ル・マン24時間、アウディがハイブリッドモデル初の総合優勝 アウディ勢は2000年、2002年、2010年に続き1-2-3フィニッシュ |
6月14日(現地時間)から走行が開始された第80回ル・マン24時間レース。16時から4時間のフリープラクティスが始まった。
■予選で上位を固めるアウディ、それに食い込むトヨタ
開始早々、8号車(トヨタTS030 ハイブリッド)がエンジントラブルでストップ。トヨタは7号車(トヨタTS030 ハイブリッド)のみの走行となり、アウディ勢4台とトヨタの1台がしのぎを削る展開となった。フリープラクティスとは言え、最後の調整の場とあって後半はアタックドライバーが乗車して最終確認を行い、21時からの予選に望んだ。
日は落ちたものの、まだ薄日が残る21時から始まった公式予選1回目にトップタイムをマークしたのは、1号車(アウディR18 e-トロン クワトロ)に乗る、昨年の優勝に大きく貢献したアンドレ・ロッテラー。
以下2号車(アウディR18 e-トロン・クワトロ)、3号車(アウディR18 ウルトラ)とゼッケン順にアウディが上位を独占し、中嶋一貴がアタックドライバーを務めたトヨタの7号車は何とか4号車(アウディR18 ウルトラ)を下したものの、8号車(トヨタTS030 ハイブリッド)は6位となり、ほぼテストデーのままの順位となった。
賞典外ながら注目の高効率レーシングカー「Nissanデルタウィング」は、プラクティスで消火器が作動するトラブルに見舞われたもののほぼ順当に予選を終え、やはりP2クラスの何台かを出し抜いた。
1号車(アウディR18 e-トロン クワトロ)で走行するアンドレ・ロッテラー | 7号車(トヨタTS030 ハイブリッド)を駆る中嶋一貴 | Nissanデルタウィング |
トヨタの巻き返しが期待された予選2日目、前日トップタイムをマークした1号車がわずか4周目に3分24秒台に突入し、前日のタイムをコンマ5秒短縮。これが目標タイムとなったが、これに勝るタイムはなかなかマークされなかった。
トヨタは8号車が7号車を上回るタイムをマークするものの、まだ26秒を切ることができなかった。R18 e-トロン クワトロの一角を崩したのは、なんと3号車のアウディR18 ウルトラで、そのタイムはクワトロをも上回った。
夜のセッションになり、アウディは何としてもハイブリッド車初のポールポジションを獲得するために、トップタイムを出した3号車にはアタックをさせず、R18 e-トロン クワトロのタイムを待つ格好となったが、それはわずか3周でロッテラーの手で達成されてしまった。
残りのアウディ勢も早々にタイムアタックを開始し、一時は上位4台をアウディ勢が占めた。このままで終われないトヨタ勢は、アウディとは対照的にタイムアタックを後半に行い、最後のアタックで8号車が3番手、7号車が5番手と、アウディの間に割って入った。
■4度目の1-2-3フィニッシュを飾ったアウディ
迎えた決勝日の6月17日は、あいにくの雨模様のウォーミングアップから始まった。
しかしスタートまでにはこの雨も上がり、路面もドライの状態でスタートを迎えた。まずは2号車が8号車をかわしアウディの1-2-3体勢を形成した。その後、3時間を過ぎたあたりからトヨタは7号車が素晴らしい追い上げをみせ、ついにコース上でトップを奪う。しかしその直後、まさに同時と言ってよいタイミングで8号車がミュルサンヌ進入で他者に接触されて宙を舞い、そのままタイヤバリアに激突してリタイヤとなった。
このため、セーフティカーが1時間ほど出たが、そのスタート直後に今度は7号車が特別参加のデルタウィングに接触、自らはピットに戻ったものの大きく順位を落とした。7号車はその後も何度かピットインを繰り返すも、レース開始から10時間でエンジントラブルのためリタイヤしてしまい、完全にアウディの上位独占となった。
2号車(アウディR18 e-トロン・クワトロ)が8号車(トヨタTS030 ハイブリッド)をかわし、アウディの1-2-3体勢を形成 | V型8気筒3.4リッター自然吸気エンジンに後輪駆動のモーターを備えるトヨタTS030 ハイブリッド | 7号車はレース開始から10時間でエンジントラブルのためリタイヤとなった |
レース終盤になり、2号車がトップの1号車に迫る勢いを見せたが、ポルシェコーナーの先でガードレールにクラッシュし、ピットで修復。コースに復帰したものの、トップを奪取することは諦めるしかなかった。その結果、378ラップで1号車のR18 e-トロン クワトロをドライブしたマルセル・ファスラー/アンドレ・ロッテラー/ブノワ・トレルイエ組が昨年に続き、みごとトップでチェッカーフラッグを受けることとなった。以下、2号車(アウディR18 e-トロン クワトロ)、4号車(アウディR18 ウルトラ)と続き、アウディ勢が1-2-3フィニッシュを達成している。
以下、優勝ドライバーのコメント。
●マルセル・ファスラー
素晴らしいレースだった。目まぐるしく状況が変わっていたが、私は素晴らしいチームで走れたと思っている。メカニック達はアクシデントの後、驚くほどのスピードでマシンを修復してくれた。そしてチームメイトのドライバー達も、いつもの通り素晴らしい走りをしてくれた。アウディにとって今日は素晴らしい日になったと思う。総合優勝を獲得したというだけでなく、アウディR18 e-トロン・クワトロという最新技術が1-2フィニッシュを獲得したことが、何より素晴らしい結果だった。
●アンドレ・ロッテラー
アウディR18 e-トロン・クワトロは非常に優れたマシンで、その信頼性も非常に高いものだった。ふたたび優勝できたことは本当に凄いことだ。素晴らしく気持ちがよい。レースは非常に激しい展開だった。レース序盤、去年はプジョーと、今年はトヨタとのバトルを繰り広げていた。残念なことにライバル達はリタイアしたが、その後はゼッケン2号車と激しいバトルを展開していた。アウディスポーツは、私たち全員に等しく優勝のチャンスを与えてくれた。チームメイト同士でも真剣勝負が許され、これこそがレースという感じであった。昨年、2つの大きなアクシデントの末にプジョーと戦った経験を活かし、今年もチーム全員がさらなる成長を遂げていた。そしてアウディ同士でのバトルを経験したことにより、我々はさらに大きく成長したと思う。
●ブノワ・トレルイエ
今年はコースがとても混雑していたので非常にタフなレースだった。他のマシンをパスするためにレコードラインから外れた途端に非常に滑りやすくなるために、かなり慎重に走らざるを得なかった。それには、非常に難しいコントロールが求められた。日曜日の朝、我々はチームメイトのマシンととてもスリリングでフェアなバトルを繰り広げた。2台のアウディR18 e-トロン・クワトロ同士のバトルは、ハイブリッドマシンが持つ高いポテンシャルをみごとに証明したと思う。とにかく、再び表彰台のトップに登れたことを嬉しく思っている。
アウディはこのほか、3号車が2度も第1シケインでクラッシュし、そのたびに足まわりを交換してレースに復帰させ、最終的に5位でフィニッシュ。この3号車のクラッシュで、4位には12号車のローラトヨタが入り、ガソリン勢トップとなった。
アウディは2000年、2002年、2010年に続き4度目の1-2-3フィニッシュとなった | 4位に入ったローラトヨタ |
スタート前の会見で、マツダは2013年からLMP2クラスに出場するデンプシーレーシングにクリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」のレース用エンジンを供給することを明らかにした |
なお、童夢はスタート直後からトラブルに見舞われ、チェッカー直前に復帰したものの、これは完走とはみなされなかった。
また、今年のル・マン24時間では、13台もの日産エンジンが参加したLMP2クラスに、新たなエンジンが参加表明した。それはマツダのクリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」のレース用エンジンで、2013年から世界耐久選手権(WEC)に正式に参加することがスタート前の会見で明らかになっている。
そのLMP2クラスでは、日産の連覇をホンダが阻止する格好となり、HPD(Honda Performance Development)が開発したHPD ARX-03bがクラス優勝を果たした。また、LM-GTEプロクラスでは51号車フェラーリ458イタリアが、LM-GTEアマクラスでは50号車シボレー・コルベットC6-ZR1が優勝を飾っている。
LMP2クラス優勝の44号車(HPD ARX 03b・ホンダ) | LM-GTEプロクラスで優勝した51号車(フェラーリ458イタリア) | LM-GTEアマクラス優勝の50号車(シボレー・コルベットC6-ZR1) |
(Photo:中野英幸)
2012年 6月 18日