テスラ、EV「ロードスター2.5」を国内導入、マスクCEOが会見

青山のショールームに展示された「ロードスタースポーツ2.5」

2010年11月12日発売
ロードスター2.5:1276万8000円
ロードスタースポーツ2.5:1481万5500円



 米テスラモーターズは11月12日、スポーツEV(電気自動車)「ロードスター」のマイナーチェンジ版「ロードスター2.5」「ロードスタースポーツ2.5」を発売した。これに際し、同社のイーロン・マスク会長兼CEO兼製品設計責任者が来日、都内で記者会見を開催した。

 「2.5」は、従来の「2.0」にフェイスリフトなどを施したもの。前後バンパーとホイールのデザインが変更されたほか、インテリアではシート形状が改良され、遮音性が向上した。また、オプションでバックカメラ付きの7インチディスプレイカーナビが用意された。価格はロードスター2.5が1276万8000円、ロードスタースポーツ2.5が1481万5500円。

 ボディーは、英ロータスと共同開発したアルミモノコックシャシーに、仏Sotiraのカーボンファイバーパネルで構成。モーターはロードスターが最大トルク370Nm、ロードスタースポーツが400Nmとなっている。最高出力はどちらも215kW(288PS)。バッテリーパックは6831個の18650セルで構成され、200V70A電源の場合3.5時間でフル充電できる。航続距離は394km。

 マスクCEOは「最新の世代のロードスター2.5も、ピュアEVです。世界有数の速さのスポーツカーで、加速感がすぐれたものになっています」と2.5を紹介。「日本の企業との提携を嬉しく思っています。株主と言うだけでなく、パーツにも日本の技術を取り入れています。ロードスターのバッテリーセルはパナソニック、タイヤは横浜タイヤです。日本企業だけではなく、世界中の最高の品質のものを取り入れた最高のスポーツカーを作っているという自負があります」とロードスターの成り立ちを説明し、「日本は非常に重要な市場です。洗練された市場において、最先端の技術や、パフォーマンスが受け入れられるのを楽しみにしています。日本市場を大切と考え、アジアで初めてのストアを本日、東京にグランドオープンさせていただきました」と日本市場への思いを訴えた。

 マスクCEOと報道関係者の1問1答は次のとおり。

マスクCEO

──パナソニックの投資によって何か変わるか?

 パナソニックからの投資を受けられたことは、恐縮した思い。パナソニックとは長いカンケイを持っている。6年前から(その頃は三洋電機だったが)、いろいろな協力体制を組んでいる。

 バッテリーセルの技術はパナソニックが世界最高峰と認識している。パナソニックのプレスリリースでは、我々が世界最高品質の技術をバッテリーパックにおいて持っていると受け止めていただいているようで、嬉しく思っている。

 今後も協業を続けていきたいと思っているが、バッテリーのセルのレベルでも、自動車に最適化したものを開発し続ける。これまで1年強取り組んできた18650セルだが、外観は同じでも、中身をより最適化している。より低コストで、エネルギー密度も高い、自動車により適したものを開発していく。

 パナソニックとテスラの関係は非常に良好と申し上げる。両社ともエンジニアリングとテクノロジーを重視していて、同じ波動で考えられる会社だと思う。

──トヨタやダイムラー以外の自動車メーカーや、ほかの企業との提携も視野に入れているのか。その中には日本企業も入っているのか。

 現在はトヨタとダイムラーとの提携に、よりフォーカスしている。ほかに対話を持っている会社もあるが、今のところトヨタ、ダイムラー両社との提携関係に集中している。小さい会社なので、広く薄く皆様と、とは考えていない。実際にディスカッションしても、お断り申し上げた企業もある。近いうちには提携の発表があるようには思えない。遠い将来には、あるかもしれない。

──パナソニックのバッテリーは他社に比べて低コストなのか?

 私の知るところ、バッテリーパックに関しては、テスラのものがもっとも低コストでエネルギー密度が高いと考えている。この2つの要素が非常に重要だ。

 バッテリーはサイクルライフ、安全性、環境との親和性が大切。それを踏まえエネルギー密度が高く、コスト効率が高いものを選ぶと、(テスラとパナソニックの)関係性が一番よいと思う。これには、パナソニックと私たち、企業間の関係が良好という点も寄与している。パナソニックでも同じ意見を持っていると感じている。

東京 青山のテスラ・モーターズのショールーム

──なぜアジア初のストアが東京で上海やシンガポールではないのか。

 アジア諸国の中で、私たちは日本にいちばん親しみを持っている。トヨタやパナソニックをはじめ、キー・サプライヤー、キー・パートナーが日本にいる。日本には友人もたくさんいる。

 また、日本市場は私たちの車種にとってよいマーケットだと思う。日本の消費者は高品質・先進技術に対する洗練度が高いと感じてるのが主な理由。アジアにおけるプレゼンスの点でも東京が適していた。

 日本のストアはまだ開店したばかりなので、売り上げは公表できるようなものではないが、長期的にはアメリカに次ぐ第2の市場になると考えている。

──RAV4 EVは元NUMMIで生産するのか?

 最終的にはトヨタが決めることだが、チャンスとしてはあるだろう。最初の数千台の組み立てはやる可能性がある。将来、より大規模な量産にはトヨタの工場をピックアップするのではないかと思うが、もし元NUMMIで生産したいということなら歓迎する。

トヨタはテスラとRAV4 EVを共同開発。LAショーで初公開する

──トヨタにあってテスラにないもの、テスラにあってトヨタにないものはなにか。トヨタとの提携をどう発展させたいか?

 トヨタと協業できることを、ありがたく受け止め、恐縮している。トヨタは世界有数の企業の1つ。トヨタに学んでいただくことがあるとしても、我々がトヨタから学ぶことの方がより多いと思っている。豊田章男社長がテスラから何かを学ぶといったようなことをおっしゃるだけでも、非常にありがたいと感じている。

 豊田社長の言葉を引用させていただくなら、私どもが協力できるのは、豊田社長のおじいさまの代からの起業家精神を、再び発見するきっかけとなることだろう。豊田社長は非常な人格者。大きな企業を率いる社長なのに、我々のような新興の小さな会社から学ぶとおっしゃること自体、ありがたく受け止めている。

 我々は1000人以下の小さな企業。主にエンジニアとデザイナーが多く所属している。そんな中でトヨタからは、大量生産について学びたい。品質を保ちながら高い信頼性を持って生産するということを、トヨタ生産方式から学べればと思っている。

モデルS

──テスラの長期的なビジョンは?

 長期の視点というのはいつも難しいと感じている。今の世の中は変化の速度が速い。マーク・トゥエインの言うとおり、長期的なことで我々に分かるのは「我々の死と税金の問題だけ」ということになる。

 次のステップとして「モデルS」の開発をしているが、年間2万台くらいの少量生産となるだろう。

 第3世代のクルマは5、6年後と見ている。よりマス市場に向けたものを作りたいが、こちらも生産台数は10万台程度と思っている。年間1700万台の市場から見れば、我々はまだまだ小さい会社だ。我々としてはもう少し車種を増やしていきたい。それはすべてピュアEVだ。

 企業としては、人と違うことと、技術革新としてどんなことが起こりうるのかを実験していきたい。実験を繰り返して革新の先端にい続け、技術の可能性を探り続けていたい。

──NUMMIの跡地は今どういう状況で、今後どう活用していくのか。

 最初はモデルSを生産する。また、RAV4 EVの最初の生産拠点になるかもしれない。

 長期的には、年間生産台数が数十万台の工場になればと思っている。そのレベルの生産台数があるなら、5000人程度を雇用するだろう。また、周囲のサプライヤー関係の工場で5000人程度の雇用ができるだろう。合わせて1万人程度の雇用創出と考えている。

──スマートグリッドについてテスラはどう行動しているのか。

 スマートグリッドは長期的には重要になってくるだろうが、今までの経験からすると、短期的にはそこまで重要でないだろう。ロードスターの航続距離は約400km、モデルSは約500kmある。家庭やビジネスでも1日1回充電できればよい。街中や街と街の間に数カ所、充電ステーションがあれば十分なのではないかと考えている。これらは今のグリッドである程度対応できるだろう。

──国際的な展開の戦略は? 米国とそれ以外の売り上げ比率や、2015年までの比率の目標は?

 現状は半分強が米国での売り上げ、残りの市場は主に欧州になる。というのも、アジア初のストアをオープンしたばかりだからだ。2015年には1/3は米国、1/3が欧州、1/3がアジアといった感じだろう。

──ロードスターでロータスとの協業を選んだ理由、ロータスとの関係は?

 皆さんが思われているよりも、ロードスターとロータスの共通点は少ない。パーツで言えば7%しか共通のものはない。

 いままでのところロータスとのパートナーシップは良好だが、モデルSなど我々の将来の車種は、我々が最終的な組み立てをやる。ロータスとのパートナーシップは公式には2011年までとなっている。

(編集部:田中真一郎)
2010年 11月 12日