東海大学、「ワールド・ソーラー・チャレンジ」優勝報告会
パナソニック、東レ、ミシュラン、ミツバが勝利の要因

世界最大級のソーラーカーレース「ワールド・ソーラー・チャレンジ」を連覇した東海大学チーム

2011年10月31日開催



 東海大学は、10月16日~23日までオーストラリアで開催された世界最大級のソーラーカーレース「ワールド・ソーラー・チャレンジ」を優勝。10月31日に、その優勝報告会を開催した。

 ワールド・ソーラーカー・チャレンジは太陽光のみを動力源として、オーストラリア連邦のダーウィンとアデレード間、総延長3000kmを走破するタイムを競うソーラーカーレース。1987年に第1回大会が開催され24年の歴史を誇る(1999年からは隔年開催)。東海大学チームは、前回大会(2009年開催)でも優勝している強豪チームとなり、今回はレギュレーションの変更により、太陽電池を化合物太陽電池からシリコン太陽電池に変更。パナソニックのHIT太陽電池を用いての参戦となっていたが、見事連覇を成し遂げた。

 優勝報告会には、東海大学 学長 髙野二郎氏、同大学 チャレンジセンター所長 大塚滋氏、同大学 工学部 電気電子工学科 教授 木村英樹氏、東海大学ソーラーカーチーム 学生代表 瀧淳一氏のほか、同大学チームをサポートしたパナソニック コーポレートブランドストラテジー本部 宣伝グループ 理事 小関郁二氏、太陽電池担当 技術責任者 津毛定司氏の6人が登壇した。

 髙野東海大学 学長は、今回の連覇について「一昨年優勝して(連覇は)大変難しいことだろうと考えていた。見事に成果を上げてくれて、指導者、学生を誇りに思っている」と、ソーラーカーレースに優勝した木村教授と学生たちをたたえた。

 東海大学のチャレンジセンターは、「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」を身につけるために、さまざまなチャレンジをサポートしており、そのプログラムの1つであるライトパワープロジェクトとしてソーラーカーレースに参加している。チャレンジセンター所長 大塚 茂氏は、その活動を「社会基礎力を4年間の学生生活で身につけ、社会で活躍していくためのもの」と言い、世界レベルのレースに挑むことで、学生の力を伸ばしていく。

東海大学 学長 髙野二郎氏東海大学 チャレンジセンター所長 大塚滋氏



ソーラーカーチーム 学生代表 瀧淳一氏(左)、東海大学 工学部 電気電子工学科 教授 木村英樹氏(右)

 ソーラーカーレースそのものの解説は、ソーラーカーチーム 学生代表 瀧淳一氏と、木村教授によって行われた。本戦の出場順序を決める公式予選は、東海大学のOBであり、前回もドライバーとして参加した篠塚建次郎氏が担当。見事5位につけ1日目をスタート。1日目は市内区間で、信号などに恵まれ一気に浮上し、一時トップに立つもののミシガン大学に抜かれ2位で終わった。このレースは5日間で争われたが、最後まで東海大学チームとデットヒートとなったのは、オランダのNuon Solarチーム。途中からはトップに立ったものの、トラブルが1つ起きれば抜かれてしまう状況で、胃が痛かったと言う。

 終始リードを保ったまま、総走行距離2998km、総走行時間32時間45分、平均速度91.54km/hで優勝。この平均速度は、シリコン太陽電池として歴代1位。これまでの1位が1996年大会の本田技研工業が記録した89.8km/hであり、当時の太陽電池面積は8m2以上であったのに対し、現在は6m2となっており、技術の革新により達成された部分が多い。

ワールド・ソーラー・チャレンジ概要2011年型のソーラーカー公式予選
予選結果は5位1日目2日目
3日目4日目5日目にゴール
結果

 木村教授は勝因の1つを、はっきり計測したわけではないがと言いつつ「他チームより約5~10%多く発電できたパナソニック製のHIT太陽電池にある」と挙げた。HIT太陽電池は、太陽電池表面に電極が乗るため、セル単体ではその分だけ発電効率が落ちる。しかしながら、モジュールとして組み上げた場合、電極表面で反射した太陽光が保護層で再反射することで発電セルに届き電力が供給される。実装した状態での不利はないとした。
 また、高温時の出力低下が小さいこと、表面が平滑なので汚れにくく発電効率が落ちづらいことを挙げていた。

ライバルチーム
東海大学以外の日本チーム勝因上位チームの部品構成

 そのほかの要因として、ボディー素材に使われている東レのカーボン、高効率な動力変換を行うミツバのDCモーター、低転がり抵抗のミシュランタイヤ、パナソニックのリチウムイオンバッテリーも挙げていたが、これらは程度の差こそあれ、他の強豪チームも利用している。パナソニックのHIT太陽電池は、東海大学チームのみが利用しており、性能差につながった部分があるのかもしれない。

 東海大学チームでは、気象衛星「ひまわり」からの画像を利用した天候予想も行っており、優れたハードウェアを、きっちりマネジメントできたことが、優勝という結果につながっているのだろう。木村教授は、「東日本大震災があった今年だからこそ、勝たなければならないという個人的な決意を固めていた。太陽電池は主たるエネルギー源となっていないが、省エネ、蓄エネとの組み合わせで、未来を切り開く可能性があることを示せた」と結んだ。

パナソニック製HIT太陽電池の優位点外観比較写真
東レ製炭素繊維による軽量化ミツバ製DDモーターと、低転がり抵抗のミシュランタイヤミツバのモーターは変換効率が高いため、発熱も少ないと言う
ひまわりからのデータを用いた天候予測シリコン太陽電池として、平均速度記録を更新したレースを終えての感想

 最後に、HIT太陽電池、リチウムイオンバッテリーでのサポートを行ったパナソニックが挨拶。コーポレートブランドストラテジー本部の小関氏は「パナソニックは2018年に創業100周年を迎え、その際にエレクトロニクスNo.1企業となることを掲げている。今回のレースにおいて、創エネと蓄エネが貢献できたということに喜んでいる。環境技術の高さを世界に示せたのではないか」と言い、チームにも帯同した太陽電池担当 技術責任者 津毛氏は「レースに使用したHIT太陽電池は、軽量化や薄型化を除き、通常の製品と非常に近いもの。何のトラブルもなく、安定して高い性能を発揮してくれた。技術者として最高の幸せであった」と語った。

パナソニック コーポレートブランドストラテジー本部 宣伝グループ 理事 小関郁二氏パナソニック 太陽電池担当 技術責任者 津毛定司氏津毛氏の持っていた太陽電池パネル。左がソーラーカー用、右が家庭用。家庭用は耐候性などもあり厚くなっている。軽量化を優先するソーラーカー用は、およそ1/10の厚さだと言う

(編集部:谷川 潔)
2011年 10月 31日