独メルセデス・ベンツ、英ブルックランズで「CLS シューティングブレーク」公開
4ドアクーペから派生したスポーツワゴン

2012年6月29日(現地時間)
英ブルックランズ



 「A new era takes shape ~新しい時代が形になった~」。メルセデス・ベンツが6月29日(現地時間)に世界初披露したニューモデル「CLS シューティングブレーク」には、そんなフレーズが掲げられていた。

 発表会場として選ばれたのは、英国のモータースポーツ発祥の地であるブルックランズ。世界的にはル・マンやモンツァ、ニュルブルクリンクと同じくらいの聖地として名を馳せる場所であり、メルセデス・ベンツとしては初めてドライビングアカデミーを設立した地でもある。そして時は、華やかな歴史と伝統に彩られたヒストリックカーの祭典、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード開催前夜と、人々の昂揚が一気にレッドゾーンめがけて高まるタイミングだ。

 メルセデス・ベンツのCEO、ディーター・ツェッチェ博士はアンベール前のスピーチで、私たちにある質問を投げかけた。「シューティングブレークという名前は、19世紀にここイギリスで生まれました。では皆さん、ブレークのスペルは、“Break”と“Brake”、いったいどちらだと思われますか?」

アンベールされるCLS シューティングブレーク中央がツェッチェ博士

 これは社内でも多くの議論を呼んだらしいが、Breakには野生馬を飼いならして仕事をさせるという意味があり、Brakeはブレーキをかけて止めるという意味。シューティングブレークの場合、正解はBrake。だから英語表記ではCLS Shooting Brakeと綴るのが正しい。

 趣味やレジャーとして狩猟を楽しむ人たちが、狩猟犬を乗せて山へ出かけ、帰りには獲物を積んで戻ってくる。そうしたスタイルに合ったデザインと機能性を持つクルマがシューティングブレークだが、クーペと4ドアセダンが出逢って生まれた「CLS」の名を持つからには、やはりクーペの要素ははずせない。ツェッチェ博士はCLS シューティングブレークのデザインについて、「まるでアラビアの種馬とカバを掛け合わせたようなものだと思われるでしょう」と、クーペ×ユーティリティカーの融合をユーモラスに語った。

 もともとは、2008年に披露された「Consept fascination」で打ち出したデザインで、それが2010年の北京モーターショーで「Cosept Shooting Brake」としてより明確になり、このCLSシューティングブレークへと発展した。その間、CLSの販売台数は53%アップと右肩上がりで、これからますます上げていくためには、このシューティングブレークが果たす役割が重要だという。

 いよいよアンベールされた姿を見ていくと、全身から放たれるオーラはクーペの持つ気品そのもの。フロントマスクはシンプルな1本バーと2本バーの2種類のグリルが与えられ、LEDを秘めたコの字型のヘッドライトからフェンダーを経てサイドへと伸びるキャラクターラインが美しい。そしてサイドビューはルーフとウインドウが絶妙に違う弧を描き、花びらのようなテールランプや、クーペのような傾斜のリアゲートへと続いている。4956×1881×1413mm(全長×全幅×全高)と、長さはあるが幅と高さはそれほど巨大ではなく、Cd値も0.29と優秀だ。

 気になるユーティリティは、まずラゲッジ容量は通常590L~最大1550Lと大容量。リアシートが6:4分割で倒れ、フロアはしっかりフラットになる。カーペット素材のほか、オプションでフローリングフロアが選べるので、どことなくカントリー調にもできそうだ。またフロアボードにはダンパーが入っており、上げたままホールドできる。

 インストゥルメントパネルはメルセデスらしい機能性と重厚感がありながら、ドアライナーのアームレストが幅広くとってあったり、夜間はアンビエントライトがほのかに光るなど、独特のくつろぎ空間を演出。プッシュオープン式のセンターコンソールボックスやドアポケットなど、収納もひと通りそろっている。

 シートはしっかりとしたサポート形状だが、頭上のゆとりがあるのでほどよい心地よさだ。そしてリアシートは、頭上も足元も抜群に広いわけではないが、適度にゆとりがあり、センターアームレストにプッシュ式のカップホルダーや小物入れがある。これならカップルはもちろん、ファミリーでも十分なユーティリティである。

 パワートレインはディーゼルが150kW(204HP)の「250 CDI ブルーエフィシェンシー」と195kW(265HP)の「350 CDI ブルーエフィシェンシー」、ガソリンが225kW(306HP)の「350 ブルーエフィシェンシー」と300kW(408HP)の「500 ブルーエフィシェンシー」の4タイプ。250 CDIが4気筒、350 CDIと350がV型6気筒、500はV型8気筒ツインターボで、すべて7速AT「7G-トロニックプラス」が採用されている。350 CDIと500には4WDモデル「4MATIC」も用意される。

 ドアにアルミ素材を使うなど軽量化にも力を入れており、燃費は250 CDIで5.3L/100kmと優秀。発売は欧州で9月頃になり、日本導入予定は未定だが、年内は難しそうとのこと。メルセデス・ベンツの新たな挑戦が、日本のユーザーにどう響くのか、とても楽しみだ。

(まるも亜希子)
2012年 7月 2日