世界最高峰のクラシックカーレース「ル・マン クラシック 2012」開催
450台が参加。20万人の来場者がヨーロッパ中から集結

2012年7月6日~8日(現地時間)開催



 「第80回ル・マン24時間レース」が行われた約1カ月後の7月6日~8日(現地時間)に、“もう1つのル・マン”「ル・マン クラシック 2012」が行われた。

 ル・マン クラシックは、ル・マン24時間レースを運営してきたACO(フランス西部自動車クラブ)と、ル・マンシリーズレースやクラシックカーレースなどを主催するペーターオートによって、2002年に発足したアマチュアのためのクラシックカーレース。高級時計で知られるリシャール・ミルがメインスポンサーで、2年おきに開催、今年で6回目を迎える。

 この世界最高峰のクラシックカーレースは、ル・マン24時間レースで活躍したマシンが実際に観衆の前に姿を見せ駆け抜ける。戦前のブガッティやベントレーといった1923年からプロトタイプの1979年までのマシンが、年代別に6つのグリッドに分かれてレースが行われ、現在のル・マン24時間レースのコース(13.629km)を走行する。今年は450台が参加して熱いバトルを繰り広げた。

 会場では、今年ACOの会長に就任したピエール・フィヨン、ラリーで名を馳せたジャン・ラニョッティ、ル・マン24時間レースでは3連覇を含む4度の総合優勝を果たし、33回出場の記録をもつペスカロロ・スポーツの創始者、アンリ・ペスカロロなども姿をみせた。

リシャール・ミル氏は2010年に「ローラT70」で自らも参戦(いずれも2010年に撮影のもの)パドックの入り口にはLe MansClassicとリシャール・ミルの名前が入る
ピエール・フィヨンACO会長(左端)とジャン・ラニョッティアンリ・ペスカロロ(中央)

 そして今年は「AC コブラ」が生まれて50年。5月10日に89歳で死去した、AC コブラの生みの親で元ドライバーのキャロル・シェルビーと、かつてル・マン24時間レースで活躍したアメリカのクルマたちにオマージュが贈られ、コブラ、マスタング、フォードなどのアメリカ車が雨の中パレードを行った。そしてレースには40台以上のアメリカ車、約30名のアメリカ人ドライバーの参加があった。

コブラ、マスタング、フォードなどのアメリカ車が雨の中パレードを行った
1962年~1964年までに39台しか作られなかったうちの、23台のフェラーリ「250 GTO」がお披露目走行。並走して熱くなる場面もあった。急に強い雨が降ってきても、熱心な観客らは250 GTOを見物していた

 レースウイークには、エントリーチームは無論のことフェラーリ、アルピーヌなどを筆頭とする160のカークラブも参加。ヴィラージュと呼ばれる一角には星付きシェフの高級レストランやショップのブースが軒を連ねた。

 また服装は、ジーパン、半ズボンやサンダルなどは禁止で着飾った格好が望ましいと、イラスト付きでパンフレットに掲載されていることから、クラシック風に決めた観客やアメリカン風の家族をちらほらと見かけた。

レースには160のカークラブが参加
アルピーヌのクラブウエット路面コンディションのため走行会でクラッシュしてしまったTVR「サガリス」
ドライバー、VIP、メディアを運ぶシャトルバスはすべて軍用車が使用された
勤務もそこそこに夢中で写真を撮る警官も。警官の服装も“今”仕様と“昔”仕様が混在していた
クラシック風に決めた観客やアメリカン風の家族
ドライバーもビンテージ風一般的なレースでは禁止でも、着飾っていれば今回はOK? な女性カメラマンも

 また、スーパーカーやヴィンテージカーのオークション、メーカーやショップのブースなどさまざまな催し物が行われ、ときおり強い雨が降った生憎のウィークにもかかわらず、今年は20万人の来場者がヨーロッパ中から集まった。

オークション会場の様子。2007年優勝のアウディ「R10 TDI」、フェラーリ「GTC」(1966年)はともに130万~160万ユーロで展示してあった。ちなみにメルセデス・ベンツ「300SL」(1955年)は48万~54万ユーロ

7月6日(1日目)
 スタートの順番はグリッド4からで、その後5、6、1、2、3とそれぞれ1回目の予選(各45分)が行われ、2回目のナイトセッションは同じ順番で2時25分まで行われた。ナイトセッションの走行時間は35分と短くなる。

最終調整に余念がない各チーム
年数を経て独特の輝きを放つエンジンや金属パーツ。パドックで出走を待つマシンら
パーツを運ぶためのクルマもビンテージコースアシスタントもきれいにレストアされたルノー「エスタフェット 1000」
1923~1939年の車両が走行したグリッド1(Plateau1)
1949~1956年の車両が走行したグリッド2(Plateau2)
1957~1961年の車両が走行したグリッド3(Plateau3)
1962~1965年の車両が走行したグリッド4(Plateau4)
1966~1971年の車両が走行したグリッド5(Plateau5)
1972~1979年の車両が走行したGrid6(Plateau6)

7日、8日決勝レース(2日、3日目)
 スタートの順番は、予選と同じグリッド4からで5、6、1、2、3の順で16時10分にグリッド4がスタート。順番にそれぞれ24時間のうち45分ずつ3セット行われる。

 レース終了後に表彰式は行われるが、ル・マン式スタートの”セレモニー”に時間を費やすし、スタートして最初の周はペースカーが先導するなど、本気でレースをしているチームも無論あるが、勝敗はマシンの性能指数によるところが大きい。そのため、結果よりもこの偉大なレースに参加するところに重きを置いている参加者が多い。戦前のマシンだろうと近年のマシンだろうと、レース終了後の達成感は同じだけ高いというわけだ。

 今年はときおり激しい横雨が降る厳しい状況下だったため、ゴールの喜びもひとしおだったろう。年齢など関係なく、ル・マン クラシック全出場者から熱い情熱が感じられた。

ナイトセッション
筆者の友人のチームがグリッド1で3位表彰台を獲得(♯23)。走りきった満足感と表彰台獲得で倍増の達成感を味わっていた

(野間智/IMC)
2012年 7月 11日