全日本ラリー第6戦「2011ARKラリー洞爺」リポート
JN4クラス・シリーズランキングは勝田範彦選手が再び奪取

JN3クラスで優勝した明治/漆戸組

2011年9月2日~4日開催



 JRCA(JAF全日本ラリー選手権)もスケジュールを折り返し、後半戦の第6戦「ARKラリー洞爺」が、サミット開催の地としても知られる北海道洞爺湖町を舞台として9月2日~4日の日程で行われた。

 洞爺湖周辺の洞爺湖町、伊達市、壮瞥町、豊浦町を闘いの場として巡るこのARKラリー洞爺、総走行距離532.02㎞のうち、クローズドの林道等でタイムを競うSS15本の走行距離は114.78㎞(ほぼグラベル)で、2日間で5本のSSを合計3周する設定である。

 これはシリーズを振り返っても長い距離のステージとなる。また、同コースは20数年ぶりに使用され、これまでの本州のステージとは異なり北海道らしいダイナミックなロケーションと走路が期待できた。ちなみに、次戦(第7戦)の「ラリー北海道」は1カ月経たずして迎えることとなる。それを占う意味でも大切な一戦となるのは必至だろう。

 しかし、折しも日本列島は台風12号による荒天の真っただ中、グラベルSSの距離に合わせて波乱含みの展開は容易に想像がついたのである。それを象徴するかの様に、時折襲来するゲリラ豪雨は金曜日のレキ日(コースの下見)からクルー・スタッフを悩ませながら土曜日のDAY1が明けた。

 主にランサーやインプレッサが参戦するJN4クラスで、ポイントランキング争いの最右翼にいる奴田原文雄選手(ADVAN・PIAAランサー)と勝田範彦選手(ラック名スバルSTI DL インプレッサ)だが、DAY1早々からミスマッチセッティングで奴田原選手は勝田選手の後塵を浴び続ける結果となった。そこに割って入ったのが柳澤宏至選手(CUSCO ADVAN EVO.X)で、DAY1では3本のベストタイムをマークし勝田選手を追撃。

 一方、DAY2では奴田原選手の猛追が始まった。1本目のSSで早くもベストタイムをマークし、柳澤選手をかわしてセカンドポジションを奪取。続くSSでは勝田選手がさらなる速さでプレッシャーをかける。両者譲らずの状況の中、奴田原選手は3本目のSSで痛恨のタイヤバースト。ここで両者の命運が分かれる結果となった。その後も追従を許さない速さで勝田選手が今季2勝目を挙げ、さらにはシリーズトップの座も奪い返す結果となった。トラブルを懸念し、クレバーなアタックを試みた柳澤選手は2位につけた。

序盤から安定した走りで優勝を飾った勝田範彦/足立さやか組。ポイントランキングも大きく一歩リードすることとなった
嬉々としたダートドライビングで柳澤宏至選手は今季自己ベストとなる2位を獲得
DAY1での遅れを取り戻すが如く、DAY2では激しいアタックを試みた奴田原文雄選手だが、タイヤバーストで戦線後退

 さらにドラマは起こった。セリカ、レビン、インテグラ、ブーン、ミラージュ、サトリアネオ等が参戦するJN3クラスでは、上位ランカー達が次々にメカトラブル等によりリタイアしていくというサバイバルレースが展開。これにより、小倉雅俊選手(DL コーセイ DP ブーン)、牟田周平選手(CUSCO ADVAN プロトン)、明治慎太郎選手(高崎くす子・ADVAN・サトリアネオ)の3つ巴のバトルが始まった。

 スペックを比較すると、ブーンはターボ(4WD)でサトリアネオは自然吸気の2WD(FF)。排気量差はあるものの、小倉選手はハードレインをものともせず独走態勢をDAY1序盤から整え始めた。それでも明治選手がSS6でクラスベストを叩き出すなど、DAY2に期待を抱かせた。

 そしてDAY2では最終SSでドラマが待っていた。最終SSは20㎞にも及ぼうかというロングダートで、小倉選手のブーンがまさかのタービントラブル。クルマを壊さないようにマージンを取り、それでも後続を引き離し続けた小倉に最後の最後に不運が襲う形となった。これにより、2位につけていた牟田選手が1位になるかと思いきや、渾身のアタックをかけた後走の明治選手が牟田選手を抜き去り、サテライトチームがワークスチームを抜き去るという結果となった。それでもプロトン勢としては、全日本ラリーにサトリアネオを投入した初年度に嬉しい1-2フィニシュを飾ることとなった。

終始安定した走りでトップの座を狙い続けた牟田周平/星野元組トラブルがなければ表彰台の中央は彼らのものだったであろう小倉雅俊/高橋巧組サトリアネオにクラス1-2フィニッシュをもたらした明治選手(左)と牟田選手(右)。サテライトチームとワークスという立場の違いはあるものの、よい僚友であることも確か

 ヴィッツ、フィット、スイフト、デミオ等が出走するJN2クラスは、ベテラン田中伸幸選手(YH クスコ itzz)がシリーズトップの天野智之選手(豊田織機・ラック・DL・BRIG・ヴィッツ)に競り勝った。

 ストーリア等が走るJN1クラスは、普段は全日本ラリージャーナリストでもある山口貴利選手(BOOBOW ストーリアX4)が手堅く走りきり優勝。

JN-2クラス1位は田中伸幸/遠山裕美子組(左)。2位は天野智之/井上裕紀子組(中)、3位は川名賢/関根慎二組(右)
JN-1クラスは山口貴利/山田真記子組(左)、2位には葛西一省/安田弘美組(右)がつけた

 波乱のラリー洞爺ではあったが、ポイントリーダー争いの熾烈化はたまたサトリアネオの上位独占等々、話は尽きないものとなった。次戦APRC第5戦およびラリー北海道は、北海道帯広市周辺で9月30日~10月2日に開催される。シリーズ終盤戦、各チーム・ドライバーの闘いぶりに期待したい。

今回も0カーで観客を魅了した新井敏弘選手。その走りはやはり別次元だった

(重城晃)
2011年 9月 14日