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SUPER GT富士第2戦、GTA記者会見で31号車 TOYOTA PRIUS apr GTの搭載エンジンは別格とBoPの見直しを示唆

白バイ、パトカーによるスタート先導は健全なモータースポーツをアピールする狙い

2015年5月3日決勝開催

パトカーや白バイが先導して始まるSUPER GT第2戦富士。写真は先導するパトカーの前に立つ富士スピードウェイのイメージガール「クレインズ」。

 5月2日~3日の2日間にわたり、SUPER GT 第2戦 FUJI GT 500km RACEが富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催されている。予選結果は別記事をご覧いただくとして、本記事では決勝日となる5月3日に行われた、SUPER GTのレースプロモーターであるGTアソシエイション 代表取締役 板東正明氏の記者会見についてお伝えしていく。

 記者会見で坂東氏は、サーキット所在地の警察と協力して行っているスタート前の白バイ、パトカーによる先導パレード、今シーズンから導入されたマザーシャシー、GT300のBoPなどに関して興味深い発言を行った。

白バイ、パトカーによる先導パレードはモータースポーツ振興と青少年の健全育成が狙い

SUPER GTを運営するGTアソシエイション 代表取締役 板東正明氏

──今年のSUPER GTも岡山で開幕したが、第1戦岡山のレース評価を教えてほしい。
坂東氏:岡山では、サーキット側とも協議して、駐車スペースのあり方を細かくしたり、砂利の敷き方などを再検討してよりお客様に中に停めていただけるようにした。

 また、岡山のレースでは販売しているプログラムで新しい取り組みをした。具体的には各ドライバーに協力してもらい、スタジオを借りてカメラマン、スタイリストを準備して、ドライバーにモデルになってファッション誌のような写真を掲載し、新しいドライバーの付加価値を提案できる取り組みをした。自分も協力することになったのだが、当初は違和感もあったのだが、今はやって良かったと思っている。今までドライバーと言えばレーシングスーツ姿という認識だったと思うが、そうじゃない部分を見せることができたのが良かった。中でもジェームス・ロシター選手はかなり様になっていたよかった。

 今回のレースは岡山国際サーキットさんにとっても新しいチャレンジだった。スタンドの改装なども投資がかかることなので、1年に一度のSUPER GTのレースだけにできることは投資対効果を考えると難しい状況のなかでよくやってくれていると思っている。観客動員数に関しては、14年と比べて予選では300人増え、決勝は1000人減ってという形で、2014年が2万7000人、2015年が2万6300人となっている。雨という予報が出ていて実際ああいう天気になったことを考えれば、成功だと考えていい。

 岡山での先導という意味では、西部警察のシーンをどうしてもレースで再現したいと思っていて、各地の警察と話していた。昨年の富士戦でもやろうとしていていて、実際にサーキットで練習してもらうなどこともしていたのだけど、練習するとタイヤにマーブルがつくので落としたいというから、富士スピードウェイの東ゲートにあるオフィスの前でドーナッツターンしてもらってマーブルを落としてもらったのだが、そうしたら路面にブラックマークがついてしまい、GTAが富士スピードウェイに掃除してくれと言われてしまった(笑)。それを指示したのがGTA側なので(笑)。

 話を岡山に戻すと、岡山ではちょっとしたハプニングもあったけど(笑)、白バイ6台とパトカー2台で、最終コーナーを立ち上がるところで赤灯をつけてもらってサイレンも鳴らしてもらってかなりいい感じになったと思っている。今回の富士のレースでも白バイ6台、パトカー6台に先導してもらう。今回も練習してもらったのだが、最終コーナーから立ち上がってくる時には陽炎のように見えるので、赤が陽炎のようにテレビ放送に撮るのでそれをやって欲しいとお願いしている。なお、今年は最終コーナーを立ち上がってピットに入ってしまうのだが、来年はヘアピンぐらいまで引っ張れるようにとお願いしたいと考えている。

 今回の行政の方も多大な協力をしてくれている。すでに岡山でのビデオなどをよく研究されているようだし、今後も積極的に協力してやっていきたい。我々の希望としては、暴走族的な行いをゼロにしたいと考えている。モータースポーツの振興発展、青少年の健全育成、そうした観点から官民一体となってやっていきたいと考えている。今年はまだ難しかったが、来年にはもっと台数を増やして西部警察のように40台ぐらいでやれたらいいなぁと思っている。

スタートを待つ静岡県警スタッフ。決勝スタートは14時15分

──富士戦の前売り件の状況について教えて欲しい
坂東氏:前売りの売れ行きは昨年並みで、実際の来場者に関しては全年並みかそれ以上だと考えている。駐車スペースの工夫なども引き続き続けており、来場者による周辺の渋滞などもできるだけ起こらないようにと工夫をしている。そうしたお客様の動きなどもよく検討しながら、スタート時間も調整するなど工夫をしていきたいと考えている。

──昨年は10月に開催されていたタイでのレースが、今年は6月になっているが、その経緯を教えて欲しい。
坂東氏:タイのレースが6月になったのは、サーキット側の要望があったから。タイのレースが行われるブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットは、グレード1のサーキットだが、まだできたばっかりだ。11月にWTCCが開催される予定になっており、10月にSUPER GTが行われる事になると、施設整備、顧客への告知、オフィシャルの確保など様々なことを考えると難しい。ただ、WTCC側のカレンダーを見ると、どうしても11月にタイでということは理解できるので、サーキットのためにこちらの方を変えないといけないだろうと判断した。

 また、日本側サイドとしても、6月に変えると、ACO(筆者注:ル・マン24時間レースのオーガナイザー)との話し合ってきたル・マン24時間のテストデーとバッティングしてしまう問題が、ル・マンが6月13日~14日、タイ戦が6月21日となるので、解消できる。このため、日本の他のシリーズとなるS耐、スーパーフォーミュラのオーガナイザーとも連絡をとって迷惑がかからないように調整しながら進めた結果、この日程となった。

 なお、タイの6月の天候は、10月よりは降水確率が低いというメリットはあるが、気温は高くなる。雨が降ったらとんでもなく降るので、そこは一か八かなところはある。なお、現在10個のピットを追加で建設してもらっており、昨年の課題だった3台で2ピットとなる問題は解決する見通しだし、飛行機が1日1便飛ぶようになるなど、インフラも改善されつつある。スーパーバイクのイベントも成功したし、モータースポーツに熱心な国だけあって関心度は高い。

フォーミュラ用のエンジンを搭載している31号車 TOYOTA PRIUS apr GTのBoPに関しては何らかの見直しを

毎戦激しい戦いが続くFIA-F4

──今年からSUPER GTと併催されているFIA-F4は非常に盛り上がっているが、板東社長がシーズン前に約束していた成績優遇者へのスカラシップのような仕組みがどのような形になるのか、FIA-F4のパドックでは関心事になっている。それについて具体的な動きはあるのか?

坂東氏:ここにおられる報道関係者の方がどれだけ記事を書いてくれるのか、その反響次第によってスポンサーがつくことを祈っているので、ぜひよろしく(笑)。FIA-F4では、車両関連でいろいろと問題がでていて、コンストラクターであるJAMIAに対して申し入れもしないといけないと考えている。それで成績優秀なドライバーは上位カテゴリーになるF3、スーパーフォーミュラ、GT300に上がっていって欲しい。大事なことは、継続的にドライバーを育てるというピラミッドを作ること。FIA-F4から上に上がることもそうだが、スーパーFJやKARTなどからFIA-F4に上がる仕組みも大事になるし、今後それらのカテゴリーとの話し合いを密にしていきたい。

 ではその上に上げる仕組みが、賞金を出すのか、あるいはその賞金をチームに渡してチームに入ってもらう形になるか、あるいはチーム立ち上げるのか、そうした要素を様々な検討していかないといけないし、F3やスーパーフォーミュラに対しても話をしていかないといけないと考えている。

──どのようなスカラシップになるのか、今シーズンの終わりまでには発表されると言うことか?
坂東氏:シーズン中には何かを発表しないといけないと考えている。

──今シーズンから導入されたマザーシャシーについての評価を教えてください。

坂東氏:思ったより走る。FIA-GT3は自動車メーカーが市販するレーシングカーとして、公認され販売するという形で成り立っている。それに対してのJAF-GTの枠組みの中では、それを作れない方達向けに興味を持っている方向けに、安全性を確保するロールゲージとモノコックというGT500と同じような安全性を持っている枠の中でやり、ガワの部分、デザインや空力を変更できる。だけど、エンジンは同じモノを使う。安全性を確保しながらモノを作りたいという人達向けに、ロールゲージ、モノコック、エンジンなどのクオリティを上げたモノを提供していきたい意向がある。

マザーシャシーを採用する車両

 今の状態ではモノ作りの観点では、同じモノを与えて作り挙げていく能力は順番順にでているのかなと考えている。土屋エンジニアリングで言えば、ドライバーの土屋武士選手の能力だけではなくて、父親の春男氏の能力で25号車の成績が実現されている。春男氏が生きがいに感じてくれて、どんどん新しいことにチャレンジしているが、私たちとしてはその成果をどんどん公開して欲しいと思っている。他車が流用するかどうかは別にして、そうしたノウハウを公開して後世に伝えて欲しい、それが春男氏の義務だから。お客様にしても、同じタイヤなのに、同じベースを使っているのにあれだけの差異がでている、そこが楽しめる要素だと理解していただけるとありがたい。

マザーシャシーの取り組みに関しては海外からも注目されており、実際ヨーロッパからの問い合わせもあった。今後もしっかりと取り組んでいきたい。

──今年からSROと協力したFIA-GT3のBoP設定が行われているが、GT300のBoPの状況をどう考えているか?
坂東氏:SROと協力したFIA-GT3のBoPは基本的にタイヤを除いた性能調整となっている。SROが持っているデータは、例えば燃料タンクの作りや、燃料流入の速度までをパラメータに入れて計算しており、それを元に燃料リストリクターなどにより調整を行っており、それはSROに任せている。GTAの方では、JAF-GT勢とGT3の間でどのように整合性を取っていくのかを注力している。例えば、JAF-GT300はコーナリングマシンで、FIA-GT3はストレートスピードが速いなどがあり、それらをうまく調整したいと考えている。

前線優勝、富士でもポールポジションを獲得した31号車 TOYOTA PRIUS apr GT

 では、開幕戦で優勝したプリウス(31号車 TOYOTA PRIUS apr GT)が一番重いウェイトを詰んでいるのに、この富士戦ではポールポジションを獲得したのはなぜかということだと思うが、プリウスにはフォーミュラ用のエンジンが搭載されており、LMP2用の市販エンジンを搭載している車両とは分けて考えないといけないと考えている。今後はあの車に対して、何らかのことを考えないといけない。

14時15分、SUPER GT第2戦は白バイとパトカーの先導でスタートした

(笠原一輝/奥川浩彦/Photo:安田 剛)