インテル、Atomプロセッサーによる組み込みシステム説明会
ターボシステムズは、AtomによるAndroid BSPをデモ

AtomプロセッサーE600番台搭載開発ボードでの、Android BSPデモ

2012年2月2日開催



インテル クラウド・コンピューティング事業本部エンベデッド/CE事業開発部 プロダクト・マーケティング・マネージャー 津乗学氏

 インテルは2月2日、報道陣向けに組み込みシステム向けAtomプロセッサーの説明会を開催した。この説明会の中で、ターボシステムズが開発したAtomプロセッサーE600番台向けAndroid BSP(ボード・サポート・パッケージ)が発表され、そのデモなどを行った。

 インテルで組み込み事業を担当する、クラウド・コンピューティング事業本部エンベデッド/CE事業開発部 プロダクト・マーケティング・マネージャーの津乗学氏は、「これからはインテリジェント・システムの時代になる」と言う。「2015年には150億台のデバイスがインターネットにつながり、2020年には35兆GBのデータがやり取りされる」と予測しており、そのデータを扱うビジネスの規模は10億ドルになると言う。

 このデータをどう知識に変換していくかがポイントとなり、データを収集するデバイスが進化することで、よりインテリジェントになるとする。

インテルの考える将来像。150億台のデバイスがインターネットにつながることで、巨大なビジネスチャンスが出現するデバイスの将来像。デバイスがインテリジェントになることで、テクノロジーが透明化していくと言うデバイスの進化の1例。65型のディスプレイを持つデジタルサイネージ自動販売機のコンセプトモデル

 津乗氏は、具体的な例として信号機を挙げ、「たとえば将来の信号機は、カメラやセンサーを備えるようになる。交通状況を画像やセンサーで認識し、データ処理をしてネットワーク経由でサーバーに蓄積する」と言い、リアルタイム処理が求められる信号機は、単なる端末であるシンクライアントにならず、高度な処理能力、つまりAtomプロセッサーによるデータ処理能力が必要になるとする。

進化したデバイスの活用例。これは車載用のインフォテイメントシステムデジタルサイネージも、ロケーションベースや顧客対応型など、さまざまな機能を持っていく

 実際、JR東日本ウォータービジネスが駅ナカに展開するデジタルサイネージ型次世代自販機では、カメラやセンサーを備え、自販機の前に立つ客を画像認識し、性別や年齢を解析。最適な商品をお勧めするほか、購入者の解析データ(画像は保存されない)を蓄積し、次の商品開発に活かしている。このデジタルサイネージ型次世代自販機には、高い処理能力が必要なことから、パソコン向けのインテル Core i5が搭載されていると言う。

 車載機器や産業機器向けなどのCPUは、省電力化、省スペース化、幅広い動作温度を持つAtom E600シリーズが担うのだが、組み込み機器の開発にとって問題となるのが、そのソフトウェアの開発工数だ。今回ターボシステムズが発表した「Android BSP for Intel Atom Processor E600 Series」は、その解決策の1つとなるもので、無償でダウンロード提供(http://android.turbosystems.co.jp/ja/)され、Atomを搭載した開発ボード上でAndroid 2.3のソフトウェア開発が可能になる。

インテル Atom E600番台のブロックダイアグラムターボシステムズの提供するAndroid BSP for Intel Atom Processor E600 Series開発課題
Android BSPで課題の解決を図るAtom E600とAndroid BSPを組み合わせるメリット

 説明会では、イノテックのT75キャリアボード上に、Atom E600シリーズを搭載したTX-70ドーターボードを組み合わせ、Android 2.3の動作デモを行った。デモ内容は、FelicaセンサーからSuicaの課金履歴を読み取り、それをGoogleマップにマッピングするものや、720PのHD映像の再生など。Atom E600シリーズでは、プロセッサーコアと別にグラフィックスコアを持つため、1920×1080ピクセルのフルHD映像の再生時でも、CPU負荷は低いと言う。

 ターボシステムズ 代表取締役社長の谷口剛氏は、Android BSPによる開発効率の高さを、「LinuxベースのMeeGoでは3人必要なることが、1人でできる」と表現。Android BSPでは、さまざまなモジュールが実装され、Java Native Interfaceも用意されている。

ターボシステムズ 代表取締役社長 谷口剛氏各種インターフェイスを備えるT75キャリアボードに、Atom E600シリーズを搭載したTX-70ドーターボードが載る。TX-70ドーターボードは、ヒートシンク下部に収まる
FelicaモジュールをUSB接続するSuicaカードをFelicaモジュールに乗せると、購入履歴が表示される切符の購入履歴をタッチすると、Googleマップに移動区間が表示される
NECエンベデッドプロダクツが開発中の試作品でもデモを実施。YouTubeの再生を行っていた

 Android BSPは、現時点ではAndroid 2.3ベースのものになっているが、その将来ロードマップについては、Android 3.xのサポートは考えておらず、Android 4.x(コードネーム:IceCreamSandwich)については、いつでも取りかかれると言う。ただ、このような組み込み機器の場合、インテルとの連携が大切とし、Android 2.3ベースのAndroid BSPを無償提供していくことで、Atom E600の採用機器を増やし、それらの機器のサポートビジネスを行っていく。

 インテルは、Atom E600を企業ユーザーにセールスしていく1つのソリューションとして、Android BSPを活用していく。

インテルは、豊富な製品や各種のサポートを通じて、インテリジェント機器へと進化する組み込み機器向け製品の普及を図っていく

(編集部:谷川 潔)
2012年 2月 2日