ミシュラン、新スタッドレスタイヤ「X-ICE XI3(エックスアイスリー)」発表会
「ユーザーが最も望む、アイスブレーキ性能を強化」

新スタッドレスタイヤ「X-ICE XI3(エックスアイスリー)」と、日本ミシュランタイヤ 代表取締役 ベルナール・デルマス氏

2012年7月27日開催



 日本ミシュランタイヤは7月27日、新スタッドレスタイヤ「X-ICE XI3(エックスアイス エックスアイスリー)」を発表。同日都内ホテルで技術説明などを含む発表会を開催した。

 X-ICE XI3は、2008年に発売された「X-ICE XI2(エックスアイス エックスアイツー)」の後継となるモデル。今シーズンは、14インチ~18インチの計32サイズが投入され、それ以外のサイズはX-ICE XI2が併売される。サイズ一覧や製品概要については、関連記事を参照のこと。

日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ベルナール・デルマス氏

ユーザーが最も望む、アイスブレーキ性能を強化
 日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ベルナール・デルマス氏は、「スタッドレスタイヤに何を望んでいるのか。どのようなことで困っているのを念頭に消費者調査を行ってきた」「日本の研究開発チームが中心となって、日本で開発してきた」と語り、消費者のニーズを分析すると同時に、北海道の士別にある開発センターで作られた新スタッドレスタイヤがX-ICE XI3だと言う。


ミシュランのブランドキャラクター「ミシュランマン」が、X-ICE XI3をアンベール
X-ICE XI3。X-ICEシリーズの最新作として、4年ぶりにモデルチェンジ

乗用車タイヤ事業部 マーケティング部 ブランド戦略マネージャー 加藤久美子氏

 乗用車タイヤ事業部 マーケティング部 ブランド戦略マネージャーである加藤久美子氏は、ミシュラン30年のスタッドレスの歴史を振り返り、「日本での経験を活かして開発した製品がX-ICEシリーズ」と言う。J.D.パワーの冬用タイヤ顧客満足度調査で9年連続No.1というX-ICEシリーズの評価を紹介した上で、ユーザーのニーズを紹介。

 ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能の第一は「凍結路の制動力」であり、ユーザーが現在のスタッドレスタイヤに感じてる不満の第一は「凍結路の制動力」になったと言う。とくに凍結路の制動力に関する不満は、札幌でも東京でも1位となっており、「ユーザーが最も望む、アイスブレーキ性能を強化した製品がX-ICE XI3」と言う。

ミシュランスタッドレスタイヤ30年の歩みJ.D.パワーの冬用タイヤ顧客満足度調査で9年連続No.1J.D.パワーの評価項目詳細
ユーザーがスタッドレスタイヤに最も求めるものは「凍結路での制動力」ユーザーが現在のスタッドレスタイヤに最も感じている不満も「凍結路での制動力」

 もちろんそのほかの、耐久性や省燃費性、静粛性なども向上しているが、第1に目指したのはアイスブレーキ性能の強化。そのためX-ICE XI3のプロダクトメッセージも、「新アイスグリップがもたらす『止める力』」となっている。

スタッドレスタイヤに求められることプロダクトメッセージは「新アイスグリップがもたらす『止める力』」


乗用車タイヤ事業部 マーケティング部 プロダクトマネージャー 大江一孝氏

X-ICE XI3には第3世代ウィンターグリップテクノロジーを投入
 その“止める力”を実現した技術については、乗用車タイヤ事業部 マーケティング部 プロダクトマネージャーの大江一孝氏が解説。大江氏は、スタッドレスタイヤに求められるアイス(凍結)・スノー(積雪)路面性能を青で、ドライ性能やウェット性能、環境性能などを赤で示し、それぞれをウィンター・セーフティとトータルバランスに分類。ウィンター・セーフティの実現には「第3世代ウィンターグリップテクノロジー」を、トータルバランスの実現には「バランスオブパフォーマンス」テクノロジーを投入したと紹介した。

スタッドレスユーザーのニーズを大きく2つに分類ウィンター・セーフティとトータルバランスと名付けた
それらを解決する技術パッケージ第3世代ウィンターグリップテクノロジーに含まれる技術

 これらは、技術をまとめたパッケージ名称となり、それぞれに多数の技術が詰め込まれている。たとえば、第3世代ウィンターグリップテクノロジーは、「トリプルエフェクトブロック」「マックスタッチ」「ZigZagマイクロエッジ」「バリアングルサイプ」「115%ブロック」「フレックスアイスコンパウンド」「新Vシェイプデザイン」から構成される。

 トリプルエフェクトブロックは、「クロスZサイプ」「マイクロポンプ」「ZigZagマイクロエッジ」からなる。タイヤ両外側を構成するブロックに刻まれており、ブロック剛性を保ちながら吸水と、エッジ効果を実現。マイクロポンプ、クロスZサイプは、X-ICE2でも使われていたが、ZigZagマイクロエッジを新たに配置したことで、アイス性能とスノー性能が向上し、トリプルエフェクトブロックと名付けられた。

トリプルエフェクトブロックを構成する技術。外側のブロックデザインにかかわるものだけに、すべての基本となる路面をかくようなエッジ効果を発揮するヨコ方向のZサイプと、ブロック剛性をしっかり支えるタテ方向のZサイプを立体的に配置した。クロスZサイプ。複雑な形状を描くマイクロポンプは、路面の水分を吸い出す役割を持つ
アイス路面でのブロックの働き。ブロックのエッジで路面を引っかきクロスZサイプのエッジでも引っかき効果を発揮
マイクロポンプで水分を吸収ZigZagマイクロエッジで、ブロックがアイス路面から離れる際もグリップ効果を発揮
スノー路面では、ブロックが沈み込むクロスZサイプやマイクロポンプ内に雪が入り込み、雪柱が生成されるその雪柱が壊れるまでの力(雪柱せん断力)をグリップ力につなげている

 マックスタッチは、接地面を均一化する設計技術。最新のシミュレーションツールを用いて、接地面圧がより均一となるようにした。大江氏は、人がアイス路面を歩く際の力のかけ方を例に挙げ説明。均等に力がかかったほうが滑りづらく、アイス性能向上に貢献すると言う。

マックスタッチZigZagマイクロエッジやバリアブル アングル サイプ
メリットと技術の対比図

 それらを技術投入した結果、アイスブレーキング性能は、X-ICE2に比べ約9%向上。加速時などの指標となるアイストラクション性能も約5%向上している。

アイスブレーキング性能が約9%向上アイストラクション性能が約5%向上

 また、全体的な性能向上を図るために投入されたのは、先ほどと重複するものもあるが、偏摩耗を防いでタイヤの長寿命化を可能にする「マックスタッチ」、初期効果の維持を実現する「トレッドデザイン」、静粛性を向上させる「周波数コントロール」や「サイレントアイ」、サイプ底の形状を丸くすることでサイプ底にかかるストレスを分散する「ティアドロップ」などがある。

タイヤとしての性能向上バランスオブパフォーマンスと名付けられた技術群50%摩耗しても、トレッドパターンがそれほど異なることはない
静粛性向上技術や、高速耐久性向上技術など2つの技術パッケージでX-ICE XI3は構成されているタイヤ性能比較。アイス・スノー性能だけでなく、ノイズやウェットハンドリング面でも優れている

 X-ICE XI3はX-ICE XI2よりも大幅に静かなタイヤとなったのかというと、どうもそうではないらしく、大江氏は「X-ICE XI3はX-ICE XI2よりも115%のブロック数となっており、そのままだと必然的に騒音が増えます。静粛性向上技術を入れることで、XI2同等以上となっています」と言う。つまり、ブロックを増やす(=雪や氷に対する引っかかり増やす)ことでアイスブレーキ性能を向上し、その結果発生しがちなデメリットを抑えているということだ。

X-ICE XI3のサイドウォール。ミシュランの社内環境基準に適合したタイヤであることを表す「GREEN X」マークや、回転方向指定などの表示が刻まれる
X-ICE XI3は、回転方向指定のある左右対称パターンを採用する。サイプの数や配置などがX-ICE XI2から大きく変化している。内側ブロックのサイドや外側ブロックの上部には、新たにZigZagマイクロエッジが設けられた
中央のストレートグルーブに刻まれるのはスノー路面で効果を発揮する「ステップグルーブ」。X-ICE XI3では、千鳥状に変更されたX-ICE XI3の内側ブロックは、複雑な形状をしているX-ICE XI2のトレッドパターン。ブロックの独立具合、ZigZagマイクロエッジの有無など違いは明らか
X-ICE XI3(左)とX-ICE XI2(右)。サイプ配置やマイクロポンプ配置の違いが見て取れ、ブロック剛性の違いは明らか

 また、ティアドロップにより、ブロックへのストレスを減らすことができ、多くのサイズでスピードレンジがT(190km/h)からH(210km/h)に向上している。これもスピードレンジ向上を狙って作ったのではなく、アイス・スノー性能を向上させるために行った技術投入が、結果として結びついたと言う。

サイズ表。32サイズが投入される

 今回投入されたX-ICE XI3は32サイズと、X-ICE XI2のラインアップに比べると、約半数にとどまる。そのほかのサイズに関しては、来シーズン(2013年~2014年シーズン)の投入を予定していると言う。

 なお、発表会場外にはミシュランスタッドレスタイヤの歴代モデルが飾られていた。タイヤは、トレッドパターン、コンパウンド、構造の3要素で語られることが多いが、見た目に分かりやすいのがトレッドパターンだ。とくにスタッドレスタイヤでは、タイヤブロックやそこに刻まれたサイプのデザインが重要な役割を果たすことが多く、そこにメーカーのノウハウが現れる。30年のトレッドパターンの変化と、最新のスタッドレスタイヤであるX-ICE XI3との違いを見比べていただきたい。


1982年発売の「XM+S100」
1991年発売の「MAXI GLACE」
1995年発売の「W EDGE」
1997年発売の「MAXI ICE」
2001年発売の「DRICE」
2004年発売の「X-ICE」
2008年発売の「X-ICE XI2」


(編集部:谷川 潔)
2012年 7月 30日