日本財団、ゼトロスやウニモグの復興支援活動を公開
ダイムラーの寄贈車両が活動を開始

2011年5月20日公開



 日本財団は5月20日、独ダイムラーに寄贈された被災地支援車両の活動を、宮城県石巻市で報道関係者に公開した。

 ダイムラーは東日本大震災の被災地支援の一環として、50台の復興支援車両を日本財団に寄贈した。その内訳はオフロードトラック「メルセデス・ベンツ ゼトロス」8台、多目的作業車「メルセデス・ベンツ ウニモグ」4台、オフロード車「メルセデス・ベンツ Gクラス」8台、三菱ふそう「キャンター」30台。

 メルセデス・ベンツの車両は欧州にあったデモカーなどを急遽集め、特例措置で日本に緊急空輸したもの。排ガス規制など日本の規制をクリアしない部分もあるが、2年間の期限付きで作業に従事できることになった。

 日本財団は、被災各地のNPOやボランティア団体の状況に応じて、50台の車両を貸し出す。すべての車両は19日から宮城、岩手、福島の各県に配属されている。

 公開されたのは石巻災害支援復興協議会に貸与されたゼトロスとウニモグ、Gクラス各1台による作業。石巻市中心部から1時間ほどにある漁港の小網倉浜で、瓦礫の除去を行った。

協議会の拠点となっている石巻専修大学に揃ったゼトロスとウニモグ。全車、日本でバンパー右端にアンダーミラーが取り付けられたこちらは人員輸送用ゼトロス。NATO軍の塗装そのままで日本にやってきた
ゼトロスやウニモグはメルセデス・ベンツが「アドブルー」と呼ぶ尿素SCRシステムを搭載するウニモグのウインチゼトロスにはハンブルクの販売店のマッドガードが付いていた
目的地へ向け出発するウニモグとGクラス。ゼトロスは日本の規制値よりも5cmほど幅が広いため、事前に申請したルートを採る
目的地へ向かう道の両側には、津波で被害を受けた光景が広がる。道路がなくなっていたり、陥没していたりする個所やうねりも多い。走破性が高く馬力もあるゼトロスは、通常の車両が速度を落とさなければならないところでもどんどん進めるため、一般道でも後続車を引き離してしまった
いまだ震災の傷跡が生々しい。避難所もいくつか見かけた

 仙台から北東へ約40km、人口16万の石巻市は、東日本大震災により死者約3000人、全半壊・流出した住宅・建物が2万8000と甚大な被害を受けた。行方不明者数は2700人を超え、取材当日も遺体捜索活動が続けられていた。市街地は浸水し、満潮時には住宅や道路が水に浸かる。今なお100以上の避難所で、8700人が避難生活を強いられている。

 同協議会は文字どおり石巻の復興活動を手がける各団体・個人で構成されており、行政と連携して、瓦礫や泥の除去のほか、炊き出し・入浴サービスといった生活支援、メンタルケアや医療支援などを行っている。

 同協議会の伊藤秀樹会長によれば、瓦礫の除去などの作業をしたくても、瓦礫を運ぶ車両が足りない状態だと言う。全国のリース業者もトラックが払底しており、日本財団に車両の貸与を申請したところ、ダイムラーの支援車両が配属された。

 ゼトロスとウニモグは、積載量こそダンプなどよりも少ないものの、通常のトラックやダンプが入れない場所でも作業できる。今回の震災では、津波で山の中まで流されたクルマや船が多く、これらを移動するためにはゼトロスとウニモグの走破性が必要だと言う。また、これらに装備されたバケットやウインチが除去作業に便利でもある。

 ゼトロスとウニモグの操作のため、仙台市でダイムラーの技術者による講習会が1日行われた。しかし協議会のオペレーターはすべてこうした作業の経験者で、重機による作業経験もあるため、習得は容易だったと言う。

 実は同協議会にはもう1台ゼトロスが配備されているのだが、こちらは人員輸送モデルで、荷台に座席と幌が装着され、荷台の強度も瓦礫の運搬には足りなかった。だがダイムラーと三菱ふそうによれば、これらは要望に応じてすぐに改造可能だと言う。

 石巻市は、市街地も海沿いの集落も、いまだ大量の瓦礫や車両が残っており、瓦礫の集積場周辺は大渋滞が起きている。これらの除去にはあと4カ月は必要と見られているが、ダイムラーの支援車両が弾みをつけるのは間違いないだろう。

今日の作業場所である小網倉浜。貝類の養殖やあなご漁などで賑わう漁港だったが、津波で壊滅状態になり、自衛隊やNPOによる復興作業が続けられている。鯉のぼりは、小網倉浜の人々を励ますべく協議会が掲げた
ゼトロスとウニモグが小網倉浜に到着。この2台の走破性がなければ入れない現場だ
ゼトロスは鉄柱に絡まった漁網などを除去。ブームバケットについたフックに、漁網をまとめたロープを引っ掛けて引っ張り上げる。青い服に白いヘルメットのオペレーターは、ワイヤレスリモコンでブームバケットを操作している
続いてバケットで瓦礫を掴み上げて除去した
ウニモグは打ち上げられた漁船の下敷きになった流木を、ウインチで引っ張り出した。ウインチはウニモグのエンジンで駆動される

【お詫びと訂正】記事初出時、ゼトロスの車幅を誤って記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 

(編集部:田中真一郎)
2011年 5月 20日