プロと並んでコースサイドでレースを撮る講習会 in S耐第5戦 雨の日には「雨でしか撮れない写真を撮る」 |
8月1日、2日に富士スピードウェイで、スーパー耐久第5戦「SUPER TEC」が開催された。その決勝日である8日に、記者らも会場を訪れた。レースやイベントのリポートは関連記事を参照いただくとして、ここでは同日初めての試みとして開催された撮影講習会についてリポートする。
日本レース写真家協会(JRPA)の協力のもと行われた、一般参加者向けの撮影講習会。これは、JRPA(通称ジャルパ)のプロカメラマンの指導のもと、普段はプロカメラマンしか入れないコース脇のエリアまで入って、レースの写真が撮れるという企画。JRPAとは1971年に発足したプロレースカメラマンの協会で、現時点で63名のメンバーは、2輪、4輪のレースカメラマンとして、世界各地で活躍している。これまでもカメラメーカーなどが行うレース写真撮影講習はいくつかあり、その講師としてJRPAメンバーのカメラマンが参加したことはあったが、JRPAが全面協力して行われるのは今回が初。告知が直前だったにもかかわらず、定員を上回る応募があり、抽選で20名の参加者が選ばれた。
参加者は最初に、普段は報道関係者しか入れないメディアセンターで、基礎講座を受けた。JRPAの会長である小林稔氏をはじめ、事務局長の大西靖氏、幹事の荒川正幸氏、アマチュアカメラマンとしての経験も長い石原康氏の4名が講師として参加した。
メディアセンターの一室で座学を実施 | JRPA会長の小林稔氏 | 大西靖氏 |
荒川正幸氏 | 石原康氏 | 講師の4人以外にもJRPAカメラマンがアドバイスに訪れた |
講座では、当日があいにくの雨だったため、雨で機材を壊したり、体調を壊さないためにもレインコートなどの対策は、十分するようにといった注意から始まった。続いて、前日の予選で撮影した写真をモニターに映しながら、使われた機材やシャッタースピードなども踏まえて、どのような写真が撮影できるかを紹介。
小林氏は、走りの写真の基本として、「止めるか流すかシャッタースピードで決めてほしい。速いシャッターで車を止めるのか、遅いシャッターで車を流すのかをまずは決めてほしい。ただ、忘れがちだが、速いシャッターであっても必ずカメラを振ること。1/500でも振って(車を追いかけて)流し撮りをするようにしてほしい」と述べ、その例として、1/10秒で撮影するために、ISO感度を50まで落とした画像を紹介した。撮影したカメラマンによると、本当は1/8秒まで落としたかったが、ISO感度を50まで落としてもそれ以上絞れなかったので1/10秒になったと言う。一方でスタートして向かってくる車の集団を正面から撮るような場合には、車を止めるために、1/640秒といった速いシャッタースピードで撮影するとのこと。
また、この日の参加者は、初心者から熟練まで幅広い層に渡ったため、その機材もさまざまであったが、レンズの焦点距離が短くても絵作りはできると述べ、紹介した写真についても「これはあくまでこういった写真が撮れるという例であり、このとおりに撮れという意味ではない。皆さんの感性で自由に撮影を楽しんでもらいたい」と小林氏。「同じコーナーであっても、シャッタースピードや少し位置を移動するだけでも違った写真が撮れるので試してもらいたい」と言う。
当日行く撮影ポイントで過去に撮られた写真を見ながら、撮影のポイントを解説 | 撮影機材やシャッタースピードなども見せながら解説が行われた | 1/10秒という遅いシャッタースピードで撮影された写真。シャッタースピードを遅くするためにISO感度を50まで落としている |
講習には講師以外のJRPAカメラマンも訪れ、「僕は雨に降られても、雨の日にしか雨の写真は撮れないのでラッキーだと考えるようにしている」とか、「必ずコースから目を離さないでほしい。コースのすぐわきなので車が飛んでくる可能性がある。下を向いた瞬間、よそを見た瞬間に限ってそういうことがあるから注意してほしい」といったアドバイスを述べていた。
実際の撮影は、まずスタート時点で1コーナー・2コーナーに設けられたカメラマンスタンドからの撮影。次にダンロップコーナー、最後にプリウスコーナーで、コースサイドのフェンスに開けられた撮影用の穴から撮影するというもの。それぞれ45分程度で移動時間もあわせて3時間程度の内容となる。実際にプロカメラマンが撮影する場所とまったく同じ場所での撮影となるため、プロのカメラマンが来たときには、場所を譲るという条件が付けられていた。それでも普段はフェンス越しにしか撮影できないポイントや絶対に撮影できない場所での撮影とあって、参加者は時間いっぱいまで休むことなくファインダーをのぞき続けていた。
(瀬戸 学)
2009年 8月 5日