首都高、多軸台車「スーパーキャリアIV」で八重洲線高架橋を撤去
八重洲線を20カ月通行止めにし、環状2号線を整備

高架橋を載せて旋回中の多軸台車「スーパーキャリアIV」

2012年7月28日深夜実施



 首都高速道路は7月28日深夜から翌29日未明にかけ、多軸台車「スーパーキャリアIV」を使用し高架橋の一括撤去を実施。その様子を報道陣に公開した。

 今回の工事は東京都市計画道路環状第2号線整備の一環として実施されたもの。環状2号線は、虎ノ門~汐留間を地下トンネル方式によって整備する予定だが、トンネルを通すためには首都高八重洲線の一部区間である汐先橋交差点付近の高架橋の橋脚部分が障害となる。そのため、この高架橋とその橋脚を撤去してから新しい橋脚を設置してトンネルを通すスペースを作って高架橋を新設する。この工事のため、首都高都心環状線の汐留出入口~東京高速道路(KK線)新橋出入口の間が2012年7月8日~2014年2月までの約20カ月間通行止めになる。

八重洲線の架橋工事について八重洲線が20カ月間通行止めになる20カ月間の工事の流れ
多軸台車「スーパーキャリアIV」について工事概況工事個所。汐先橋交差点付近の高架橋を撤去する

 7月28日に実施された作業は、高架橋の撤去作業を多軸台車によって1晩で終わらせるというもの。大型のクレーン車などを使って高架橋を撤去する場合、何日も交差点を通行止めにする必要があり、時間も手間もかかるが、多軸台車によって高架橋部分を丸ごと台車に乗せて移動することで、僅か数時間で作業が終了する。後日、高架橋を新設する際にも同様の工法で新しい高架橋を台車に乗せて一気に設置する。既設の高架橋を撤去するのは、首都高速本線では初めてと言う。


作業の全容を定点カメラで

 作業に使われたのは独ゴールドフォファー製の「スーパーキャリアIV」。5軸車両と3軸車両の2両を並列に連結して使用された。連結時の全長は12.8m。車両は1軸あたり8本のタイヤを装備。これらのタイヤはすべて車体に対して直角にステアリングすることが可能で、真横に移動ができる。このため大型車両でありながら小回りの利く車両となっている。

作業現場に向けて前進するスーパーキャリアIV高架橋の下へ進入開始
旋回をしながらゆっくりと進入する前進を終えるとタイヤを回転させて横移動を開始
定位置についたスーパーキャリアIVタイヤまわりの構造
1軸あたり8輪のタイヤを備えるスーパーキャリアIVのリモコン

 各軸は油圧サスペンションにより700mm(±350mm)のストロークがあり、路面に凹凸があった場合でも車両が傾かず、搭載物を水平に維持できる。今回の作業では運転席は設置されず、有線によるリモートコントロールで外部から操作されていた。

 スーパーキャリアIVには「スーパーテーブルリフト」と呼ばれる油圧リフターを搭載。これは鉛直方向の荷重を4段伸長ジャッキで支持するほか、水平力を上部と下部を繋ぐワイヤーで支持するもの。昇降能力は250tで、今回はこれを2台同時に使用して高架橋を支えた。今回撤去された高架橋の重量は245t。

 当日の作業は29日の0時15分から開始。20分ほどかけてスーパーキャリアIVが現場まで移動し、スーパーテーブルリフトを伸長。高架橋を支えることが可能な位置までリフトが伸びると、約1時間ほど最終的な撤去作業が実施された。

すでに切断され仮止め状態の高架橋信号も移動させられていた
ゆっくりとリフトが上昇する距離を測りながら慎重に作業をしていた
高架橋を支える位置まで上昇したところ撤去準備中の汐先橋交差点付近仮止めしていた鉄板が外された


リフトが上昇する様子

 補強材などが取り除かれ、高架橋の全荷重がリフトにかかった段階でも、外見上は特に変化は感じられなかったことから、リフトがしっかりと高架橋を支えていたことが分かる。その後、高架橋を載せたリフトがゆっくりと降下を開始。リフトの降下が完了するとスーパーキャリアIVが慎重に旋回を開始した。

 リフトによって高架橋の位置は下がっているが、残留する橋桁と衝突する危険があるため、そのまま単純に旋回はできない。そのためここでは車両後方を軸として前方方向を旋回させる「ワイパー旋回」と呼ばれる特殊な旋回方法が実施された。この作業が今回の工程で最も危険を伴うと言う。


リフトが下降する様子

着々と撤去作業が進む。高架橋の両脇にある緑色の鉄骨は補強材最後の補強材が外された。この段階でリフトに高架橋の全重量がかかる
高架橋を支えるものがすべて取り外されたゆっくりとリフトが降下を開始
リフトの降下が完了した再びタイヤを直角にして旋回を開始ワイパー旋回中のタイヤの様子。個々のタイヤの角度を微妙に変えることで車体の後方を軸にして旋回する
ゆっくりと慎重に旋回旋回がほぼ完了した
解体ヤードにむけて前進を開始手前に立つのは車体を有線でコントロールしているオペレーター車体の状況を確認しながら慎重に操作している
移動中の車体を上から見たところ


上からの撮影映像

無事解体ヤードに入ったスーパーキャリアIV。この後、高架橋はあらかじめ左右に設置された台座に乗せられ解体作業に入る高架橋の撤去が完了した汐先橋交差点の様子

 無事に旋回が終わると、再びゆっくりと車両が前進をはじめ、高架橋を撤去ヤードまで移送していった。作業は大きなトラブルもなく、終始順調に進み、3時頃には移動がほぼ終了していた。

 この後の工事予定として、8月にはもう一つの架橋を同様にして撤去する。

(清宮信志)
2012年 8月 2日