NEXCO東日本、事故対応の向上を図る路上作業安全研修
各事業所が交通事故処理を実演訓練

トラック総合教育センターで行われた路上作業安全研修

2011年10月6日開催



 NEXCO東日本(東日本高速道路)のグループ会社であるE-NEXCOパトロールは10月6日、「平成23年度 路上作業安全研修」を、埼玉県のトラック総合教育センターで実施した。E-NEXCOパトロールは、NEXCO東日本管内の高速道路サービスを行う会社で、落下物の排除や交通事故の際の車線規制、道路点検などの交通管理を行う。高速道路で見かける、NEXCOのパトロールカーもE-NEXCOパトロールによって運用されている。

 NEXCO東日本は、同様の交通管理会社を地域によって3社(ネクスコ・サポート北海道、ネクスコ東日本パトロール、E-NEXCOパトロール)運営。E-NEXCOパトロールは、関越自動車道(練馬IC[インターチェンジ]~長岡JCT[ジャンクション])、圏央道(あきる野IC~桶川北本IC)、上信越自動車道(藤岡JCT~上越JCT)など、西寄りの地域を担当する。

 路上作業安全研修は、そのE-NEXCOパトロールの各事業所(新潟、上越、長岡、湯沢、新潟通信、高崎、所沢、佐久、長野、岩槻通信)が参加し、ある想定の下に事故発生などの訓練課題を設定。各事業所が訓練課題をこなし、その課程を相互に検討して、交通管理業務の安全性の向上などを図っていく。基本的な交通管理マニュアルはあるが、各事業所が担当する高速道路の特性(積雪や勾配、交通量の多寡)によってアレンジが加えられており、互いに作業を実演することで、作業の違いを確認。作業工程を批評しあうことで、高速道路利用者および作業者にとって、より安全性の高い路上作業へと変更していく。

2台の事故車の前に落下物
 訓練課題は2種用意され、いずれも普通乗用車に小型貨物車が追突した状況を想定。訓練課題1は、2車線の高速道路において追越車線で追突、訓練課題2は、走行車線で追突したものとなっており、その位置の違いや状況の違いから、車線の規制方法などが異なってくる。

 以下に訓練課題2の模様を写真で紹介していく。なお、交通管理業務はパトロールカー1台に2名が乗車。事故の際の規制も、2名1組での作業となる。訓練実行事業所は、長野事業所。

訓練課題2。走行車線の普通乗用車に小型貨物車が追突。普通乗用車は自走不可、小型貨物車は自走可能。普通乗用車の前には、落下物が散らばる
追突事故は走行車線で発生。右の車線が追越車線ということになり、小型貨物車は少しだけ追越車線にはみ出している普通乗用車前方の落下物。追越車線にベニヤ板も散乱する事故車両の脇を抜けていく、ダミーの通行車両。このダミーの通行車両を、どのように規制するかがポイント
事故の通報を受け、道路パトロールカーが登場道路パトロールカーを路肩に止め、規制作業に入る。タイヤが路肩側に切れているが、これは万が一追突されても、道路側にクルマが飛び出さないようにするため1人がパトロールカーの後方に立ち、旗を振って事故の合図を開始。この旗により後続車を追越車線へと誘導する
もう1人は、発炎筒の準備をする。発炎筒は15分ほど持つと言う安全確認を声を出しながら実行。後方へと進む途中からは駆け足に
まずは、路肩に発炎筒を設置次の発炎筒は、やや走行車線寄りに
その次は、追越車線の近くまで
無事、追越車線手前まで発炎筒を置き終えた

 規制の最初の段階は、発炎筒を路肩から追越車線までスロープ状に配置していく。車線規制ができた段階で、事故車のドライバーに状況確認。その後、本部と連絡を取り、状況を報告していた。

 発炎筒は約15分の持続時間しかないため、発炎筒を設置後、矢印板(矢印の書かれた規制看板)、カラーコーンを次々に設置していた。

事故車のドライバーに状況確認走行車線に落ちていたベニヤ板は、この段階で回収
本部に状況を報告2人1組で、矢印板の設置に取りかかる1人が後方で旗を振り、1人がパトロールカーから矢印板を取り出す
通過車両に注意を喚起しながら、矢印板の設置を開始
追越車線に向けて矢印板を設置していく
矢印板の設置を終えたら、カラーコーンの設置に

 カラーコーンの設置を終え、車線規制を完了した段階で、事故車両の調査に入る。事故車両が自走できるか否か、オイル漏れやガソリン漏れなどがないかなどを確認。この訓練課題2では、普通乗用車は自走不能、小型貨物車は自走可能という想定なので、普通乗用車は人力で、小型貨物車はドライバーの運転で路肩に移動させていた。なお、事故状況の保存が必要な場合など、状況によっては路肩に移動させない場合もあるとのこと。

普通乗用車の損傷状況を確認。とくにオイル漏れやガソリン漏れはなし
小型貨物車は自走可能なため、ドライバーに路肩への移動をお願いする。その際の後方確認などは、隊員が補助する
普通乗用車は自走不可のため、ドライバーを乗せ、隊員が押すことで路肩へ

 事故車両がすべて路肩に移動したので、次は本線の規制解除に入る。路肩から追越車線手前までスロープ状に規制を行ったが、解除作業は追越車線側から開始。矢印板、カラーコーンを路肩に移動し、走行車線、追越車線とも通行可能となった。

追越車線側のカラーコーンから規制解除
路肩のみを規制する状況となり、走行車線、追越車線とも使えるようになった

 走行車線、追越車線とも通行可能になった後は、自走可能な車両の離脱作業を行う。自走可能な小型貨物車の誘導を行い、「お客さま、離脱!!」の大きな声とともに、貨物車は離脱していき、訓練課題2を終了した。

隊員が後方の安全を確認。「お客さま、離脱!!」の声とともに、自走可能な小型貨物車は路肩を離れていった

 訓練課題の終了後、作業終了を報告。その後は、各事業所から訓練に対する意見が述べられた。意見の中には、「小型貨物車の後ろに立って誘導するのは、ドライバーに声が届きにくいのではないか」というものがあるなど、各事業所間による作業の違いが現れているようだ。後方の安全確認を重視するなら、後方に立つのも妥当だと思うが、2人1組という限られた人員では、どこをどう重視していくのかがポイントとなる。

 この路上作業安全研修は、同じ訓練課題を事業所ごとに実際にこなしていくことで、細かな作業手順の違いを確認。ほかの事業所のよい点は取り入れるなど、作業のスキルアップを図っていく。実際、別の回に行われた所沢事業所は、発炎筒を多めに使う交通規制を実施。この回の確認作業では、活発な意見交換が行われていた。

作業が終了したことを本部へ報告訓練終了後の隊長への報告1回の訓練課題の終了後、ほかの事業所からの批評を聞く。作業手順の意図などを質問する声もあった

 1回の訓練時間は約30分。その時間中、休む間もなく的確に作業を進めていた。自分自身が事故やトラブルの当事者にならない限り、こうした一連の作業を見ることはできないが、道路の安全を守る作業は地道な訓練・研究の積み重ねであることを、改めて理解できるものであった。

(編集部:谷川 潔)
2011年 10月 14日