インテル副社長、今後数カ月以内にIAベースのIVIが日本メーカーから登場と発言
Embedded Technology 2010招待講演

インテル IA事業本部副社長兼エンベデッド&コミュニケーション事業部長 トン・スティーンマン氏

2010年12月1日開催



 組み込み機器向けの展示会「Embedded Technology 2010」が、12月1日~3日の3日間にわたり、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜において開催された。近年自動車産業にも積極的に取り組んでいる半導体メーカーであるインテルのIA事業本部副社長兼エンベデッド&コミュニケーション事業部長 トン・スティーンマン氏が招待講演に登場し、同社の組み込み向け戦略について説明した。

 講演中でスティーンマン氏は同社のIVI(In-Vehicle infotainment:車載情報システム)向けのマイクロプロセッサーとしては第2世代となるAtomプロセッサー E600シリーズ(以下、Atom E600)について説明したほか、現在IA(Intel Architecture、パソコンなどで利用されているマイクロプロセッサー)のIVI採用に向けて日本国内のメーカーに対して積極的に売り込みを図っており、今後数カ月以内には何らかの搭載製品が発表されるだろうという見通しを明らかにした。

Atom E600シリーズは、機能の集積度が従来製品より向上し、性能も上がっている右手に持つ10年前のサーバー用のプロセッサーに比べて、左のAtom E600シリーズのプロセッサーは非常に小さいことが分かる下の黒いプロセッサーがサーバー用のPentium II Xeonプロセッサー。緑色のものが、Atom E600シリーズのプロセッサー

統合度を上げて全体のパフォーマンスを向上させた、IVI用第2世代製品Atom E600を投入
 インテルは、2009年の3月にIVI向けのAtomプロセッサー Z500シリーズを発表[http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090306_43212.html]し、自動車メーカーやカーナビメーカーなどに採用を呼びかけてきた。さらに、Geniviアライアンスと呼ばれる業界団体を、自動車メーカー数社とカーナビメーカーと協力して立ち上げ、IVI向けのオープンなソフトウェアプラットフォームを構築すべく活動を続けている。

 そのインテルは、先日Atom E600という、IVI向けのプロセッサーとしては第2世代となる製品を発表した。このAtom E600も、従来のZ500シリーズと同じように、産業用途の稼働保証温度に対応し、製品提供期間もパソコン向けに比べて長い期間に設定されているなどIVI向けの条件を満たすモデルが用意される。

 Atom E600は、従来のAtom Z500シリーズに比べて、機能の集積度が上がっている。従来のAtom Z500シリーズでは、データを一時的に置いておくメモリーを制御するためのメモリーコントローラーや、画面表示を行うためのGPUなどが、チップセットという補助チップ上に搭載されていたのだが、Atom E600シリーズではこれらの機能がプロセッサーに統合されており、従来の製品に比べてトータルでの性能が大きく向上している。ただし、ソフトウェア的にはZ500シリーズと互換性を維持しており、従来のZ500用の開発したソフトウェアもAtom E600シリーズでも利用することが可能となっている。

 また、従来製品ではチップセットはインテル製にだけ対応していたが、Atom E600ではサードパーティ(インテル以外の半導体メーカー)が製造しているチップセットにも対応している。IVI向けとしてはST Micro、OKIセミコンダクターなどがチップセットを用意しており、メーカーのニーズに応じて自由に選ぶことができるようになっているのが大きな特徴となる。

 スティーンマン氏は「現在自動車産業は汎用の半導体とソフトウェアを組み合わせることで開発コストを下げる取り組みが行われている。Atomプロセッサーを利用することで、そうしたニーズに応えることができる」と述べ、IVI市場におけるインテルの優位性を訴えた。

Atom E600シリーズではチップセットと呼ばれる補助チップはサードパーティの製品からも選ぶことができる。IVI用も用意されている自動車業界でも汎用プロセッサーとソフトウェアの組み合わせにより低価格化が進められている

Atom搭載製品が日本メーカーにも採用の可能性
 講演後に行われた記者会見において、スティーンマン氏はインテルのIVIビジネスのデザインウイン(製品採用例)について、「すでにBMW、メルセデス・ベンツ、中国のHaw Taiの3社で採用されることが明らかにされており、E600はBMWが2012年にリリースする予定のハイエンド車種に採用されることが決まっている。同じく2012年にはメルセデス・ベンツのCクラスとSクラスにも採用される。また、E600シリーズではないが、中国の自動車メーカーであるHaw Tai AutomobileがSUVとセダンに採用しており、数カ月前に正式発表している」と述べた(Haw Tai AutomobileのAtom搭載自動車の発表の様子はPC Watchの記事[http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20100416_361718.html]を参照)。

 気になる日本メーカーへの売り込みだが、「現時点では公式に発表できることはない。しかし、ここ5カ月で10回も来日していることから分かっていただけると思うが、積極的な売り込みを行っている。弊社は日本の自動車メーカー、部品ベンダーなどを非常に重要視しており、それらの企業とよい関係を維持している。数カ月以内にはこの分野で何か発表できるものがあると思う」(スティーンマン氏)と述べ、日本の自動車メーカーや部品メーカーなどから何らかの発表があることを示唆した。

(笠原一輝)
2010年 12月 3日