会見を行った中日本高速道路 代表取締役社長CEO 宮池克人氏(左)と同執行役員 名古屋支社長 太田睦男氏(右)
「1日でも早い開通を目指して努力していく」と語る宮池氏

 2つ目に関しては「当初、想定していた範囲以外から非常に大量の黄鉄鉱重金属を含んだ土砂が出てきた。特に2013年6月ごろから大量に発生した黄鉄鉱を含んだ土砂の処理で、約50万m3ほどの土砂を場外に運搬して排土せざるを得ない事態となった」と述べた。

 橋梁基礎の沈下については「橋梁の下部工事を行ったあと、背面に土を盛ってきた段階で5個所が2~9cmほど沈下が発生してしまった。これらの現象が3個所の橋梁で、2013年11月のほぼ同時期に確認されたことから追加調査を実施。今年の2月に検討会を立ち上げ、有識者の意見を含めて対策を検討した。現在は工事の準備を行っている段階」だという。

 こうした想定外の事態が発生したことにより「工程を精査した結果、対策の完了に1年、2015年の夏から秋ごろまでが見込まれる。その後に舗装工事などを行うため、開通予定が当初計画していた2014年度末から1年遅れの2015年度末になる見通しとなった。地域のみなさま、ご利用いただくお客様のご期待に応えられなくなったということで、深くお詫びしたい」と頭を下げ、「これからは1日でも早く開通するよう、最大限われわれとしても努力をしていきたいと思う。ご協力とご理解のほどをお願いしたい」と締めくくった。

50万m3の残土を運搬、処理する必要が生まれてしまった

 宮池氏の説明のあと、中日本高速道路 執行役員 名古屋支社長の太田睦男氏が、詳しい状況について解説を行った。

 まず、地滑りとのり面の崩落については、「通常は工事着手前、調査段階では現地の地質、地形、湧水、過去の地滑りの状況などを調べ、それについて対策をしていく」と言い、今回のルートでは「(5段以上の切土のり面では)工事前の調査で対策が必要だとされていたのが7個所。対策しなくても大丈夫だろう、というのが29個所あった」と言う。その結果を踏まえ、対策が必要な場所に関しては変調がなければ予定どおり工事を進め、変調がある場合は追加の対策を行う。対策を必要としていなかった場所に関しても同様で、変調が見つかれば対策を行いながら施工していくと説明し、前者で2個所、後者で8個所の追加工事が必要になったと言う。

 そうしたなか、この2月に岡崎SA付近にある延長約1km、最大高さ約60mの切土区間において、のり面での大規模な崩落事故が発生。太田氏は亀裂は当初から存在したものの、堅い地質だと考えられていたが、全体の地質調査を再度見直したところ、亀裂の密度や深さ、方向を調査した結果、くさび状に崩落する危険性が見られたため「コンクリート製の“のり枠”を約3万m2、グランドアンカーを約370本追加する工事を行うことになった」と述べた。

状況説明を行う太田睦男氏
崩落が起きたのは岡崎SAから少し東京寄りの切土のり面
“現在地”の文字がある場所が崩落地点。左側にあるのが岡崎SA。この約1kmの切土では10本のボーリングを行って事前調査しているという
崩落時の状況。あとから詳細調査を行い“のり枠”約3万m2、約8~24mのグランドアンカー約370本を主体とした追加施工が実施されることになった
切土のり面の工事フロー
今後の対策
右側奥が東京方向。この切土のり面では120万m3の土砂を削り、岡崎SAの造成に利用している
現場の地質は新規花崗岩。非常に堅牢な地質のため、当初は植生にする予定だった
1段が約7mで、見えている部分では5段、40m弱の高さがある
一番上の段に見える十字の部分がグランドアンカー。その下が“のり枠”
“のり枠”の工事が進んでいる
上り線から見た東京方向。下り線(写真右側)が1段高いが、これから削っていく予定

 2番目の黄鉄鉱と重金属を含んだ土砂の発生については、事前のボーリング調査や成分分析により発生する想定はしていたものの、トンネル深部における推定量以上の発生、切土部においても調査時との地質境界の差異などにより大幅な誤差が出た。当初、黄鉄鉱100万m3、重金属30万m3と想定していたものの、それぞれ160万m3、90万m3と大幅に増加。処理に時間がかかる黄鉄鉱については「当初の計画では用地内の本線盛土に封じ込める計画だったが、50万m3ほど場外に運搬、処理する必要が生まれてしまった。この処理が来年夏ぐらいまでかかる予定」だと言う。

 新城IC(インターチェンジ)付近で起きた橋梁沈下については、2013年11月に3つの橋梁で見つかり、調査の結果、「大宮川橋」「名高田高架橋」「五反田川高架橋」「新城ICランプ橋」「宮下川高架橋」の5橋梁で、2cmから9cmの沈下を確認。2月から有識者を含めた委員会を開いて原因を調査した結果、「一般的な支持地盤より変形しやすい特異な地質であることが分かった」という。現在は沈下が止まっていることを確認しているが、鋼管杭を使った増し杭などによる対策を予定しており、2015年の秋ごろまでかかる予定だと説明している。

黄鉄鉱と重金属を含んだ土砂の推定と実績の差異
トンネル抗口部での調査による推定と深部での発生量に大きな差異があった
調査した地質境界と実際の境界による差異によっても処理が必要な土砂が増加した
増加した約50万m3を場外処理する必要が生まれた
橋梁基礎沈下が発生したのは、新城IC付近の約2km程度という狭い範囲
特異な支持地盤地質により構造物が沈下
鋼管杭による増し杭(マイクロパイル)、および薬剤注入による地盤改良で対策
沈下分は橋台(アバット)、または橋脚(ピア)と主桁の間にプレートを挟み込むことで対処
別の橋脚になるが、こういった部分にプレートを追加するイメージ
沈下した橋梁の1つである五反田川高架橋は“PRC8径間連続版桁橋”と呼ばれる構造
名古屋側(写真左側)にあるA1橋台の上り線が2cm、下り線で4cmの沈下が確認された
五反田川高架橋の豊田側。手前に見えているのがP1A橋脚、奥がA1橋台
A1橋台付近から名古屋側を望む。奥に見えているのは名高田高架橋
A1橋台手前から東京方向
上り線は橋桁が未完成
A1橋台と主桁。沈下といってもわずか2cmなので、見ただけではちょっと分からない
対策として使われるマイクロパイル
中身がない中空のパイプだ

新東名 名古屋区間の工事進行状況など

すでに舗装が始まっている場所も。これは郡会川橋(仮)
岡崎SA予定地。切土のり面からの土砂が運ばれ平坦になっている
岡崎SAは上り線側に上下集約型として建設されるため、下り線側から本線をオーバーパスする橋が架けられている
額田IC(仮)付近の工事事務所から見た桜井寺橋。新東名のこの区間は、5割強が橋脚とトンネルになる
額田IC(仮)付近の工事事務所に設置されていたパネル。すでに引き渡しが済んでいる場所もあるが、“発破予定”という文字も書かれているなど、現在進行形で工事が進められている様子が見て取れる
新城IC付近は戦国時代に武田軍と織田・徳川連合軍による「長篠の戦い」の舞台となった地。決戦場跡地には馬防柵が再現されるなど、開通した暁にはぜひ訪れたいスポットとなっている

(安田 剛)