首都高、2013年度末に完成予定の中央環状品川線を公開
日本最長の道路トンネルにより大井JCTへ接続

大井JCTを下から見たところ(左車線が湾岸線西行き[至横浜]、右車線が湾岸線東行き[至千葉])

2012年4月26日開催



 首都高速道路は4月26日、中央環状線の大橋JCT(ジャンクション)と大井JCTを繋ぐ、中央環状品川線の現場見学会を開催した。

 今回の見学会は、湾岸線付近の大井北立坑から3号渋谷線の大橋JCTに向けて発進したシールドマシンが、3月に中央環状新宿線との接続部に到達したことから、報道陣向けに行われたもの。

 品川線は、中央環状線(全線約47km)の南側部分を形成する延長約9.4km(そのうち約8kmがトンネル部)の自動車専用道路。起点の大井JCTで湾岸線から分岐、目黒川や環状6号線(山手通り)の地下をトンネルで北上し、終点の大橋JCTで中央環状線山手トンネルと3号渋谷線に接続する。設計速度は60km/hで、JCTおよび出入口は40km/hとなる。

大井行トンネルは首都高が、北(大橋)行トンネルは東京都が施工主に
 この品川線は、大井行トンネルと北(大橋)行トンネルの2本からなり、大井行トンネルは首都高が、北(大橋)行トンネルは東京都が施工主となる合併施工方式が採られた。首都高、東京都それぞれが施工主になることで工事期間の短縮を図ることができ、それぞれ外径12m以上の大断面シールドマシンが約8kmの長距離掘進を行った。

 また、現在の首都高、東京都それぞれの役割については、首都高は大橋連結路と五反田出入口の工事を、東京都は約2km間隔で設置される中目黒換気所、五反田換気所、南品川換気所、大井北換気所の建設を行っている。この4個所の換気所が完成した後は、首都高側が空気を清浄にする集塵機などの設置を行う。なお、トンネル内に設置される照明、消火/防災関連の設備は首都高の担当になる。

品川線のジオラマ。左から大井JCT付近、五反田出入口付近、大橋JCT付近
シールドマシンのジオラマ。写真は北(大橋)行トンネル(東京都側)で使用されたもの。外径は約φ12.5m、機長12.8m、掘削トルク39,444kNm

道路トンネルとして日本最長を誇る品川線
 現場見学の前に、東京都の品川線建設担当課長である後藤広治氏、首都高速道路の東京建設局 品川線工事事務所 所長 青木敬幸氏から、品川線の概要が説明された。

東京都 品川線建設担当課長 後藤広治氏首都高速道路 東京建設局 品川線工事事務所 所長 青木敬幸氏

 後藤氏は品川線が開通し、中央環状線が全線開通することで「これまでどこへ行くにも都心環状線に入らなくてはならなかったが、色々なルートを選べるようになる。これは平常時でも万が一の災害時でも有効に働く」「中央環状線ができることで、渋滞が劇的に減ると言われており、これによって一般道も空いてくる」と、開通のメリットを説明する。

 また開通により、二酸化炭素(CO2)が約9万t/年の削減、窒素酸化物(NOx)が約100t/年の削減、浮遊粒子状物質(SPM)が約6t/年の削減という環境改善効果が得られるほか、分かりやすいところでは羽田空港から新宿のアクセスが向上し、従来の40分の所要時間が20分に短縮できると言う。

 品川線の特徴としては、1つは大井JCT付近から大崎駅の裏あたりまで目黒川の下を走ることで、「川の下をこれだけ縦断占用していることは珍しい事例」(後藤氏)。また、品川線のトンネル部は約8kmで、すでに開通している新宿線とあわせるとトンネル延長は18.2kmとなり、「道路トンネルとして日本で第1位、世界で第2位の長さになる」と言う。

 シールドマシンの説明も行われた。大井行トンネルと北(大橋)行トンネルで使われるシールドマシンは、施工会社によってカッタースポーク等の違いがあるものの、いずれも4階建てのビルに匹敵する世界最大級の外径約φ12.5m(重量約2000t)のものが使われたと言う。

 掘削方法は泥土圧式シールド工法と呼ばれる方式が採用され、円筒形のシールドマシンで土圧や水圧を抑えつつ、カッターディスクで前面の土砂を掘削しながらジャッキの力で前進するというもの。トンネルの外径はそれぞれφ12.3mで、各トンネルは3m程度の間隔が開けられていると言う。

品川線の事業概要品川線が開通することで交通分散により渋滞が緩和される開通による環境改善効果
羽田空港~新宿の所要時間が従来では40分のところ、20分短縮できると言う品川線の特徴、道路トンネルとして日本第1位、世界第2位を誇る首都高、東京都それぞれが施工中の工事。青塗りの部分が首都高、緑塗りの部分が東京都が実施しているものとなる
大井行トンネルと北(大橋)行トンネルで使われたシールドマシン。サイズ、スペックはほぼ同等で、同時期に掘削を開始したものの、東京都側が昨年末に掘削を終了。首都高側はトラブル等により掘削が終了したのは3月だったと言う大井行トンネルと北(大橋)行トンネルの外径はφ12.3mで、各トンネルは3m程度の間隔が開けられている品川線の防災設備について。非常口は250m間隔で1個所設置される
五反田出入口の工事概要図五反田出入口の完成イメージ図

大橋JCT付近のシールド到達部、大井JCTを見学
 さて、見学会では首都高、東京都それぞれの施工シールド内と大橋JCT付近のシールド到達部、大井JCTを見ることができた。その模様は写真でお伝えする。なお、品川線の完成は、2013年度末を予定している。

見学会は大井JCTの大井北立坑からエレベーターで首都高シールド(大井行トンネル)内に入り、大橋JCT付近のシールド到達部までマイクロバスで移動したバスを降りてシールド到達部まで徒歩で移動シールド到達部の手前。グリーンのカバーで覆われているのは、シールド解体時に粉じん等がトンネル内に飛散しないようにするため
この奥がシールド到達部シールド到達部。赤く塗装されているのがシールドマシン本体で、シールドマシンの外筒はシールドの外壁として残すと言う
首都高シールド内をマイクロバスで移動しているところ。掘削作業は終了しているものの、作業で使われた機械や道具の多くがまだ残っている
首都高シールドから東京都シールド(北[大橋]行トンネル)に移動する。ここは250m間隔で1個所設置される非常口火災や震災等があった際に使うUターン路。通常時はシャッターで閉じられている。1kmに1個所の間隔で設置されると言う
大井JCT付近。この口でトンネル内の空気の入れ換えを行う大井JCT付近の独立避難通路。この付近は両シールドが平行して走らないため、非常口から隣のトンネルに逃げることができない。そのため独立避難通路が設けられ、火災時などの際はこの先のシェルターに避難することになる
東京都シールドから大井JCTに向けてマイクロバスで移動
大井JCTの概要図大井JCTから東京都シールドを望む東京都シールドから大井JCTに向かって左側に品川清掃工場が見える
大井JCTの湾岸線 西行き(至横浜)方面に向かう道を歩く左側が湾岸線 東行き(至千葉)方面に向かう道大井JCT 湾岸線 西行き方面側から右を見る。湾岸線から1号羽田線に合流する連絡路がある
大井JCT 湾岸線 西行き方面側の頭頂部から東京都シールドを方面を見る。ちなみにここは一車線区間頭頂部から湾岸線 東行き方面を見たところ頭頂部から湾岸線 西行き方面を見ると、JR東海の大井車両基地が見える
湾岸線 西行き方面に向かって頭頂部から下る下りながらの右カーブを越えたあたり大井車両基地が近づいてきた
湾岸線 西行き方面の工事現場の先端部大井車両基地がよく見える

(編集部:小林 隆)
2012年 4月 27日