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スズキ、インド発Bセグメントのニューモデル「バレーノ」発表会
「スズキの技術力・パッケージングを高いレベルで調和させた意欲作」と鈴木俊宏社長
(2016/3/10 00:00)
- 2016年3月9日 開催
スズキは3月9日、同日に発売した新型小型車「バレーノ」の発表会を都内で開催した。
発表会には代表取締役会長の鈴木修氏、代表取締役社長の鈴木俊宏氏らとともに、新型バレーノがインドの子会社であるマルチ・スズキ・インディアで生産されることから、スジャン・R・チノイ駐日インド大使も出席。バレーノの概要などが説明されるとともに、スズキとインドの関係についても語られた。
Bセグメント用の新開発プラットフォームを採用する新型バレーノは、全長4mクラスのコンパクトなボディを持ちつつ2520mmのロングホイールベースと前後乗員間距離805mmを確保し、ゆとりある居住空間を実現しているのが特徴の1つとなっている。
新型バレーノのボディサイズは3995×1745×1470mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2520mmで、同じ5ドアハッチバックスタイルである「スイフト」(XS-DJE/2WD)と比べ145mm長く、50mm広いサイズ。ホイールベースも90mm長い。これにより、スイフトは5ナンバーサイズであるのに対し、新型バレーノは3ナンバーサイズとなる。
グレードは「XT」「XG」の2種類とシンプルな展開で、「XT」は新開発の直列3気筒DOHC 1.0リッター直噴ターボ「K10C」エンジンと6速ATを、「XG」はイグニスなどに採用される自然吸気の直列4気筒DOHC 1.2リッター「K12C」エンジンとCVTを組み合わせ、いずれも前輪を駆動する。
スズキの技術力・パッケージングを高いレベルで調和させた意欲作
発表会ではまず、代表取締役社長の鈴木俊宏氏が挨拶を行ない、「新型バレーノは“スイフトの兄貴分”となるコンパクトハッチバック。ダウンサイジングされてくるお客様を含め、幅広くユーザーに受け入れられると考えている。新開発のBセグメント用プラットフォーム、新開発の直噴ターボエンジン、ゆとりある居住空間と荷室スペース、流麗なデザインなど、スズキの技術力・パッケージングを高いレベルで調和させた意欲作」とコメント。
そして生産を国内の相良工場、湖西工場と同等の最新鋭の設備を備えるというマルチ・スズキ・インディアのマネサール工場で行なっていることにも触れ、新型バレーノはスズキの世界品質基準に基づいて徹底した管理体制のもと生産を実施していることを紹介するとともに、日本に続いて欧州など世界の市場に展開するグローバルコンパクトカーであることが述べられた。また、「急激な為替変動や市場環境の変化など世界を見据え、どこで作るか、どこで調達するかは非常に重要な経営課題。今後もグローバルな視点で世界最適生産、最適調達を重要な戦略として打ち立てていきたい」とした。
一方、新型バレーノはインドでは2015年10月に販売を開始しており、発売後の5カ月で約4万台を販売したことを報告するとともに、「日本の小型車市場では新型バレーノを投入して国内販売10万台という目標を早期に実現したいと考えている。新型バレーノが日本市場で受け入れられることで、日本とインドの友好関係をより広げていくことの一助になれば幸い」と述べている。
私たちが築き、目指してきた新しいコンパクトカーの価値を感じてほしい
新型バレーノの概要については、四輪技術本部 第二カーライン バレーノ担当チーフエンジニアである伊藤邦彦氏から説明が行なわれた。
伊藤氏は冒頭、「今回の開発にあたって私たちが抱いたのは、スイフトで培ったコンパクトカーの開発ノウハウを駆使し、その価値を極限まで高めたいという思いだった」と述べるとともに、2014年度の登録乗用車 タイプ別販売比率について触れ、「ハッチバック リッターカークラス」(1.0~1.5リッターエンジン)が30.9%と高いシェアを誇ること、日本市場では全長3900mm以上のリッターカーが増加傾向にあることを紹介。また、新型バレーノは全長3750~4200mmに収まるBセグメントに属するコンパクトカーであるとし、「日本のみならず海外においても非常に厳しい競争のあるこのクラスで存在感を高めるような、スズキらしい商品を目指して新型バレーノを開発した」という。
その新型バレーノの開発コンセプトは「デザイン、居住性、走行性能、安全性能に優れたコンパクトハッチバック」で、発表会ではこの4項目ごとに特徴が紹介された。
まずデザインについて、内外装デザインは「Liquid Flow(リキッドフロー)」をテーマに、エクステリアでは一見穏やかに見えるエレガントな面表現の中に、液体がまさに躍動する瞬間のエネルギーを感じさせるような造形を目指した。また、しっかりと張り出したボディ、全幅を広く取って全高を抑えたことによるロー&ワイド感で安定感のあるプロポーションを実現したという。
ボディカラーは「プレミアムシルバーメタリック3」「アーバンブルーパールメタリック」「アークティックホワイトパール」「ミッドナイトブラックパール」「ファイヤーレッド」「レイブルーパールメタリック」「オータムオレンジパールメタリック」の全7色を設定し、7色とも国内初採用のカラーとなる。
インテリアでは、穏やかな曲面の中に凝縮したエネルギーが両サイドに向けて解き放たれるイメージを具現化したといい、ブラック内装にメッキやピアノブラック塗装、シルバー加飾を施すことで上質感を演出した。装備面では、「瞬間燃費/平均燃費/航続可能距離表示」「平均燃費履歴」「平均車速」「モーション表示」「アクセル/ブレーキ操作表示」「パワー/トルク表示」が可能な4.2インチ大型カラードット液晶のマルチインフォメーションディスプレイを採用したのもポイントの1つになっている。
居住性については、Bセグメント用の新開発プラットフォームを採用したことにより、コンパクトなボディながらゆとりある居住空間とラゲッジスペースを実現。前後乗員間距離を805mmとし、とりわけ後席の足下スペースを十分に確保できたという。また、ラゲッジスペースは320L(VDA法)を確保し、リアシートを倒さないでもベビーカーや9.5インチゴルフバッグの横置きを可能にしている。
走行性能では、先に述べたとおり「XT」は新開発の直列3気筒DOHC 1.0リッター直噴ターボ「K10C」エンジンと6速ATを、「XG」は自然吸気の直列4気筒DOHC 1.2リッター「K12C」エンジンとCVTを組み合わせる。
「K10C」エンジンでは、6つの噴射口を持ちマルチホールインジェクターを横一列にレイアウトした「6穴式サイドインジェクション」、過給圧を緻密にコントロールして動力性能と燃費性能を両立するウエストゲートバルブノーマルオープン制御などの採用により、1.0リッターという小排気量ながら1.6リッター自然吸気エンジン並みの最高出力82kW(111PS)/5500rpm、最大トルク160Nm(16.3kgm)/1500-4000rpmという高出力、高トルクを実現。「XT」のJC08モード燃費は20.0km/Lをマークしている。
一方、「K12C」エンジンはソリオ、イグニスと基本構造は同じで、こちらは最高出力67kW(91PS)/6000rpm、最大トルク118Nm(12.0kgm)/4400rpmを発生。「XG」のJC08モード燃費は24.6km/L。同エンジンについて、伊藤氏は「高圧縮化による熱効率のさらなる向上、軽量化・コンパクト化により優れた燃費と力強い走りを両立させた」とその特徴について語っている。
そのほか、安全性能ではミリ波レーダーを使った衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポートII(RBSII)」を全車に標準装備。この「レーダーブレーキサポートII(RBSII)」では衝突の可能性がある場合にドライバーにブレーキ操作を促す「前方衝突警報機能」、自動的に軽いブレーキをかけてドライバーにブレーキ操作を促す「前方衝突警報ブレーキ機能」、ドライバーが強いブレーキを踏むとブレーキアシストが作動し、衝突回避または衝突被害軽減を図る「前方衝突被害軽減ブレーキアシスト機能」、衝突が避けられない場合に自動的に強いブレーキを作動し、衝突回避または衝突被害軽減を図る「自動ブレーキ機能」という各機能が備わり、さらにミリ波レーダーで先行車との速度差、車間距離を測定し、約40km/h~約100km/hの範囲で追従走行を行なう「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」も全車標準装備する。
伊藤氏は、「新型バレーノは、これまで述べたようにスズキが培ってきたコンパクトカーのノウハウを駆使し、その価値を高めるBセグメントハッチバックとしてグローバル市場に向けて開発した。1983年にスズキがインドで自動車の生産をはじめてから30余年。先人たちが築き上げてきた品質においても、日本の皆様にご満足いただけるレベルまで高め、ここにご紹介できることはスズキ社員としても光栄。ぜひ新型バレーノに触れて、私たちが築き、目指してきた新しいコンパクトカーの価値を感じてほしい」と述べた。
新型バレーノが日本で大きな成功を収めることを確信している
発表会の最後には、スジャン・R・チノイ駐日インド大使が登壇。新型バレーノの日本導入について祝辞を述べるとともに、「インドは世界第3位の自動車生産国で、急速に成長を遂げている主要経済国。巨大な国内市場があるだけでなく、潤沢な若い人材資源、そしてオープンで民主的な環境がある。2020年までにインドでの自動車販売台数は600万台に達する見込み」とインド市場について述べるとともに、「鈴木修会長は1982年にスズキブランドをインドに導入して以来、インドの自動車産業を一変させた。それ以来、高い品質と性能、優れた環境基準で知られるスズキの製品に対して数百万人のインド人がファンになった」と、インドでスズキブランドが根強い人気を誇っていることを紹介。
また、「マルチ・スズキ・インディアはヨーロッパを含む125カ国にクルマを輸出しているが、これはマルチ・スズキ・インディアの高い品質の証。本日発売される新型バレーノは、スズキの優れた技術を活かしてインドで開発・生産され、日本を含む100カ国に輸出される。これをもって、鈴木修会長はマルチ・スズキ・インディアのインドでの輝かしい歴史の中に、新たな名車を加えられた。私は新型バレーノが日本で大きな成功を収めることを確信している」として、挨拶を締めくくっている。