ダンロップ、史上最速をうたうスポーツラジアル「DIREZZA ZII」説明&試乗会(後編)
袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗


 ダンロップ(住友ゴム工業)のスポーツラジアルタイヤ「DIREZZA ZII(ディレッツァ ズィーツー)」。前編ではそこに投入された技術について紹介したが、後編では袖ヶ浦フォレストレースウェイでの試乗をお届けする。試乗フィールドはサーキットのみとなっていたが、サーキット走行を重視して開発されたタイヤのため、その最大の進化点を、岡本幸一郎氏の手によってお届けする。

 ダンロップのスポーツラジアルタイヤ「DIREZZA」。そのフラッグシップモデルとして登場したZIIを、早速試すチャンスを得た。

試乗は袖ヶ浦フォレストレースウェイで行った試乗車はSTI S206サーキット走行のため、ヘルメットとグローブを装備
ZIIは真円プロファイルによってショルダーブロックが大きくラウンドしているやる気にさせる戦闘的なトレッドパターン

 試乗車両はSTIのS206で、まずはモデルチェンジ前の製品である「DIREZZA SPORT Z1 STAR SPEC(ディレッツァ スポーツ ズィーワン スタースペック)」を試し、そのまま同じクルマでタイヤのみをZIIに履き替えて走るという、まさに“直接比較”の恵まれた条件下で新旧の違いを体感することができた。もちろん、タイヤはいずれも新品だ。

 ZIIのトレッドパターンを見ると、Z1 STAR SPECよりもストレートグルーブが少なく、センターからショルダーに向かって刻まれたグルーブもかなり少なめで、いかにもブロック剛性が高そう。より直線的な形状とされ、ところどころ断片的に配されたグルーブ自体のデザインは、見た目の新しさもあるし、強力なグリップを視覚的にも表現している印象がある。

 走行はインラップ、アウトラップを含めて各5周ずつ。まずZ1 STAR SPECをドライブし、Z1 STAR SPECの実力もなかなかのものであることを再確認。あまりクセがあるわけでもなく、限界も把握しやすくて乗りやすく、これはこれでわるくないように思えたのだが、その後にZIIをドライブして、すべての要素が引き上がっていることに感心させられた。


Z1 STAR SPECで走行後、ZIIにタイヤを交換したエンジンに負荷がかかるため、タイヤ交換の合間に各部を冷やす

 走り始めてすぐに体感できるのが、ステアリングを通して伝わってくるしっかり感が増していることだ。ZIIのほうがブロック剛性が高いのでヨレが小さく、また操舵初期の応答性が高まっていることを感じ取れる。

 フルブレーキング時に左右にフラつく感覚も小さいし、ブレーキを抜きながらステアリングを切り込んだときの応答の正確性が高いので、狙ったラインに乗せやすい。

 コーナリングでは、進入から立ち上がりまで、ZIIのほうがずっと一段上の安定感がある。コーナリング時のサイドウォールのたわむ印象も異なっており、ZIIのほうが剛性感は高く感じられる。開発者によると、数値としてのケース剛性自体は新旧で同等とのことだったが、スクエアショルダーのZ1 STAR SPECでは、高い横Gをかけると、あるところでショルダーが折れる感覚があり、そこを超えるとサチュレートする傾向が見受けられる。これはドライビングスキルを磨く上で、「限界」を知るという点では勉強になるのだが、もう少しマイルドでもよいと思う。

 これに対し、真円プロファイルの採用でラウンドショルダーとなったZIIは、初期から高G領域までフィーリングが一定していて、さらに限界を超えてからの挙動もマイルドで安定している。グリップ性能についても、とくに横方向のグリップ力が高まっている印象。このあたりランド比の増加したパターンデザインによる接地面積の増加も効いているはずだ。

 コーナーからの立ち上がりでは、ZIIのほうがZ1 STAR SPECよりも若干トラクションのかかりがよいようで、アクセルを開けても横に逃げず前に進んでいく感覚がある。おかげで早めにアクセルを開けることができる。

 ZIIはあらゆる要素においてパフォーマンスが上がっていた。こうした一連の性能を追求すると、一般的には限界域でピーキーな挙動になったり、ウエット性能が落ちたりするものだが、限界を超えても前述のとおりマイルドだし、ウエット性能もZ1 STAR SPECと同等を確保していると言う。機会があればウエット性能についても、ぜひ試してみたいところだ。

 また、あくまでサーキットでの試乗においてだが、微妙に乗り心地もよいように感じられた。これには、バネ下がいくぶん軽くなったことや、構造やプロファイルの変更も効いているのではないかと思う。

 走行後のトレッドを見ると、Z1 STAR SPECはそれなりに摩耗し、とくにストレートグルーブ付近がずいぶんただれているのに対し、ZIIはその症状がはるかに小さく、均一に摩耗していることが見て取れた。つまりこれまで述べてきたようなよい状態が、より長く楽しめるということだ。

走行後のタイヤ。左がZIIで、右がZ1 STAR SPECZ1 STAR SPECはトレッド面の荒れが激しい
ZIIZ1 STAR SPEC

 開発スタッフによると、あくまで市販スポーツタイヤなので、一般道での使用も含めライフにも配慮したとのことで、そのあたりにも期待していいようだ。

 「スポーツラジアルタイヤとして、ユーザーにとってどのようなタイヤが望まれているのか?」

 ZIIは、その答えがここにあるようなタイヤだったと思う。それにしても、タイヤという機能部品は、ニューモデルが出るたびに性能が向上していくことに驚く。今回のZIIも例外ではなく、スポーツラジアルタイヤに求められる性能と性格を、バランスよく身に着けたタイヤではないかと思う。

(岡本幸一郎)
2012年 4月 2日