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首都高、JRなどの鉄道10線と国道1本にまたがる橋梁工事を実施

首都高と第三京浜を接続する「横浜環状北線」工事の一環

架設完了後の現場
2013年9月26日実施

 首都高速道路は9月26日、首都高の神奈川1号線・生麦JCT(ジャンクション)と第三京浜・港北IC(インターチェンジ)を結ぶ「横浜環状北線」(2016年度完成予定)の建設工事の一環として、鉄道10線と国道1本の上をまたぐ橋梁工事を実施。この様子を報道陣に公開した。工事は首都高速道路がJR東日本(東日本旅客鉄道)に委託して実施されている。

 施工場所は、神奈川県横浜市神奈川区子安台1丁目~鶴見区岸谷1丁目に掛けての区間。ここを通るJR線(東海道線、横須賀線、京浜東北線)、京浜急行線(京急本線)、JR東海道貨物線(高島線)の各上下線を合わせた合計10線と国道15号の真上に橋梁を設置する。これらに交差するように高速道路5本(本線の内周り/外回り、ランプ桁3本)、街路2本の計7本が建設されることになる。

工事の概要
今回の工事の範囲

 工事は夜間に走る貨物列車などをすべて運行停止にして行われるため、作業時間は限られる。時間短縮のため、横浜市道上に建設済みの工事用架設構台に、あらかじめ橋梁の基礎となる「桁」を組み立てておき、それを電動式の台車で送り出すことによって一気に架設予定の橋脚まで移動させるという工法が採用された。

 さらに、建設予定の橋梁はカーブで構成される区間のため、「曲線送出し架設」と呼ばれる特殊な工法が用いられた。前述のとおり桁は事前に組み立てられているが、通常ではこうした曲がった桁を設置する場合は桁全体を直線的に前進させ、移動後に橋脚に向けて回転させる手順などが必要となる。しかし、そのためには広い空間と時間が必要になる場合が多く、今回の現場では既存の鉄道路線がある関係から作業スペースを広く取ることができず、作業時間も限られている。

 この問題を解決するための曲線送出し架設では、送り出す桁の曲線半径と同心円状になるレールを工事用架設構台上に敷設。桁を台車に載せたままレール上を移動させることで、橋梁本来のカーブに沿って設置場所に向けて前進するため移動後に回転させる必要がなく、最低限の作業スペースで済んで時間も短縮できる。

 今回の工事は「本線内回り桁」の第1回送り出し分として、総重量約900tという桁を61m前進させ、既設の橋脚に設置するという内容。送り出しの平均速度は約2.5m/分で、曲線送出し架設を使った工事でここまで重量が重い桁をこういった速いスピードで架設するケースは珍しいという。

移動前の本線内回り桁
移動先となる橋脚
左側のプレハブの上に見える桁から右端の橋脚までの距離は61m

 また、曲線送出し架設によって設置されるのは、高速道路5本のうち、本線の内回り/外回りの2本のみ。残る3本については、曲線送出し架設で設置した2本の桁を利用する「横取り架設」という工法を採用する。この工法では、あらかじめ組み立てておいた桁をすでに設置された桁の上に載せて橋脚の位置まで前進。そこから真横に桁をスライドさせて設置していく。この工法はスライドさせるときにすでにある橋脚の上で作業が行うため安全性が高い。

 今回の作業が開始されたのは9月26日の1時56分。2時21分には桁が無事に橋脚まで到達して予定どおりに作業は終了した。この工事によって東海道線、横須賀線、京浜東北線という線路をまたぐ桁が設置されたことになる。今後は2014年5月をめどに東海道貨物線までオーバーパスする残りの範囲の桁を設置する予定となっている。

午前1時56分に移動作業が開始され、2時21分に橋脚まで無事到達した
工事用架設構台を上から見たところ。レールが曲線を描いていることが分かる
移動完了後の桁
黄色く塗装されているものが桁の移動に使われた台車。240t仕様の自走台車6台と駆動装置を持たない80t仕様の従走台車6台によって作業が行われた

(清宮信志)