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トヨタ・マツダ共同記者会見。「トヨタとマツダは同じ志を持つ会社」と両社長

中長期的な相互協力の構築に関する共同記者会見詳細リポート

2015年5月13日実施

会見の最後のフォトセッションで握手するトヨタ自動車代表取締役社長 豊田章男氏(左)とマツダ 代表取締役社長兼CEO 小飼雅道氏(右)

 トヨタ自動車とマツダは5月13日、両社の経営資源の活用や商品・技術の補完など、相互にシナジー効果を発揮しうる継続性のある協力関係の構築に向けた覚書に調印したと発表した。発表内容の詳細は速報を行った関連記事を参照していただきたい。

トヨタとマツダ、環境技術や先進安全技術分野などで中長期的な相互協力を目指す

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150513_701740.html

 ここでは、同日に東京・六本木で行われたトヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏、マツダ 代表取締役社長兼CEOの小飼雅道氏の2人が登壇した共同記者会見の模様をお伝えする。

「両社は志を同じくし、尊敬し合える同志」であると豊田氏

共同記者会見のようす

 会見では、まず豊田氏によって同日発表となった基本合意について、アウトラインを紹介。続いて小飼氏が「本日両社が調印した覚え書きは、環境や安全、事業のグローバル化といった自動車業界が取り組むべき課題について、互いに協力するためのものです。その課題のなかでも、豊田さんと私がとくに重要だと思っているのは、今後もクルマがお客さまにとってなくてはならないものとして存在するために、クルマの持つ魅力そのものを向上させることです」発言した。

 ここから豊田氏、小飼氏が交互に発言を繰り返し、今回の基本合意に至った経緯や意見、クルマ造りに対する思いなどを語っていく。

 豊田氏は、「私は社長就任以来、社内に向けて『もっといいクルマをつくろう』と繰り返し伝えてきました。今、トヨタでは全社一丸になって“Toyota New Global Architecture”、略してTNGAという取り組みを進めておりますが、その一番の目的は、お客さまに『どうしてもこのクルマがほしい』と思っていただける魅力あるクルマを造ることです」

「そのためには、本気でクルマと向き合い、現地現物で考えぬく力を持った人材を育てていくことがなによりも大切だと考え、人材育成に取り組んでおります」

「マツダさんは『SKYACTIV』技術と『魂動』デザインなど、基本にこだわったクルマ造りを進めるとともに、次世代を担うクルマや技術に挑戦し続けておられる、素晴らしいクルマ会社だと思っています。『Be a driver.自分の行く道は、自分で決めたほうが、楽しいに決まっている。』『走らせて退屈なクルマなんて絶対につくらない』。こうした考え方に対し、私自身も大いに共感しております」

「マツダさんは、まさに私たちが目指す『もっといいクルマづくり』を実践されている会社であり、今回の提携によって私たちは多くのことを学ぶよい機会をいただいたと感謝しております」

「両社は志を同じくし、また尊敬し合える同志だと思っています。両社が互いに研鑽すれば、よりいっそうクルマの魅力を向上することができるというという期待が、今回の提携に繋がっています。今後は、互いの人や技術、文化を尊重し、知恵を出し合い、お互いに汗をかく。このような実直で中長期的な協業を、提携のスタンスとして進めていきたいと考えております」とコメントした。

「クルマには“愛車”という言葉があります。愛がつく工業製品はそう多くはありません。たとえどんなに時代が変わったとしても、“愛車”と呼んでいただけるクルマを造り続けることにこだわってまいりたいと思います」と語る豊田氏

 小飼氏は、「マツダも“カーライフを通じて人々に人生の輝きを提供する”という企業理念を掲げ、それを実現するために『SKYACTIV』と『魂動』という、統一した商品技術と具体的なコンセプトを持つクルマを一生懸命に造ってきました。まずは『モノ作り革新』という大幅な仕事のプロセス変革を行って社員全員がお客さま思考を持ち、かつ理想と本質を追究できる人材育成に取り組んでまいりました。このように、トヨタさんとマツダは同じ志を持っていると思っています」

「今回、提携の機会をいただいたことを誠に光栄に思っています。みなさんを含め、多くの方がご存じのように、トヨタさんは地球環境保全やもの作りの将来などに責任を果たされようという強い意志を持たれています。また、『もっといいクルマづくり』という目標に向け、常に自己変革をしようという真摯な姿勢を持たれており、日ごろより尊敬しております」

「さらには、創業以来地元を大切にし、地元から愛されていることにも共感いたしております。加えて、ハイブリッド技術のライセンス供与やメキシコ工場での生産委託を通じてご支援いただいていることに、心より感謝している次第です」

「本提携は、技術と商品力の向上、ビジネス効率の改善を通じて両社の発展と成長に繋がるとともに、お客さまに対しても提供する価値を高められると確信しています。また、マツダにとっては、広島のもの作り力の向上、地域産業のさらなる発展にも寄与できると期待しています」とコメントした。

「私たちマツダも従来の提携の枠組みを超え、新たな価値創造に向けて挑戦するとともに、責任を持って提携を遂行してまいります」と語る小飼氏
前半に行われた提携内容についての説明では、両社長が会話でキャッチボールをしているかのように双方の意見や思いなどを紹介。2社による提携が良好なパートナーシップのもとに進められていることを印象づけた

両社の関係を“婚約状態”と豊田氏

 会見の後半には、集まった記者との質疑応答を実施。なぜこのタイミングで持続性のある協力関係の構築について基本合意したのかについて、豊田氏は1990年に行われたトヨタの社員によるマツダ・防府工場見学のさいのエピソードや、その後の個別の業務提携やプロジェクトを通じて価値観の共有や信頼関係が築かれたことから、もう少し中長期目線での関係を作る機が熟したからであると説明。また小飼氏は、豊田氏と同じく交流による関係の構築に加え、トヨタとマツダが同じ志を持った会社であると感じたこと、開発や生産のプロセスが似通っていることなどを提携に向けた理由として明かした。

 また、今回の発表では開発や生産などについて協力関係を構築するとしつつも、具体的な技術や商品などについては言及されていない。この部分を明らかにするべく、複数の記者から将来的な提携による成果物について質問が出たが、これについて豊田氏は既存のハイブリッドシステムのライセンス供与やメキシコ工場での生産委託に尽きるとしており、成果物は「それを生み出したいという思いから提携に至ったことでもあり、ぜひともお楽しみにお待ちいただきたい」と述べるにとどまった。

 このほか、和やかな会見の雰囲気を「結婚会見のようですが」と評した質問に対しては、豊田氏が「今回は、結婚というよりは婚約会見になります。婚約のときというのは一番楽しいときなんですね。お互いにいいところしか見ていないわけですから。ですから、これからいいところのみならず、お互いの本当の姿を見ながら『もっといいクルマづくり』に邁進することこそ、将来、お客さまから笑顔をいただけて、お互いが末永くつきあっていける方法なんじゃないかと思います」とコメントした。

(編集部:佐久間 秀)