アレジがF1マシンで走った「鈴鹿サーキット50周年ファン感謝デー」 星野一義と中嶋悟は、F1マシンで本気バトルを披露 |
3月3日~4日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で50周年の記念イベントとなるファン感謝デーが開催された。海外からジャン・アレジ氏、ケビン・シュワンツ氏、ワイン・ガードナー氏が来日、インディカーシリーズで活躍する佐藤琢磨選手も参加するなど多くのファンを魅了したイベントの様子をお伝えしたい。
日本のレースシーンの中心ともいえる鈴鹿サーキットは1962年の完成から50年という記念の年を迎えることとなった。毎年この時期に行われるファン感謝デーだが、今年は50周年ということで、例年以上の盛り上がりとなった。
自動車レースの最高峰といえばF1。懐かしのF1マシンが走行するレジェンドF1マシンデモランではジャン・アレジ氏と佐藤琢磨選手がステアリングを握るというサプライズが用意された。
マクラーレンは佐藤琢磨選手がドライブ |
ラルースはもちろん鈴木亜久里氏 | ロータスはジャン・アレジ氏がドライブ | ミナルディは中野信治氏 |
チェッカー後に観客に手を振る佐藤琢磨選手 | フェラーリは田中哲也選手がドライブ | ジャン・アレジ氏は雨となった2日目もドライブした |
ジャン・アレジ氏がドライブしたのはロータス101。佐藤琢磨選手はマクラーレンMP4/5をドライブした。マクラーレンMP4/5は1989年のチャンピオンマシン。アラン・プロスト、アイルトン・セナが鈴鹿のシケインで接触した歴史に残るシーンが思い出される。会場に来ていたF1解説やCar Watchでおなじみの小倉茂徳氏によると「今回走るマシンのシャシーナンバーを調べたら8番。まさにシケインで衝突したときプロストが乗っていたマシンです」とのことだ。
ランボルギーニエンジンを搭載したラルースLC90のステアリングを握るのはもちろん鈴木亜久里氏。1990年の日本グランプリはプロストとセナがスタート直後の1コーナーで接触。直後にベルガーがスピン、さらにマンセルがピットロードで止まった波乱のレース。ベネトン2台に続く3位表彰台に立ったのはラルースに乗った鈴木亜久里氏だった。F1のチケットが入手困難だった時代。満員の観衆が日本人初の表彰台という快挙に酔いしれた。鈴鹿サーキットで行われた23回のF1グランプリで最も盛り上がった瞬間だったと言えよう。
フェラーリF2003はシューマッハが6度目のチャンピオンを獲得したマシン。ドライブするのはSUPER GTのフェラーリ使い田中哲也選手。さらにミナルディM192は元F1ドライバーの中野信治氏がステアリングを握る。
レジェンドF1マシンデモランは土曜と日曜に行われる予定だったが、日曜はあいにくの雨。土曜日は予定どおりフェラーリF2003以外の4台が走行、日曜はF2003とロータス101の2台だけの走行となった。多くのデモランは徐行するので当時の迫力が伝わらないものだが、土曜日のデモランは予想外のハイペースな走行を見ることができた。さすがに雨となった日曜はスロー走行。間違っても壊すことができないマシンなので仕方ないだろう。
小倉茂徳氏によるとF1マシンの保存はマシンだけではなく、マシンを調整するコンピュータ、カスタムソフトなども一式で保存する必要があり、オリジナルECUなどの電子部品が壊れただけで走れなくなるからスペアパーツの保存なども含め大変とのこと。実際に走れる状態でマシンが保存されていることにレースファンは感謝したほうがよさそうだ。
パドックのステージ登場した中野氏、鈴木氏、アレジ氏(写真左から)。司会・進行は小倉茂徳氏 |
F1関係で今回のファン感謝デーの新たな取り組みは、10月に行われるF1日本グランプリの現地先行販売だ。一般の販売は東コースが3月25日から、西コースを含む全エリアが4月8日からとなっている。これに先立ち鈴鹿サーキットに来た人だけに先行販売が行われた。
先行販売は時刻ごとの販売会場の入場整理券が配られ、販売会場では携帯電話、スマートフォン、パソコンで販売サイトにアクセスして購入する方式。会場でパスワードが伝えられるため会場内でしかチケットが購入できない。土曜日は前日から整理券を求める人が並ぶほどの人気で、整理券を持った人が会場入り口に終日長蛇の列を作っていた。
販売担当者に取材したところ、チケットは先行販売の土曜分、日曜分、ローソンチケット分、一般販売分に枚数が振り分けられていて、それぞれの枚数は非公開。今回の先行販売ではグランドスタンドV2席の1コーナー寄りとほとんどのアウトレットシートが土曜、日曜分とも完売となった。
来年以降の販売方式は未定だが、従来のよーいドンの方式よりは、土曜、日曜、一般販売と3回のチャンスができるので、人気の高い席を購入する場合は現地の先行販売に参加すると確率が高くなりそうだ。逆に枚数は不明だが先行販売で売れた分だけ一般販売の枚数は減っているので一般販売の競争は厳しくなりそうだ。なお、ローソンチケット限定の販売となるE2席は3月5日から販売が始まっている。
F1チケット購入に多くのファンが並んだ | 先行販売の会場では携帯電話、スマホ、PCで各自がアクセス |
星野一義、中嶋悟といえばレースファンで知らない人はいないだろう。日本のレース史に偉大な足跡を残してきた2人が1986年のF2最終戦、JAF鈴鹿GPレース以来26年振りに対決するイベントが「夢のF1競演 中嶋悟 × 星野一義」だ。
星野氏が乗るマシンはウィリアムズホンダFW11。1986年にナイジェル・マンセルがドライブしたマシンだ。中嶋氏が乗るマシンは黄色いキャメルカラーでお馴染みのロータス100T。自身が1988年にドライブしたマシンだ。
レースはフォーメーションラップを1周してからスタートの予定だったが、星野氏が勢いよくスタート。中嶋氏がそれに追随し、最終コーナーから2台が全開でストレートを駆け抜けそのまま2周目に突入。フォーメーションラップはなくなりそのままレース開始となった。予想外の展開に後方を走っていたマーシャルカーが大きく引き離され、本来は停止後にスタートするはずの2台を、はるか後方から遅れて追いかける珍事も発生した。
星野氏が先行、中嶋氏が抜き、再び星野氏が抜き返す。ストレートはホンダターボらしい速さを見せ大観衆を魅了。2コーナーでは星野氏の背後に中嶋氏がピッタリ貼り付くなど往年の戦いを彷彿させる走りを見せてくれた。再度の抜き返した中嶋氏がチェッカーを受け26年振りの対決は中嶋氏の勝利となった。
日曜日も同じ対決が予定されていたが、雨量が多く走行は中止。星野一義氏、中嶋悟氏に加え、それぞれの息子であり現役レーサーの星野一樹選手、中嶋大祐選手も参加してトークショーが行われた。
走行前にピットで談笑する星野一義氏(左)と中嶋悟氏(右) | いよいよコースへ向かう |
星野一義 vs, 中嶋悟の熱いバトル |
ウィリアムズをドライブする星野一義氏 |
ロータスをドライブする中嶋悟氏 |
現在、国内レースで最も人気が高いのはSUPER GTだ。ファン感謝デーではSUPER GTマシンのテスト走行も行われた。マシンは少なめだったがシーズン開幕を1カ月後に控え真剣なテストが行われた。チーム国光のRAYBRIG HSV-010はカラーリング前の黒いボディーでの走行となり、普段とは違う雰囲気を感じさせていた。SUPER GTの開幕戦は3月31日~4月1日に岡山国際サーキットで行われる。
SUPER GTのテスト走行が行われた |
今年のSUPER GT第5戦鈴鹿はPokka1000kmとして4年振りに1000kmの長丁場で争われる。かつて夏のロングバトルを戦ったマシンが鈴鹿に帰って来た。ロスマンズカラーのポルシェ962Cは荒聖治選手がドライブ。日産R92Cは安田裕信選手、日産MOTUL AUTECH Zは松田次生選手がドライブした。残念ながら天候が雨だったのでスロー走行となったが、往年のレースファンは懐かしさ感じただろう。
ポルシェ962C | 日産R92C | 日産MOTUL AUTECH Z |
フォーミュラ・ニッポンはテスト走行とラウンド・ゼロとしてエキシビションレースが行われた。今回のフォーミュラ・ニッポンの話題は元F1ドライバーで現在インディカーシリーズで活躍する佐藤琢磨選手が参加したことだ。フォーミュラ・ニッポンは翌日以降も鈴鹿サーキットで公式テストが行われることもあり全チームが参加。真剣なテスト走行が行われた。
フォーミュラ・ニッポンテスト走行に参加した佐藤琢磨選手 | 昨年のチャンピオン、ロッテラー選手はカーナンバー1番 | チーム・インパルに復帰した松田次生選手 |
Project μ/cerumo・INGINGをドライブする平手選手 | 今年もペトロナス・トムスに乗る中嶋一貴選手 | NAKAJIMA RACINGはカラーリングを一新 |
午前中のテストはドライコンディションだったが、エキシビションレースはウエットコンディションとなった。ポールポジションは昨年シリーズチャンピオンを獲得したロッテラー選手。特別参加の佐藤琢磨選手は2番グリッドからのスタートとなった。
10周で行われたレースはロッテラー選手がスタートで出遅れ、佐藤選手が先行。一昨年のチャンピオンであるオリベイラ選手が3位につけた。この3台はエキシビションレースとは思えない勢いで後続を引き離し、完全に本気モード。
3番手のオリベイラ選手のペースが速く、ロッテラー選手を抜き2位に浮上。さらに佐藤選手も抜きトップに立ちそのままチェッカーを受けた。2位に後退した佐藤選手はロッテラー選手に攻め立てられるがポジションをキープし2位でゴールした。
今年のフォーミュラ・ニッポンは4月14日~15日に鈴鹿サーキットで開幕する。佐藤琢磨選手もシーズン途中でスポット参戦するなど楽しみなシーズンとなりそうだ。
スタートでトップに立った佐藤選手 | オリベイラ選手がロッテラー選手を抜き2位浮上 | オリベイラ選手が佐藤選手を抜きトップに立つ |
2位争いをする佐藤選手とロッテラー選手 | 優勝したオリベイラ選手 | 塚越広大選手 |
山本尚貴選手 | 国本雄資選手 | 金石年弘選手 |
5月26日~27日に鈴鹿サーキットでD1グランプリが開催される。ファン感謝デーではD1エクストリームデモ走行が開催された。デモ走行は3台のドリフトマシンが東コースを最終コーナーから普段とは逆回りで走行を開始。逆バンク、S字、2コーナーと白煙を上げながら駆け抜けた。
ストレートでドリフト走行の華麗なテクニックを見せ観衆を魅了、最後は通常通り1、2コーナー、S字とドリフトで走り抜けた。
逆回りで逆バンクからS字へドリフトで抜けるマシン | 最後は通常どおりの向きで2コーナーをドリフトするマシン |
2輪では1993年の世界チャンピオン、ケビン・シュワンツ氏と1987年の世界チャンピオン、ワイン・ガードナー氏がそろって登場する豪華なイベントが開催された。
「2日間限りのWGP&MotoGP復活」と名付けられたイベントには2人の世界チャンピオンに加え歴代のGPマシンも登場した。フレディー・スペンサーが乗ったNS500、NSR500や、故加藤大治郎選手が乗ったNSR250、さらにCB500、RC212Vのホンダマシン。ヤマハからはYZR500(OW81)、YZR500(OWF9)、YZR250(OWL5)。そして2011年鈴鹿8耐を走ったヨシムラ・スズキS-GSX-R1000という豪華なマシン群だ。
イベントはシュワンツ氏がヨシムラ・スズキS-GSX-R1000でコースを1周してグランドスタンド前へ。ガードナー氏とトークショーを行った後、ガードナー氏と岡田忠之氏、伊藤真一選手、中野真矢氏、秋吉耕佑選手など日本を代表するライダーが名車に乗り込みデモ走行を行った。
ヨシムラ・スズキ GSX-R1000を駆るケビン・シュワンツ氏 |
グランドスタンド前のステージに登場したシュワンツ氏とガードナー氏 |
スタンド前に並べられたGPマシン | WGP&MotoGPマシンの走行の様子 | フレディー・スペンサーが乗ったマシンが2台 |
WGP&MotoGPマシンの走行は、2日間ともドライで走行が行われた |
2輪でも8耐・全日本ロードレースに参戦するマシンがテスト走行を行った。全日本ロードレースの開幕戦は3月31日~4月1日にツインリンクもてぎで開催される。
8耐・全日本ロードレースのテスト走行も行われた |
既報のとおり無限がマン島TTレースに参戦するために造ったオリジナルEVバイク「神電(SHINDEN)」も土曜、日曜とデモ走行を行った。音もなく近付いて来てラジコンの様なモーター音だけ残して走り去る様子は異様であり新鮮な感覚だった。
マン島TTレースに挑戦する無限EVバイク「神電(SHINDEN)」 |
ファン感謝デーではF1マシン、GTマシンなどがホームストレートに並べられ、間近で見ることのできるスペシャルグリッドウォーク&ピットウォークが開催された。土曜日は快晴となったこともありコース、ピットは大観衆で埋め尽くされた。特にF1マシンの回りは幾重にもファンが取り囲み近寄れないほどの混雑となった。
ラリーマシンもメインストレートでハデなドリフトパフォーマンスを実施。ドライバーは全日本チャンピオンの勝田範彦選手(左)と、世界戦に参戦する新井敏弘選手(右) |
パドックにはステージやイベントブース、飲食店などが並び、ステージにはドライバー、ライダーが何度も登場しトークショーでファンサービスを行っていた。スバルブースには話題のBRZが展示され、試乗会も開催され人気となっていた。GPマシンもデモラン以外の時間はパドックに展示され、すぐ間近で見ることができ、歴史的名車を撮影する人は後を絶たなかった。
土曜日のピット・グリッドウォークは大混雑となった | 車高の低いF1マシンは観客に埋もれてしまった。中央やや右にロータスの黄色のリアウイングが見える | パドックステージで加賀山選手の私物のレーシングスーツにシュワンツ氏がサイン |
BRZのエンジンルームを覗き込む観客 | 運転席にも多くのファンが座っていた | 試乗会でパドック内をドライブ |
DRIVE & LOVEプロジェクトのブースには高速道路運転のシミュレーター |
GPマシンはデモがない時間はパドックに展示されていた |
(奥川浩彦)
2012年 3月 6日