ソニー「nav-u」のNV-U75シリーズを徹底レビュー<前編>
NV-U75シリーズの注目ポイントをおさらい

最新「nav-u」として登場したNV-U75Vは、フェイスパネルをフラット化。まるでフォトフレームのようにも見えるデザインだ

NV-U75V(関連製品含む):11月7日発売
NV-U75:11月14日発売
オープンプライス



初代「nav-u」NV-U1。ジャイロ+加速度センサーを搭載する異色のPNDとして登場。吸盤式取り付けキットもすでにU1で採用されていた

 手ごろな価格も手伝って、高い人気を誇るPND(Portable Navigation Device)。各社からさまざまなモデルがリリースされているが、その中でも高い人気を誇るのが、ソニーの「nav-uシリーズ」だ。そのnav-uシリーズに、新モデル「NV-U75シリーズ」が登場した。大きな注目を集めること必至のNV-U75シリーズを実際に使用してみたので、そのレビューを2回に分けてお届けする。

 nav-uシリーズが最初に登場したのは日本ではまだPND黎明期の2年半前。その生い立ちを見ると、他のPNDとはまったく違った視点で登場している。

 ポイントは大きく2つある。1つ目は大半のPNDがGPSのみで測位していた中で、いち早く本体にジャイロ+加速度センサーによる自律航法を装備していたこと。2つ目は、当時のPNDは交通情報に一切対応していなかった中でいち早くVICSに対応。しかも、あえて高価なVICSビーコンに対応することで渋滞を考慮したルート案内を実現していたのだ。

 簡単取り付けをうたうPNDの中で、このスペックはまさに異色。それでもソニーはPNDの最高スペックを目指すことを目標に開発を継続。結果として、高機能・高性能を好むユーザー層に支持を広げ、その流れは他社にまで及ぶに至ったというわけである。

 そうした時流の中で登場した「NV-U75V」「NV-U75」だけに、その内容は新世代のnav-uと呼ぶにふさわしい劇的なチェンジが図られていた。まず目を引くのがそのデザインである。これまでのnav-uはフレームの中にディスプレイを備える一般的なデザインだった。それがフレームとディスプレイをフラット化させた、これまでのPNDには見られない斬新なデザインを採用。その姿はまるでフォトフレームのようでもある。

 このデザインの実現にあたっては、まずタッチパネル方式を従来の感圧式から静電容量式に変更し、さらにnav-uの特徴でもある現在地/メニューボタンまでをもフラット化。ブラックをベースとしたメニューデザインとも相まって、フラット感をいっそう強調したデザインとしたのだ。

向かって左側面に用意された端子。左からメモリースティックDuo用スロット、USB、ヘッドホン、外部アンテナの各端子本体天面。電源スイッチは写真右側。押すと電源がONになり、OFFにする時はやや長めに押す。左はワンセグ用アンテナ本体底面。向かって左側にはACアダプター用電源入力端子が備わる
スピーカーは本体背面に用意され、音声やビープガイドはフロントウインドーに反射させて聞く形になる従来比で約3/4にまで小型化された吸盤式車載クレードル。U75は下の爪に引っかけて背面に押しつけるようにして装着するオプションで販売されているFM-VICS+VICSビーコンユニット・NVA-VP1(オープン価格:実売3万円前後)

 ディスプレイのサイズは従来と同じWQVGA(480×272)の4.8V型。地図表示で進化したのは、従来の3D表示に加えて、異なる縮尺の2つの地図を同時に表示できる2画面表示も可能となったこと。さらに、案内中のガイド情報を画面左上に集約させ、情報の把握をよりしやすいものへと変更している。

 また、内蔵メモリは8GBに倍増しており、これによって市街地図表示は1335エリアで実現。さらに、市街地図対象外エリアでも道路幅の違いを表示できるようになっているのも大きな進化だ。

 一方、交差点での案内方法は従来から継続されたもので、分岐点に近づくとまず音声で案内を行い、続いて拡大図を表示して縮尺を2段階に切り替えて表示する。その他、都市高速入口ガイドや方面看板を表示するのも従来と同じスタイルを採用している。

メニューを押して最初に表示される設定画面。表示項目は従来と基本的に同じだが、ブラックをベースとした背景と、画面切り換え用タブがアイコン表示ではなくなった市街地図エリアはこれまで主要都市レベルに限定していたが、U75では地図データ提供元であるゼンリンがデータ化している1335エリアすべてを収録したルート案内中に表示される都市高速入口案内。複雑に入り組む都市高速の入口付近をリアルなCGによって表現している

 これまでのnav-uと同様、あらかじめガイドブック情報をプリインストールしてあり、そこには「グルメぴあ」「ゴルフダイジェスト・オンライン」「こどもと遊ぼう」「全国立ち寄り温泉」の便利情報を収録。写真や詳細情報をもとに目的地として設定可能としている。

 さらに、ネット上で探した最新スポット情報が反映できる「PetaMap」にも対応。「グルメぴあ」「HotPepper」のクーポン利用を可能にするほか、ユーザー同士で共有できるクチコミ情報まで利用できる。

電話番号検索は新たに個人宅までも対象としている。電話番号を入力し、続いて姓名を入力。電話番号と姓名が一致すると場所がピンポイントで特定される最寄り検索では、目的地方向や目的地に近いスポットのみを検索できるようになっている。ルート沿いと言うよりも方角で表示範囲を絞り込んでいるのが特徴ガイド情報はPNDの中ではかなり充実している部類に入る。インターネット経由で、最新情報も取得できるのがよい

 新世代のnav-uとなったことで、測位方式では大きな進化が図られている。ソニーの開発陣によれば「目標は車速パルス式と同等の性能を発揮すること」だったと言う。nav-uはこれまで測位方式としてGPSにジャイロ+加速度センサーを加えたシステムに「POSITION plusG」という呼称を与えていた。今回は、その機能をさらに進化させた「POSITION plus GT」を採用。その名称の由来は、測位能力がさらに上がってハイパフォーマンス化を遂げたことを意識して、クルマの「グランツーリスモ」から取ったのだという。

 その進化した測位方式は、従来のジャイロ+加速度センサーの考え方をさらに拡大し、GPS信号をロストした状態でもリアルタイムの車速を算出。通常なら誤差が積み重なって拡大してしまうところを最小限に抑え、その能力は車速パルスを利用したときと遜色のないレベルに達していると言う。これには「本当か?」と疑いの眼差しで見てしまいそうになるが、それに対してソニーの開発陣は自信満々だった。

NV-U75Vが採用する「POSITION Plus GT」の概念図。ジャイロセンサーからの情報と3軸検出を行う加速度センサーの併用で車速パルス並みの測位精度を実現した

 その秘密を探ると、従来とは発想を変えた新たな測位アルゴリズムの採用があったと言う。基本的に採用したデバイスで特に新しいものはなく、自律航法用として、2つのジャイロセンサーと加速度センサーを組み合わせたに過ぎない。しかし、ジャイロセンサーと加速度センサーを上下方向の動きまで検出できるようにし、道路のうねりからもたらされるクルマの挙動をナビ本体が把握。このデータを独自のアルゴリズムの下で運用することで、クルマの絶対速度を算出可能にしたと言うのだ。従来なら、誤差が積み重なりそうなところで測位を停止していたが、このアルゴリズムの採用によって最後まで測位が継続できるようになり、これが車速パルス並みの絶対速度をもたらしたというわけである。

 nav-uの大きな特徴でもある交通情報への対応は、U75シリーズになってさらに進化を遂げた。従来はオプションでVICSビーコンのみに対応していたが、今回は同じくオプションながらFM-VICSへの対応も果たしたのだ。それぞれ別々に装着することも可能だが、両者を同時装着すれば、都市部や高速道路上ではVICSビーコンで渋滞回避を行い、郊外や自宅付近ではFM-VICSで交通状況を把握できるようになる。通信を使わず、リアルタイムの交通情報が取得できるPNDは本機以外に存在しない。まさにnav-u誕生時の開発コンセプトはここにも活かされていると言ってよい。

 nav-uの特徴でもある車載取り付け用クレードルは大幅に小型化され、取り付け面となる吸盤は従来の直径7.7cmから6.6cmまでダウンサイジング。取り付け場所の制約が少なくなり、同時に吸盤のゲル素材に改良を加えることで温度変化に強く、従来と同等の吸着能力を確保したと言う。オプションのVICSユニットを一体化して取り付けられるようになっているのも取り付け時のスマートさを重視するソニーらしい配慮とも言える。

写真ではサイズが小さくなったことが分かりにくいが、吸盤のサイズだけで従来比で約27%も小さくなっているFM・VICS+ビーコンユニットを組み合わせたオプションのNVA-VP1(オープン価格:実売3万円前後)を車載クレードルに取り付けたところ。接続用ケーブルは未接続状態吸盤のゲル素材は従来よりも粘着性が高められており、表面もかなり柔らかくベタつく感じ。付属のカバーを使わないと取り外したときはゴミが付着してしまう

 歩行時のナビ機能がさらに進化したのも大きなトピックだ。徒歩用として使える専用の地図データを収録し、地下道や駅内コンコース、歩道橋といった、徒歩でなければ歩けないルートをガイドする。しかも電子コンパスを内蔵しているので、進行方向に合わせて自動的に地図が回転。目的地の方角を見失わずに進める。ドライブ中だけでなく、徒歩用データまで収録してナビ機能を拡大したのは、PNDでも数少ない例として注目できる。

徒歩モードは車載スタンドからNV-U75Vを取り外し、「徒歩モード」のボタンを押すと電子コンパスが動作し始める。右は歩行モード時のNV-U75V

 そして見逃せないのが、PNDとしては異例なまでに多彩な対応を図ったAV機能である。NV-U75Vではワンセグ用チューナーを搭載し、今回は新たに日時指定による録画予約にも対応。しかも番組表を表示させて、そこにタッチするだけの簡単予約も可能としている。NV-U75も共通のAV機能としては、ソニー製Blu-rayレコーダーの「おでかけ転送」機能を使えば、レコーダーで録画した番組をメモリースティックDuo経由で楽しむことができるほか、静止画から音楽、動画映像など幅広いコーデックにも対応。Bluetoothによる携帯電話のハンズフリー通話を可能としたほか、本機で再生した音楽やビデオ、ワンセグの音声をBluetoothで飛ばしてカーオーディオ(A2DP対応)で楽しむこともできる。

ワンセグはソニー製ナビとして初めて録画機能を装備。日時指定や番組表からの予約も実現している。写真右は録画予約設定中の画面
再生可能な音楽ファイルは、これまでのMP3/AACに加えて、ATRAC、WMA、HE-AAC、リニアPCMにも対応するようになった本体に内蔵されたマイクとスピーカーを使い、Bluetoothによる携帯電話のハンズフリー通話を実現。携帯電話の電話帳を転送して使うこともできる

 次回は、このNV-U75シリーズの使用レポートをお届けしたい。

(会田 肇、Photo:安田剛)
2009年 11月 17日