日産、「横浜おもいやりライト大作戦」 |
日産自動車は8月30日、「横浜おもいやりライト大作戦 第一回市民会議」を神奈川県横浜市のヨコハマ創造都市センターで開催した。
「おもいやりライト運動」は、交通事故が増える夕方に、ヘッドライトを早期点灯し、歩行者や自転車にクルマの存在を知らせることで事故を防止するのが狙い。
同社は1962年から交通安全啓発に取り組んでおり、2003年からは「ハローセーフティキャンペーン」を年数回実施している。2010年はその一環として「おもいやりライト運動」を展開、そのキックオフとして2010年秋に皇居周辺のランナーにキャンペーンTシャツを着て走ってもらうイベントを開催した。このイベントは一定の注目を集め、同様のイベントを開催した地方もいくつかあった。
しかし、より一層の注目を集め、早期点灯が広がることを目指し、2011年はやり方を変えた。企業の押し付けのイベントでなく、日産の地元である横浜で、市民が自主的にイベント作りに取り組むことで、単なるイベントに終わらせず、早期点灯の浸透を図ろうというのが、この市民会議の目論見だ。
市民会議には同社の安全技術の開発者を含む社員のほか、モータージャーナリスト、横浜市で文化活動や観光事業に取り組む人、横浜在住者、在勤者など約40名が参加した。
2010年の「おもいやりライト」キャンペーン | 2011年は市民の自主活動的な取り組みに | 日産の交通安全キャンペーンを説明する同社の長谷川哲男氏 |
日産は2015年までに日産車が関わる死亡・重症者数を半減させることを目標としていたが、2009年に達成されたので、実質ゼロを目指すことに |
■ドライバーの意思でできる交通安全
ところで、交通安全の課題はいくつもある。例えば今年の秋の全国交通安全運動は「子どもと高齢者の交通事故防止」を基本とし、重点目標に「早期点灯」「全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底」「飲酒運転の根絶」を設定している。
どれも重要なことだが、その中から早期点灯が選ばれたのはなぜだろう。その理由を、日産自動車でエアバッグなどの安全技術を開発している山ノ井利美氏が説明した。
国内の交通事故では、自動車の乗員の死者が最も多かったが、エアバッグやボディーの技術の進化で減ってきている。しかし歩行者や2輪車、自転車乗車中の事故の減り方は乗員ほどでなく、2009年には歩行者と乗員の死者数が逆転、歩行者の死者が最も多くなった。つまり、歩行者の死者数減が最も重要な課題となったのだ。
ところで歩行者の事故は、夜間、薄暮時の死者が他の時間帯よりも多い。日産自動車ではオートライトを改良し、日没時でなく薄暮時でも点灯するようにしたが、路上にいるのはこうしたオートライトを装着したクルマばかりではない。「特別な機能がなくても、ドライバーの意思で早めに点灯することで、相手を思いやって自分を目立たせようと思うだけで効果が出てくる」(山ノ井氏)ことから、早期点灯がテーマとして選ばれた。
「世界の年間の交通事故死者数は推定で130万人。私たちの活動が世界に広まって、みんなが早めにライトを点けるようになってくれれば、130万を減らせるのではないか」(山ノ井氏)。
山ノ井氏 | 乗員の死者は減り続けているが、歩行者の事故が減るペースは遅く、2009年にはついに乗員と歩行者の死者数が逆転した |
歩行者の死亡事故は薄暮時が最も多い | 日産は薄暮でも点灯するオートライトを開発したが、こうしたオートライトがなくても、ドライバーの意思で早期点灯は可能 |
■早期点灯を盛り上げる様々なアイデア
会議は、「東京スマートドライバー」などのソーシャルムーブメントを手がける山名清隆氏の司会で進められた。
日産自動車の渡辺洋一氏は、厚木の同社開発拠点である日産テクニカルセンターと日産先進技術開発センターを紹介。合計約1万人の従業員中、約5000人が4輪車で通勤するという大拠点だが、まずここで早期点灯を定着させると宣言。
続いて山名氏が、横浜のグローバル本社では、同社社員が夕方に目立つ黄色いスカーフなどを身につけるといった、早期点灯運動への賛同を表明する行動をとることを提案。さらに10月21日の「あかりの日」は横浜の日没が17時になるため、日没1時間前の16時にヘッドライトを早期点灯するアクションを起こすことで、運動を展開することを提案した。
厚木のテクニカルセンターでは約5000人が4輪車で通勤しているが、この従業員がまず早期点灯を実行する | ||
横浜の本社では社員が黄色いものを身につけて早期点灯に賛同 | 10月21日には一斉早期点灯アクションを実行 | 厚木から横浜、一斉点灯アクションを経て世界へアピールする |
これに対し、身につけるグッズの提案や、点灯時刻にグローバル本社近くの大観覧車「コスモクロック21」の電飾を黄色にして知らせる、FMヨコハマで点灯時刻に点灯を呼びかけてもらう、点灯時刻を知らせるアプリを配布する、早期点灯する黄色い車を「光のペースカー」として走らせる、市営バスに早期点灯してもらう、などなど、多数の提案が出され、一旦閉会となった。
この市民会議は10月までに3回ほどの開催が予定されており、次回は9月27日となっている。
早期点灯への賛同のために身につけるグッズ。左はヘッドライトの光芒をイメージしたスカーフ。容器もランプをイメージするなど凝っている(右) | ||
男性がカバンなどに付けるタイ。エルグランドのトミカの箱がパッケージになっている |
(編集部:田中真一郎)
2011年 9月 1日