【ナビレビュー】クラウドサービス「Smart Access」対応カーナビ「NX712」 クラリオンのフラッグシップ機はサービス連携を強化 |
2012年モデルのフラッグシップとなる2DINカーナビ「NX712」 |
クラリオンのカーナビは春に「CRASVIA(クラスヴィア)」「smoonavi(スムーナビ)」を発表というのがここ数年の流れ。2012年の春モデルはこれが変更され、Smart Access(スマートアクセス)対応ナビモデルとなる「NX712」と「NX612」、それに「NX502」の3モデルをラインアップした。本記事では、そのフラッグシップとなるNX712を実車レビューでお届けする。
■クラウド対応のミドルクラスナビ
NX712とNX612は2DINサイズに7型液晶ディスプレイを備え、地図は内蔵された16GBのSDHCカードに収録。CD/DVDプレイヤーのほかUSBメモリーからの音楽/映像再生、フルセグ地デジ、iPod/iPhone接続などに対応したメモリーナビタイプのAVN機だ。
NX712とNX612の違いはBluetooth対応の有無、地デジチューナーおよび受信アンテナ数が目立つ程度で、それほど大きな差はない。NX502はモニターを6.2型とした入門機的な位置づけ。地図データそのものもNX712/NX612がゼンリンなのに対し、NX502では昭文社を採用するなど異なっており、まったく違うラインのモデルとなる。
NX712/NX612の最大の特長となるのが、強化されたiPhone連携機能。従来は音楽再生のみ対応だったが、iPhoneに専用アプリ「Smart Access」をインストールすることで通信サービスにも対応。天気予報やニュース、インターネットラジオなどを、ナビからコントロールして利用することが可能になった。
スムーナビに搭載されていた「CARDGET(カージェット)」も引き続き採用。名前からも分かるようにウィジェット的なもので、必要なアプリをPCのインターネット経由でSDHCカードにインストールすることで利用できる。新たに「ドライブでタクシー」など4アプリが追加され、活用範囲が広がっている。
もう1つ忘れてはならないのが豊富な音声誘導に対応していること。クラリオンガールやお笑い芸人など同社のナビでは昔からあった機能だけれど、もう一歩踏み込んで人気声優による「ダウンロードボイス」(有料)が用意された。この6月に新キャラクターが追加され男女計9キャラクターから選択できるようになった。ファンはもちろん、味気ない案内に飽きた人にもうれしい機能といえそうだ。
そのほか、オンラインVICSによる交通情報の取得に対応するほか、AV機能でも独自の音響技術「Intelligent Tune(インテリジェントチューン)」により高品質な音楽再生を実現するなど、豊富な機能を備えている。
モニターをスライドさせるとCD/DVDスロットとデータ用SDカードスロット。地図データもSDカードに収録されるが、専用スロットはカバーされている | NX712には4GBのSDHCカードが付属。もちろんSD/SDHC市販のカードも利用可能だ | オプションケーブルでiPhone4/4Sを接続すればナビ連携アプリの利用が可能になる |
■便利で楽しいアプリによるカスタマイズ
新採用となったスマートアクセスの機能は、、iPhoneと連携をして、専用アプリを動作できること。使用するには、まず統括管理ソフトとなるSmart AccessをApp Storeからダウンロードしてインストール。起動すると利用できるアプリが表示され、選択することで個々のアプリがダウンロードされ利用可能となる。
アプリのメニュー画面。カージェットもスマートアクセスもここからスタート | スマートアクセスに用意されているアプリは現状5つ |
現在用意されているのは全世界5万局以上のネットラジオ放送が楽しめる「TuneIn Radio」、登録したソースからニュースをチェックできる「News4car」、5日分の天気予報が取得できる「Weather4car」、Twitterクライアントの「Tweet4car」、Facebookクライアントの「FB4car」の5つ。
なかでもナビ向きといえるのがTuneIn Radio。国内キー局はもとより地方のコミュニティ局、さらには海外の放送まで選択できるため、きっと好みの放送が見つかるはず。FM放送が入りづらい山間部でも、通信キャリアの電波が届きさえすれば聴き続けられるのもうれしい。レジャーはもちろんのこと、睡魔と戦いつつ長距離ドライブに挑むドライバーの強い味方にもなってくれそうだ。
iPhoneを利用するiPhone連携と異なり、ナビ上で動くアプリがカージェット。こちらはプリインストールされたもの以外は、同社のオンラインショップからパソコンでダウンロード、SDカードを介してナビにインストールして利用する。現在、タクシーメーターをシミュレーションする「ドライブでタクシー」などネタ的(?)なものから、「駐車場満空情報」など実用的なモノまで8アプリが用意されている。
駐車場満空情報など通信を利用するタイプは、Bluetoothによる携帯電話接続またはオプションの通信モジュールが必要になる。Bluetoothを利用する場合には「外部機器を使ったダイヤルアップ接続」となるため、iPhoneや一部スマートフォンでは未対応となるほか、キャリアとの契約によっては料金も定額にならない場合があるので注意が必要。機能としては便利なだけにWiFi対応など、もっと手軽に利用できる方法を採用して欲しいところだ。
世界各国のラジオが楽しめるTueIn Radio。日本のローカル局はもちろん、海外のポッドキャストなどマニアックな選局も可能。iPhoneが通信可能なら聴けるので、FM放送が少ない地域でも楽しめる |
5日分の天気予報や降水確率、気温などが表示できるWether4car。主要都市最大5カ所を登録しておける | iPhone側で登録したニュースソースからの記事を表示できるNews4car。気になる記事に星マークをを付けておけば、後でまとめてみることができる |
FacebookクライアントのFB4car |
TwitterクライアントのTweet4car。定型文を登録しておき、2つを選んでツイートできるので、待ち合わせの際などに便利 |
カージェットアプリは4つ追加されて8個になった |
新たに追加された「ドライブでワリカン」。ガソリン単価と燃費を事前に入力しておくことで、自動的に乗車人数に合わせてワリカン金額を算出してくれる | 高速道路代金などを払った人には上乗せも可能 |
途中乗車/降車にも対応 | きっちり計算してくれるので几帳面な人も安心!? |
タクシー気分が味わえる「ドライブでタクシー」 | 地域による運賃差や小型/中型など細かく設定できる | ドライバーの音声もカスタマイズできる |
走行中は距離や時間に応じてメーターが上がっていく。バックグラウンドでの動作も可能 | 精算時には領収書も。保存しておくことも可能だ |
切羽詰まったときの救世主「トイレサーチ」。自車位置から近いトイレを探すことができる。Bluetoothによる携帯電話の接続が必要 | 詳細情報を見ることも可能 | 検索カテゴリーを選んでおけば、条件に合うトイレだけを探せる。 |
こちらも通信機能を利用する「道の駅サーチ」。機能的にはトイレサーチと同様 | 検索条件の設定もOK |
詳しい施設の内容や写真など詳細情報の確認が可能 |
自車位置付近のタイムズ駐車場を検索できる「駐車場満空情報」。近い順と安い順のソートが可能。通信環境が必要だ |
駐車場の満車・空車のほか、料金や営業時間など詳細情報も見ることができる |
ユーザー投稿による道の情報。見るだけでなく自分が投稿することもできる。こちらも通信タイプ |
通信機能を利用して自車位置周辺のガソリンスタンドを検索するe燃費。「おすすめ」「安い順」「近い順」でソートが可能 |
スタンドの情報を見ることもできる | こちらはスマートフォンのアプリでもお馴染みの美人時計。通信を利用すれば自車位置付近の美人画像を手に入れることもできる |
■16GBデータによる豊富な検索機能が便利
クラリオンナビが伝統的に力を入れているのが検索機能だ。約3500万件のデータを収録する住所検索をはじめ、個人宅・タウンページ合わせて約3850万件の電話番号検索、約850万件の名称検索など豊富なデータを収録。加えて、TV番組で紹介されたスポットを検索できる「TVサーチ」、地図と同時に自車周辺のグルメやスポット情報を表示する「ピクチャービュー」など、独特の検索方法も備えている。「この周辺で食事したい」とか、「遊べるところはないかな」など、明確に行きたい場所が決まっていない時にこそ、役に立ってくれそうだ。
ディスプレイは今や標準となった感のある7型ワイドVGAタイプ。LEDバックライトの採用もあって、画面に表示される地図はクッキリと美しく、とても見やすい仕上がり。2D/3D、2画面、ルート情報など、多彩な表示モードが用意されており、シチュエーションに応じて使い分けができるのも魅力。普段は2D固定のユーザーが多いとは思うけれど、知らない道を走る際など3Dや2画面を使ったほうが便利な場合もある。こうしたモードが用意されているのは、やっぱりありがたいのだ。
渋滞情報は標準装備のFM多重で取得できるほか、過去のデータを利用した統計交通情報を収録。また、携帯電話をBluetooth接続することで、走行中のタクシー情報などを元にしたオンライン交通情報の取得も可能だが、東京都内など一部に限られてしまうのが残念。オプションで光・電波ビーコンユニットも用意されているので、都市部の走行が多いユーザーはそちらを利用するのもよいだろう。
ルート探索は「有料優先」「有料(省エネ)」「一般優先」「一般(省エネ)」「距離優先」の5ルート。優先は所要時間、省エネは燃料消費を重視したルートを選択するもので、省エネではアイドリング時間や道路の高低変化、加減速なども加味するとのこと。実際に試すことができなかったため実力のほどはわからないが、「どのルート選んでもあんまり変わらない」なんてパターンよりは実用性が高そうだ。
ローカルデータを利用するカーナビの場合、地図の鮮度が重要となるが、NX712ではアップデートを3年間無料で行える(NX612では1年間)。しかも、うれしいことに発売からではなく、実際にユーザーが利用を開始してから。この間は2カ月ごとに差分更新、毎年6月に全更新のデータが配信される。実際の作業としてはパソコンでサイトにアクセスしてデータをダウンロード、ナビから取り外した地図用SDカードに更新データを書き込むカタチ。作業後はカードをナビに戻すだけなので、車内での作業が不要というのが便利だ。
操作は「AV」「現在地」「メニュー」から。2DIN一体型ナビでは基本となっているパターンだ | メニューボタンを押した際の表示。項目も分かりやすい |
表示を減らしたシンプルメニューも用意されている | 100mスケール表示。表示内容を道路と文字情報に絞っているためスッキリと見やすい。紫色の道路は「マップル渋滞ぬけみち道路地図」による抜け道表示 |
10m/25m/50mでは建物の形や一方通行も表示される |
200mスケール以上の地図表示 |
画面左にある「表示変更」ボタンで表示選択画面に | 「2画面」ではスケールなどの異なる画面を同時に表示することが可能 | 地図と文字情報を同時表示する「ルート情報」。高速道路だけでなく一般道でも表示できる |
地図とエコロジー表示の2画面。 | 地図とAV系の2画面表示もできる。ワイドVGAモニターなので字幕も読める |
車両設定をしておけば、より燃費のよい運転を実践できる。日々の記録も保存可能だ |
携帯電話をBluetooth接続、またはUSB通信モジュールを接続すればオンラインで交通情報の取得が可能 | 200mスケールと500mスケールでの渋滞表示。タクシーによるプローブ情報がある場合は点線で表示される |
目的地検索のメニュー画面 | 埼玉スタジアムを検索した例。ある程度入力すると候補が表示されるのは便利 | 駐車場の入り口データも収録しているので、ピンポイントで行きたい場所を設定できる |
スカイツリーを検索してルート探索する例。たった4文字入力しただけでほぼ目的の場所を見つけた | 「候補を表示」すれば部分一致した候補が抽出される | こちらも駐車場情報が用意されている |
直営、提携駐車場はイヤだ、なんて場合はそこから周辺検索で駐車場を選ぶなんてことも可能 | 目的地を決定したらルートを探索。最大5ルートまで同時に探索できる |
新東名の道路データもすでに収録済みでルート設定が可能。ただし、料金データなどは10月の差分更新で反映される予定 | 目的地検索のメニュー画面から「他の検索方法」を選んだ画面 |
約80のテレビ番組で紹介されたスポットを検索できるTVサーチ。番組名から選択できるほか、自車位置周辺やジャンルでの絞り込みが可能。詳細の確認もOK |
わざわざ検索しなくても地図の下部に周辺のオススメスポットを表示してくれるピクチャービュー。写真付きなのでわかりやすく選ぶのもカンタン! |
約1300のジャンルから施設を検索できるジャンル検索。「駅」「空港」などは文字入力よりこちらの方がラク | 行きたい施設のジャンルがわかりづらい、なんて場合はキーワード検索で。例えば「マンガ」と入れるとご覧の通り | ジャンル検索では周辺のインターチェンジを探すなんて使い方もできる |
文字や音声のカスタマイズに対応しているのがNX712のおもしろさ | 文字は日本語のほか英語、中国語、韓国語の切り替えが可能。ただ、おもしろ半分で変えてしまうと、戻すのに苦労するかも |
ファンにはたまらないバラエティボイス機能。ナビに記録しておけるのは2つまでなので、コンプして切り替えて楽しみたいなんて場合は、消去→取り込みが必要になる |
交差点拡大図は単なる縮尺違いの拡大図ではなく、デフォルメされたもので分かりやすい表示になっている |
■豊富なパターンで分かりやすく案内
一般道でのルート案内は交差点拡大図をメインに、レーンガイドや方面案内看板、さらには実際の風景をベースにしたイラストや、側道への移動にも専用のイラストが用意されていたりする。イラストによる案内は、今回走行したさいたま市周辺の片側1車線道路でも表示されるなど相当に収録数が多い様子。16GBの地図データならでは、といえそうだ。
精度の要となるジャイロは3Dタイプを搭載し、都市高速や外環道などの高さデータを収録。今回は威力を発揮するシチュエーションがあまりなかったこともあってか、走行中の自車位置はきわめて安定。地下駐車場でのテストでもブレてしまうことはなく、据え置き型ならではの高い精度を備えているようだ。
実際の風景を元にしたイラストによる拡大図は文句ナシの分かりやすさ。収録されている交差点が意外に多いのがうれしい | 方面案内看板も3万4000枚と数多く収録 |
オーバーパスなどでの側道案内も用意される | 分かりづらい場所にあることが多い都市高速入り口もイラストで案内 |
高速道路での文字情報との2画面表示。距離や通過時刻だけでなく、出口のETCレーン表示など情報が豊富だ | 出口近くやジャンクションではイラストにより案内 | 料金所を過ぎての分岐も分かりやすい、ここにもETCレーン表示があるのは親切 |
ルート案内中も中継地点の追加が可能。探索条件も変更できる |
都市高速の入り口に向かわず横の側道を進んでみた。左右方向の差はほとんどない場所だが、すぐにリルートが開始されたあたり精度の高さがうかがえる | 地下駐車場での精度チェック。出口位置はご覧の通りピンポイントで正確 |
■幅広いソースへの対応とサウンド調整機能を用意
AV機能はフルセグ地デジのほかCD/DVD再生、SDカードやUSBメモリからの音楽/映像再生、Bluetoothを使った音楽のストリーミング再生、iPhone/iPod接続に対応。NX712には4GBのSDHCカードが付属しており音楽CDを4倍速で録音でき、Bluetoothにより携帯電話を接続すればタイトル情報の取得も可能。もちろん、市販のSDカードを使うこともできるから、より多くの曲を録音したければ大容量のカードを用意すればよい。
よりよいサウンドを楽しむための調整機能も充実している。なかでも面白い機能が「ヴォーカルイメージコントロール」。ヴォーカルの音域を抽出するとともに、スピーカーの音量バランスを調整することで、ヴォーカルの定位を前後左右に変えることができる。高級カーオーディオなどには発音タイミングを変えることで定位を調整するタイムアライメントが搭載されているが、これはその簡易版といったところ。設定はカーソルで動かすだけとカンタンだし、効果もわかりやすく使い勝手のよい機能だ。そのほか、MP3など圧縮音源の高音質化を図る「サウンドリストアラー」、小型スピーカーでサブウーファー並の重低音を実現する「バーチャルバス」なども搭載されている。
AVボタンを押した際の表示 | iPhone/iPodは音楽だけでなく動画の再生にも対応。アートワークの表示にも対応する | 地デジは4チューナー×4アンテナ。受信に使わないアンテナを利用する「裏サーチ」で、県境など電波の切り替わる場所でも安定した受信が可能 |
SDカードはMP3/WMA/AACといった音楽データのほか、MPEG-4やWMVファイルの再生にも対応。そのほかさまざまなデータのやりとりに活用できる |
ヴォーカルの定位を自由に変更できるヴォーカルイメージコントロール。効果抜群なのでぜひ活用したい | 普通のバランス調整も可能 | 圧縮によって失われた高音域のデータを復元するサウンドリストアラー、小型スピーカーでサブウーファー並の低音を再現できるバーチャルバスを搭載 |
ハイパスフィルタ/ローパスフィルタなど、システムアップに便利な機能も用意 | グラフィックイコライザーはプリセットのほかユーザー設定を3パターン記憶できる |
■使いやすいナビと今後に期待のスマートアクセス
iPhoneとの連携強化やカージェットを搭載したNX7120とNX612のNXシリーズ上位異機種。当然、注目はそちらに集まるところだけれど、実はナビの基本性能の高さこそがポイント。とくに検索機能の便利さは一度使ったら手放せなくなってしまうほど。メモリーナビならではのサクサクな操作感も手伝って、かなり使い勝手のいいモデルといえる。
iPhoneを使ったスマートアクセスに関しては導入第一弾ということもあって、TuneIn Radio以外のアプリはもう1つ魅力に欠ける印象。ただ、昨年秋から採用されたカージェットが、今回のアプリ追加で面白く魅力的なものになりつつあることを考慮すれば、今後のアプリの充実にかかっているといえそうだ。もう1つ不満を述べてしまえば、カージェットなどの通信がBluetoothによるダイヤルアップ接続のみというのも残念。iPhone(またはAndroid)だけで完結する仕組みがほしいところだ。
ナビとしての基本性能の高さは前述したとおりで、ダウンロードボイスも好きな人には堪らない魅力となるハズ。フルセグ地デジをはじめAV機能も充実している。それでいて実売価格はベーシックモデル的なレンジと、コストパフォーマンスはかなり高いといえる。単なる道案内だけでなく、もう少しプラスαがほしいなんて人には最適なモデルといえそうだ。
(安田 剛)
2012年 7月 31日