ニュース

工学院大学、2人乗りソーラーカーの新車両「OWL」を初披露

10月18日~25日開催の「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2015」に挑戦

2015年7月24日発表

 工学院大学ソーラーカープロジェクトは7月24日、オーストラリアで10月18日~25日に開催されるソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2015(WSC2015)」へ参戦する新車両を初披露した。

 オーストラリア北部のダーウィンから、南部のアデレードまでの約3000kmを走破するワールドソーラーチャレンジは、隔年で開催されている世界最大級のソーラーカーレース。工学院大学は2013年に続いて2回目の参戦となる。今大会には「チャレンジャークラス」「クルーザークラス」「アドベンチャークラス」の3クラスが設定され、同プロジェクトのチームは、2名乗りで4輪走行車両を使用する「クルーザークラス」に出場する。

 お披露目されたソーラーカーは、ボディーサイズが4500×1800×1000mm(全長×全幅×全高)。4輪で走行し2名分の座席を用意する2シータとなり、その形状が「フクロウ」に似ていることからフクロウを意味する“OWL(アウル)”と命名された。

 2つのドアやフロントスクリーンを採用するなど、より実用車の形状に近い領域の車両に仕上げられたボディーには炭素繊維を使用、成形厚0.06mmの極薄CFRPの採用など、車体重量は搭乗者やバッテリーなどすべてを含み350kg以下という。

 また、モーターはホイールインモーターを採用した後輪駆動方式となり、タイヤはブリヂストンのソーラーカー専用タイヤ「ologic」を装着。発電量1300Wとなるソーラーパネルにはシリコン単結晶太陽電池セル391枚を使用。バッテリーにはリチウムイオン電池を重量60kg分搭載して容量は約14kWhを確保した。

工学院大学 学長の佐藤光史氏

 新車両の発表会で、工学院大学 学長の佐藤光史氏は、参戦の背景について語った。

「本日お披露目する新車両はオーストラリアを走破する国際大会に参加する目的で、ソーラーカープロジェクトに参加する学生メンバーが1年以上の貴重な時間をかけて完成させたものです。このたびの参戦に関しては、プロジェクトメンバーのみならず、全学生、教職員、校友会や後援会を含めたオール工学院大学として支援応援しているものです。さらに、学外からもサポート企業や団体、個人の皆様の協力により実現するものです。このような産学連携や全学の専門分野を結集した先進的な技術を搭載した新車両によって世界を舞台にチャレンジする機会を得ることに心から感謝を申し上げたい」

「参加するメンバーには本学の学生であることに誇りをもって、チームワークと信頼によってベスト尽くす充実した経験をしてほしい。世界のトップレベルをライバルとする技術的な挑戦のみならず、未来のエンジニアを目指す学生として、グローバルな仲間づくりの交流を経験して成長の糧にしてほしいと考えています」

「本学では11の学生プロジェクトが活発に活動していますが、この度のソーラーカーのように世界を目指して引き続き活躍していただきたい。資源やエネルギーに必ずしも恵まれているとは言えない我が国日本ですが、さまざまな課題を抱える世界を見据えて活躍する若者達の挑戦に私どもは大きな勇気を感じているところです」

工学院大学 工学部機械システム工学科 准教授 濱根洋人監督

 チーム監督を務める工学院大学 工学部機械システム工学科 准教授の濱根洋人氏は、「私共のプロジェクトは2009年に設立しました。通常、学生達は大学に入学してから4年間あるいは6年間の在籍の後、エンジニアとしてすぐに世界を相手に一緒に勝負しなければなりませんが、学生のうちにそういった経験ができるのがブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジだと思います」「僕らのチームはビジョナリーチームとして、今あるカタチのマシンを走らすのではなく。“デザイン by 工学院大学”といった、世界の人達に知ってもらえるような“すごいマシンを作るんだ”というのが学生全メンバーの気持ちです。2013年にはそのコンセプトを非常に強めた車両で参戦して惨敗しましたが、その失敗の経験から実用車両に近いカタチの“クルーザークラス”で戦うことが、我々が当初から目指していたチームのやるべきことがあることに気づきました。約2年間、製作からは1年以上、コンセプトから様々なところに泣き笑いがあって今日に至っています」「レースがスタートするまでに、まだまだやることや調整することがあり、たくさんの“to Do”が残っていますが、世界の学生に負けない“工学院大学のオンリーワン技術を今年は見せるんだ!”と、毎日がんばっている次第です」と、本番に向けての意気込みを語った。

工学院大学 機械工学専攻 修士2年生の大原聡晃キャプテン

 続いて、工学院大学 機械工学専攻 修士2年生の大原聡晃キャプテンからは、「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2015」や新車両「OWL」についての概要が説明された。

 同チームが参戦する「クルーザークラス」については、レースの最終結果を決定するポイントのスコアが見直されスピードが重視されるレース展開になるとともに、スタート地点とゴール地点の中間地点である、アリススプリングスでコンセントからの充電が1回可能となるルールなどが紹介され、大原キャプテンは「スコアの見直しによりスピードが重視されることから、勝てる車両にするため空力性能に最も重点を置いて設計しました。また、外部コンセントからの充電が前回の3回から1回に減らされているためエネルギーマネージメントも今大会の大きなポイントとなる」との考えが示された。

 今回発表した新車両については、2ドア2シーター、2つのラゲッジルームを備え、前面投影面積を減らすためのダブルバブルルーフを採用していることなどを紹介し、大原キャプテンは「前回大会の我々のマシンとともに、2013年にクルーザークラスに参加した車両を徹底的に分析しました」、「新車両では2号機から空力性能が56.7%改善され、空力性能の大幅な向上を果たしています」などと、その特徴などを示した。

2009年のプロジェクト発足当時の1号機や、2013年大会に出場した2号機などこれまでの取り組みを示したスライド
「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2015」や新車両について紹介するスライド
ブリヂストン グローバルモータースポーツ推進部長 堀尾直孝氏

 発表会では最後に、サポート企業を代表してブリヂストン グローバルモータースポーツ推進部長の堀尾直孝氏が、「濱根先生をはじめとして“絶対に勝ちに行く”という皆様の強い意気込みを感じます。研究開発から車両の完成まで長くたいへんな道のりだったと思います。完成車両を目の前にして部品を協賛することで一緒にレースに参加できることは非常に誇りに思っています。レースで活躍されることに対してますます期待が膨らんでおり、ぜひとも我々の技術と共に、ワールドソーラーチャレンジで勝利をおさめていただきたい」とエールを贈った。

サポート企業の提供技術を紹介するスライドや展示物が示された

(編集部:椿山和雄)