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首都高、3月7日に開業する品川線で一般客の避難訓練を実施

事故により通行止めを想定した車両排出と火災時の避難訓練を想定

2015年2月12日実施

外回り線で事故が発生し通行不能になったという想定で、内回り線へ車両を誘導し、トンネル内から退出させる。トンネル内に設けられた内外線を仕切るシャッターを開けて車両を誘導

 2月12日、首都高は3月7日に開業を控えた、中央環状線の品川線山手トンネルにて、トンネル内での事故と火災を想定した避難訓練を実施し、その様子を報道陣に公開した。

 最初に行われた「外回り線において事故でトンネル内が通行不能になった」という想定の訓練では、事故発生が認知されたら外回り・内回り双方のトンネル内の信号を管制室から赤に変えて車両を停止させる。停車した車両の間を縫って信号機の場所に首都高バイク隊が到着。状況をマイクでトンネル内に説明したのち、外回り線と内回り線を仕切るシャッターを開いた。そして、外回りのトンネル内に停車した車両を内回りのトンネル内に誘導し、外回りトンネル内の車両を内回りのトンネルから退出させるという流れとなった。トンネル内の事故で火災が発生していない場合は、ドライバーは車内に乗ったまま、トンネルの出口に誘導される。なお、首都高バイク隊は2人1組のチームが3チームずつ大井ジャンクションと大橋ジャンクションにそれぞれ常駐しており、待機状態では15分、パトロール中であれば10分で現場に到着できるという。

外回りと内回りが接続されている部分。普段は信号は青でシャッターが閉まっている
事故が認知されると、信号が赤になり、通行止めの表示が出る
信号の前で外回りの通行車両が停車
首都高バイク隊が車のあいだをぬって急行
内回りも同じく通行止めとなる
首都高バイク隊が信号の下に到着しそれぞれの車線で停車、事故現場に一般車両が入らないようにし、ドライバーに拡声器で状況を説明する
首都高バイク隊の隊員がシャッターを解錠する操作をする
シャッターが開くと、内回り線が見える。なお、この通路は大型車両でも通れる幅で設計されているとのこと
首都高バイク隊の隊員が停車している外回り線の車両を内回り線へ誘導
内回り線へ入っていく車両
無事に大井北のトンネル出口へ車両は退出された
首都高バイク隊の車両。首都高用の車両だけあり塗装は黄色

 対して、火災が発生し、発煙が発生した場合には、ドライバーは速やかに降車して非常口から脱出する必要がある。この状況の訓練も同じく行われた。今度は「内回り線の大井のトンネル出口付近で火災が発生した」という状況。トンネル内にはアラートが鳴り響き「トンネル内で火災が発生しました。近くの非常口から速やかに避難してください」というアナウンスが流れると、停車した車両からドライバーが降車し、近くの非常口へと向かった。この非常口は約50m間隔で設置されており、外回りと内回りのトンネルが併走している区間では、ドライバーは反対側のトンネルに避難し、併走していない出口付近では、車線の内側にある独立避難通路から一時滞留所へ避難する。今回の訓練では車いすを使用する東京都身障運転者協会の7名と、一般公募した20名、計27名が4回に分けて独立避難通路を通り避難した。なお、今回の訓練では、路肩に車を止めるところまでは首都高による段取りが行われたが、それ以降は全く説明のない状態。一般の方がとっさの状況でちゃんと避難経路を使えるかという検証も兼ねたものとなった。訓練ということもあり、参加者はややゆっくりとした足取りではあったが、何も説明がない状況で非常口にたどり着き、滞留なく独立避難通路から大井北換気所の一時滞留所へ避難が行われた。

この独立避難通路はトンネル内とは別の空調になっており、火災時は内部の気圧を上げて、独立避難通路内に煙りが入らない構造となっている。さらに、通路の内側には、避難場所の指示が壁面と床面に記されているため、通路のどちらに行けばよいのか迷うこともない。

トンネル内に50m間隔で設けられた非常口。非常時は4ヵ所の回転灯が黄色く発光するため、発煙が発生しても分かりやすい
火災が発生し、避難指示が出た場合は速やかに路肩に車両を停止させ、近隣の非常口から避難する必要がある
訓練では車いすを使用する参加者もいた。路面から独立避難通路内へは段差がないため、車いすの参加者も支障なく通ることができた
独立避難通路の内部。内部は独立の空調になっており、火災時は気圧が上がるため、この通路に入れば煙が入ることなく安全に避難できる
独立避難通路内の壁面にある出口サイン
独立避難通路内の床にある出口サイン。矢印に従っていけば、外に出る前に避難する一時滞留所に行ける
訓練の参加者たちは全員迷うことなく、一時滞留所へ到着した

 品川線が開通すると山手トンネルは18.2kmと日本最長の自動車道トンネルとなるため、首都高はトンネル内の事故対策に今まで以上に万全を期したいという意気込みがある。山手トンネル内には全域に水噴霧設備、25mおきに熱感知器と消化器・消火栓が設置されている。さらにトンネル内には死角がないように監視カメラが設置されているため、火災が起きても迅速に察知できる。長距離のトンネルの走行は不安に思うこともあるかも知れないが、もし、事故や火災に遭遇しても、慌てずにアナウンスに従えば、安全に脱出できる仕組みが備わっている。

25mおきに設置されている熱感知器。これで火災をすぐに察知できる
トンネル内全域にある水噴霧装置。管制室から初期消火を行う際に使用される
50mおきにある非常ボタンと消火栓、消火器。火災が発生したら、まずSOSボタンを押して通報、自己で対処できる場合はこれらを使用してドライバーが消火にあたる。
首都高がWebページなどで公開している「首都高 山手トンネルの防災・安全のパンフレット」でも山手トンネル内での対処が解説されている

(シバタススム)