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【インタビュー】新型「CX-9」の開発主査・大塚正志氏に聞く

CX-9はハイエンドの名に恥じない性能と質感、操縦性などすべてを兼ね備えたモデル

CX-9の開発責任者を務めたマツダ商品本部主査の大塚正志氏。CX-9以外にもCX-5の主査を担当するなど、SUVラインアップのキーマンに話をうかがった

 11月17日〜19日(現地時間)に開催された「2015年ロサンゼルスオートショー」の会場でワールドプレミアされたマツダの新型「CX-9」。マツダのSUVラインアップとなるCXシリーズの中では唯一の3列シートで、全長が5000mmを越える大型クロスオーバーとなる。

 初代のCX-9は2007年に北米を中心に販売が開始されていて、当時は「CX-7」のひと回り大きなSUVとして位置づけられていた。エンジンはフォード製V型6気筒3.5リッターをベースにマツダが生産していて、マイナーチェンジで3.7リッターに排気量が拡大された。

 2代目へと進化した今回のCX-9では、マツダが提唱しているデザインコンセプト「魂動(こどう)-Soul of Motion」を全面的に取り入れていることに加え、新開発のダウンサイジングターボ「SKYACTIVーG 2.5T」を搭載していることがトピックになる。

 新型CX-9の開発主査を務めた大塚正志氏は「CX-5」の主査も兼務していて、「CX-3」の企画にも関わった経験を持つ。つまり、現在のCXシリーズのキーパーソンといえる。新型CX-9に込めた想いや特徴、ターゲットカスタマーなどを大塚主査に語っていただいた。

●マツダ、LAオートショーでSKYACTIV-G初の2.5リッターターボを搭載した「CX-9」公開

●ちょっと写真で見るマツダ新型「CX-9」

「成熟した大人に向けて商品を提供することを考えた」と語る大塚氏

──新型CX-9はパワートレーンや内外装など多くの部分に初採用された装備や機能がありますが、まずは概要を教えてください。
大塚氏:CX-9はファミリーカーなので、実用域での走り、レスポンスは徹底的によくしています。また、3列シートという大勢の人が乗るクルマなので、ドライバーもパッセンジャーもすべてにおいて心地よい空間になっています。インテリアの質感、シートの素材、構造なども可能な限りいいものを提供することを心掛けました。

 機能面では、現状のSKYACTIVの中でもっとも最先端の技術を採用しました。そして価格帯、車格もラインアップ中で最上位となるクルマなので、コストは他のモデルよりも掛けられます。よって、質感にはかなりこだわりました。

──車格に合わせて各部の質感を高めているようですが、どのようなユーザーをターゲットにしたのでしょうか。
大塚氏:CXシリーズは車格やターゲットがそれぞれ異なっていて、CX-3はヤングファミリー層、CX-5は通常のファミリーを想定しています。CX-9は、CX-5のオーナー層よりも確立されたユーザーに乗ってもらいたいと思っています。人生の中である程度成熟したユーザーに相応しい仕様にしたつもりです。

 クルマも含めてですが、若者をターゲットにしている商品というのが存在しますが、そういうモデルを成熟した大人は選ばないはずです。(今回のCX-9は)社会の核となっている成熟した大人に向けて商品を提供することを考えているので、子どもっぽい作りにしない。そこは徹底的にこだわりました。

ロサンゼルスオートショーでワールドプレミアされた新型CX-9。ボディサイズは5065×1969×1716mm(全長×全幅×全高)で、3列シートを装備する
エクステリアデザインは、大柄なボディに合わせて4輪にしっかりと重心が掛かったようなスタンスを重視している

──エクステリアはデザインコンセプトの「魂動」に沿って作り上げていると思いますが、CX-9においての魂動デザインの解釈は、どう考えているのでしょうか?
大塚氏:CX-9は全長が5000mmもあります。そのため、CX-3のような抑揚やラインを使うと子供っぽくなってしまいます。成熟したオーナー層に向けているので、相応しくないでしょう。エクステリアデザインで特徴を持たせのは、大地に根を張ったようなフォルムです。メインマーケットとなるアメリカのSUVは、しっかりと地に足が着いたスタンスのデザインが好まれるのです。

──外装色もCX-9の落ち着いた雰囲気にマッチしていますが、どのような新色なのでしょうか?
大塚氏:カラーリングは「マシングレー」という新色になります。マツダのブランドカラーはソウルレッドで、これは今後も続けていきます。ただ、ソウルレッドをサポートするカラーとして、CX-3ではセラミックメタリックを導入しました。マシングレーはCX-9の“本物感”や“高級感”を手助けするカラーだと思っています。

 また、マシングレーは顔料の配合や塗装も特殊な方法を使っています。塗料にはグレーのベース層にメタリックを入れています。そのメタリックの粒子が揃っていることで、メタリックっぽくキラキラ光らないのです。狙いとしては、面で光らせることを想定しました。なので見る角度や方向によって、色の見え方が変化すると思います。

──デザインとカラーリングについてうかがいましたが、内装の質感やデザインが飛躍的に向上しました。
大塚氏:まずはデザインについてですが、クルマの開発にはさまざまな順序があります。新型CX-9では、まずインテリアのコンセプトが先にでき上がりました。デザインを担当したのはアメリカにあるMNAO(Mazda North American Operation)で、彼らからの提案をベースにデザインを練っていきました。

 キャビンの中というのはユーザーとクルマがもっとも触れ合うところです。ですので、デザインだけが先行していてもダメです。我々が求めたのはユーザーの五感に訴えることで、素材や手触り、操作性に至るまで総合的に作り込みました。

──素材としても相当コストを掛けたものを使っているようですね。
大塚氏:センターコンソールなどに使っているウッド、シート・インパネなどのナッパレザーは相当高級で見た目と質感にこだわったものですが、その素材だけを見て欲しくはないです。インテリアをトータルに見て、ユーザーが直感的にきれいとか上質だと感じるように作ったつもりです。

インテリアは最上級モデルのCX-9に相応しい質感を追求。見た目はもちろん質感、手触りなどもに徹底してこだわったという
レザーも質感や手触りのよいナッパレザーを使用
室内に使われるウッドは高級ギターメーカー「富士弦」との共同製作

──エンジンには新開発の「SKYACTIVーG 2.5T」を搭載していますが、CX-9から導入した理由はあるのでしょうか?
大塚氏:クルマのサイズや質量によって採用するパワートレーンが決まるのですが、CX-9に最適なのはどれかと思ったときに、ガソリンエンジンでパワーがあるモデルが欲しかったのです。そこにSKYACTIVーG 2.5Tの開発がリンクしました。

 CX-9のメインマーケットはアメリカです。アメリカのどの地域でも確実に手に入れられる燃料は軽油ではなくレギュラーガソリンなので、ガソリンエンジンを搭載しました。レギュラーガソリン仕様でも2000rpm付近から420Nmのトルクが発揮できますし、最高出力も230PSをオーバーします。このサイズのクルマを引っ張っていくのに十分なパワートレーンであり、性能を持っています。導入国に対しては、このSKYACTIVーG 2.5Tのみでの展開になります。

エンジンは新開発のSKYACTIVーG 2.5Tを搭載。オクタン価(AKI87)使用で、最高出力は227HP/5000rpm、最大トルクは420Nm/2000rpmを発生。ボア×ストロークは89.0mm×100.0mmで、圧縮比は10.5となっている

──CXシリーズの中で最大サイズとなるCX-9が登場しました。これでCX-3、CX-5、CX-9と3つのSUVシリーズがラインアップされましたが、3台についてどのような印象を持っていますか?
大塚氏:CX-5に改良を加えたときに話したのですが、マツダのディーラーでは常に「最良なモデルが並んでいるのが好ましい」のです。そこに3、5、9というヒエラルキーを保ちながら並ぶ。CX-9というのは最上級のクルマなのです。ハイエンドの名に恥じない性能と質感、操縦性などすべてを兼ね備えたモデルだと思っています。

──日本国内でも新型CX-9を欲しいという声が上がりそうです。
大塚氏:欲しいというユーザーがいらっしゃるかもしれませんが、国内の使用環境では実用的ではないはずです。なので導入は考えていません。北米では来年の春から随時発売が始まっていきます。その他の導入地域はオーストラリア、中東などになる予定です。

(真鍋裕行)