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東海大学、11月13日からスタートする「カレラ ソーラー アタカマ 2014」に参戦

2015年1月にUAEで開催されるレースにも参戦を計画中

パナソニックセンター東京で開催された「カレラ ソーラー アタカマ 2014」参戦体制発表会
2014年11月13日~17日レース開催

 東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクト・ソーラーカーチーム(以下、東海大学ソーラーカーチーム)は8月29日、パナソニックセンター東京(東京都江東区有明)において「Carrere Solar Atacama(カレラ ソーラー アタカマ) 2014」の参戦体制発表会を開催した。

 Carrere Solar Atacamaは、チリ共和国北部に位置するアタカマ砂漠で開催される南アメリカ唯一のソーラーカーレース。2011年、2012年に続き3回目のレースとなり、今回は11月13日から休息日を挟んで11月17日までの5日間で約1200kmを走破する。コース途中でアンデス山脈を横断するため、標高3400m以上のサミットを超える必要があるなど、単なる速さだけでなく過酷な条件下での信頼性が求められるのが特長だ。

 東海大学ソーラーカーチームの参加車両は、2013年型ソーラーカー「Tokai Challenger」をベースにレギュレーションへの対応を進めたもの。具体的にはヘッドライトの装着、リチウムイオン電池の搭載量削減(5.2kWh→3.85kWh)、100km/hの制限速度にあわせたモーターセッティング、5%を超える勾配が頻繁にあるルートに対応するためのモーター強化といった内容。モーターの強化については、出力そのものは約5kWで変わらないものの、鉄芯をより磁束の強いものに変更したほか巻線の抵抗を減らすなど、細部のチューニングを実施したという。

 同チームは昨年オーストラリアで開催された「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ 2013」こそ2位にとどまったものの、2008年から2012年まで国際大会を5連覇している実力派。本レースでも好結果が期待できる。

ボーイング787やフォーミュラーカーと同じカーボン素材を使用

 発表会には、東海大学 副学長 山田清志氏、東海大学チャレンジセンター 所長 木村英樹氏、東海大学ソーラーカーチーム学生代表 工学部 機械工学科 3年次生 若林希氏のほか、パナソニック ブランドコミュニケーション本部 宣伝・スポンサーシップグループ スポンサーシップイベント推進センター 所長 西貝宏伸氏、東レ トレカ事業部門産業材料部 部長 奥村勇吾氏が出席。参戦体制や今後のスケジュールが発表された。

 山田副学長は「今までと違ってはじめての南アメリカでのレース。ソーラーカーのレースに勝つことももちろん大切だが、それを通じて学生の社会的基礎力を高めることも大学としては重要」とプロジェクトの意義を示した。

 HIT太陽電池とリチウムイオンバッテリーの供給、およびチームスポンサーとなるパナソニックの西貝氏は「パナソニックは2009年から東海大学のソーラーカーチームにリチウムイオン電池を供給させていただき、2011年からは旧サンヨー電気が開発いたしました“HIT”という太陽電池モジュールも提供させていただいている。また、2011年からはあわせてチームスポンサーという形でも応援させていただいている。2011年は経済状況が悪く、明るい話題が少ない時期もあったが、東海大学のソーラーカーチームの優勝で多くの社員が喜びを分かち合った。また、多くの報道によって日本の社会全体に勇気を与えてくれたと言っても過言ではないと思う。これからも引き続き応援させていただきたい」とコメントした。

東海大学 副学長 山田清志氏
パナソニック ブランドコミュニケーション本部 宣伝・スポンサーシップグループ スポンサーシップイベント推進センター 所長 西貝宏伸氏
東レ トレカ事業部門産業材料部 部長 奥村勇吾氏

 ボディーに使われるカーボン素材を供給する東レの奥村氏は「今回、採用していただいた素材は最新鋭航空機のボーイング787やフォーミュラーレーシングカーに採用されているものと同じ製品。車体の軽量化、並びに車両全体の性能向上に貢献している」と解説し、また「レースの舞台となるチリのアカタマ砂漠には、弊社の炭素繊維をアンテナに採用した世界最大のアルマ電波望遠鏡が設置されているなど不思議な縁がある場所。東海大学のソーラーカーチームが優勝トロフィーとともに日本に凱旋されることを確信している」とチームにエールを送った。

カレラ ソーラー アタカマ 2014に向けて仕様変更した「Tokai Challenger」
太陽電池モジュールにタイヤが付いたようなスタイル。運転席がオフセットされているのは、影による発電効率の低下を極力抑えるためとのこと
運転席横にキルスイッチを配置
シールド前面には小さなスリットがあり、走行風が運転席に入るようになっている
パナソニックの太陽電池モジュール「HIT」。表面は軽量化のために家庭用のガラスではなくフィルムになっている
車両前方に小さな白色LEDを新設。これがヘッドライト(というよりデイライト)になる
ドライバーの乗り降りは太陽電池モジュールが乗ったパネルごと外して実施。4人で軽々と持ち上がるほど重量を低減している
東レ カーボンマジックによるCFRPボディー
リチウムイオン電池は右奥のスペースに収まってしまうほどのサイズ(今回は未搭載)
フロントサスペンション
リアサスペンション。ホイール内側にダイレクトドライブモーターを備えるインホイール式
制御モジュール
左前輪をまたぐ形で着座する運転席
ステアリングにはスイッチやダイヤルが並び、まさにレーシングカーそのものといった印象
シート右横にあるのは、電力を物理的にカットするスイッチのようだ
ステアリング右側のスイッチ群。エコとパワーの2モードが用意されている
ステアリング左側のスイッチ群。こちらは乗用車的な要素
ペダルのアッパー部。油圧で制御しているようだ
モノコックの車体中央にはお守りが貼り付けられていた

2015年1月に開催されるアブダビでのレース参戦も計画中

 これまでのプロジェクト内容とレースについては、東海大学ソーラーカーチームの木村教授と学生リーダー 若林希氏から説明が行われた。

 木村教授は同校のチャレンジセンターの趣旨について解説したあと、そのプロジェクトの1つとなる「ライトパワープロジェクト」について説明。これはエネルギーを効率よく活用することが重要となる電気自動車や人力飛行機といった乗り物の設計、製作を行うもので、なかでも特にソーラーカーについては「資源の乏しい日本で得られる無限のエネルギー」「どこでも手に入るクリーンエネルギー」「電気自動車にも流用できる技術」として重視しているという。

東海大学チャレンジセンター 所長 木村英樹氏
木村教授(左)と学生代表 工学部 機械工学科 3年次生 若林希氏(右)

 そして、このプロジェクトは「1991年からソーラーカーの開発プロジェクトが始まり、1992年以降さまざまなソーラーカーを世に出してきた。2008年から南アフリカやオーストラリアの大会で総合優勝することができている。昨年は惜しくも準優勝となったが、我々が世界のトップレベルということは間違いない」と自信を伺わせた。そして、昨年からはレースへの出場はもちろん、米国大使館主催のイベントやアブダビ石油大学とのソーラーカー共同開発、地域の小学生向けとなるエコカー教室などの活動を続けており、次の一手となるのがCarrere Solar Atacamaへの参戦であるとした。

 若林氏は木村教授のあとを受けてレースについて説明。チームにとって新天地となる南アメリカ大陸でのレースで総合優勝に挑戦するとともに、2015年に開催されるオーストラリア大会優勝に向けた経験の蓄積など、今回のチリ大会参戦の目標を掲げた。また、最後に2015年1月に開催されるアブダビでのレース参戦も計画中であることを発表。これはアブダビ石油大学との共同開発を念頭に置いたもので、現在20名の学生がソーラーカーの技術を同校学生に伝えているという。アブダビでのレースにはアブダビ石油大学も参戦予定となっており、まさに学生同士の国別対抗といった趣。こちらでの善戦も期待したい。

東海大学チャレンジセンターの概要
ライトパワープロジェクトの一環としてソーラーカーを製作
開発目的
チーム実績
2013年からのプロジェクトの流れ
大学としてさまざまなイベントにも参加している
大会概要
「世界一日射量が多い」といわれるアタカマ砂漠がレースの舞台
参加目的
チリ共和国との友好を深める一環として駐日チリ大使を表敬訪問
大会ルート
大会スケジュール
「Tokai Challenger」主要諸元
「Tokai Challenger」に投入されている主要技術
レギュレーション対応の変更点。容量の減少に伴いバッテリー重量が21kgから15.1kgに低下
サポート体制
亀井氏と留学生のアブドゥルハマン氏はドライバー初体験となる
遠征メンバー
2015年1月開催のアブダビ大会への参加を予定

(安田 剛)