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首都高、第三京浜とつながる横浜環状北線の高架部送り出し作業を公開
完成後は「上下2層形式の単径間トラス橋」で国内最長に
(2013/2/27 13:51)
首都高速道路は2月26日、2016年度の完成を予定して工事を続けている「横浜環状北線」の、高架部架設現場を公開した。
第三京浜・港北IC(インターチェンジ)と首都高の神奈川1号線・生麦JCT(ジャンクション)を結ぶ横浜環状北線は、2007年12月から本格的な工事に着工。既存の都市を新たに横断する道路だけに、延長8.2kmの約7割となる5.9kmが地下にトンネルを掘って建設される。2013年1月末の時点では、シールドマシンが新横浜出入口付近から馬場出入口付近まで進んでおり、この進捗状況に呼応して高架部・地表部の整備が進められている。
さまざまな制約によって今回の工法、構造を選択
公開場所となったのは、第三京浜・港北ICの近くを流れる大熊川と江川の合流地点に架かる橋梁の架設現場。架けられる橋は鋼材を三角形に組み合わせて構成するトラス橋で、正確には「鋼床版ダブルデッキ単径間ワーレントラス橋」という形式を採用している。
現場での見学に先立ち、敷地内に用意されているPRブースで首都高速道路 神奈川建設局横浜工事事務所の小嶋俊之所長から概要が説明された。
小嶋所長は、2つの川が合流する地点を橋が通過するため、降雨などによる増水時に柱が影響して川の水があふれてしまわないよう、川の中に橋脚を設置できないこと、用地周辺の堤防の上に歩道やポンプ場建屋が存在し、河川区域での作業を11月~5月の渇水期に終わらせるため「送り出し架設」が可能であること、河川管理用通路(歩道)の高さ規定と下層路面の下側部材のサイズを両立できること、という大きな3点をクリアできることから、トラス構造による橋の架設が選定されたと説明した。
また、横浜環状北線の高架区間は、確保する用地を節約するため片側2車線の道路を上下に重ねる上下2層形式を採用。新しく建設される橋も上下2層形式で、橋長158mは「上下2層形式の単径間トラス橋」としては日本最長となるという。
単径間トラス橋全体では、京都府にある鉄道橋の澱川橋梁(165m)、秋田県にある道路橋の柴倉橋(163m)に続いて3番目の長さになる。
約2400tあるトラス桁を油圧ジャッキで110mスライド
架設作業の現場として公開されたのは、完成したトラス桁を組み上げる足場として用意した構台から送り出す作業。今回の架設工事では、トラス桁は全12パネルのうち9パネルを港北IC側、3パネルを新横浜出入り口側で組み立て、9パネルのトラス桁を油圧ジャッキによってスライドさせて川の上を渡して連結させる工法を採用している。
トラス桁は構台の上に水平ジャッキと台車のような役割を果たす6個所の「スライディングシップ」を介して設置。このスライディングシップを、構台のH鋼に油圧クランプで固定した両端クレビス付きジャッキで押し、ジャッキが伸び縮みすることでしゃくとり虫のようにトラス桁ごと前進する仕組みだ。
送り出し架設される港北IC側のトラス桁は約2400t(最終的な全体の鋼重は約4000t)の重量があり、この巨大な構造物が移動を始めるという瞬間には迫力ある展開を予期して少し身構えたが、実際には目の前にあるジャッキのシリンダーが動いていることによって前進がスタートしていることを知り、逆に驚かされるという状況だった。
前進速度自体は3分間で1mというゆったりしたものだが、ほぼ物音もなく氷の上を滑るように移動するスムーズさには圧倒された。また、移動の前後には各スライディングシップを作業員が入念にチェック、調整し、安全管理体制が徹底していることも確認できた。
このトラス桁の送り出し架設は取材日前日の2月25日から開始され、4日間かけてトラス桁を110m移動させて新横浜出入口側のトラス桁と連結させる予定で実施されている。
その後、構台のすぐ横に隣接した川向ポンプ場の建屋との兼ね合いで本来の場所からずれている横位置を修正するため、新横浜出入口側の先端を回転中心に北東側に2度動かし、さらに水平の状態から港北IC側から新横浜出入り口に向けて下り坂になる道路の設計に合わせてトラス桁を斜めに下降させる行程を経て、ようやくトラス桁を支える橋台に設置される。3年後の完成に向けて本格的に道路としての姿を見せ始めた横浜環状北線。この先の展開も注目したいところだ。