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首都高、3月7日開通予定の山手トンネルで合同防災訓練を実施

警視庁、東京消防庁、東京都などと連携して万全の安全管理体制を構築

2015年2月17日開催

 首都高速道路は2月17日、首都高 中央環状(C2)品川線 山手トンネルで、トンネル内での車両火災事故を想定した合同防災訓練を実施した。

 中央環状品川線は3月7日16時の開通が予定されており、山手トンネルは既開通部分の渋谷線~池袋線区間と合わせると、総延長は18.2kmと日本最長の道路トンネルとなる。そういった背景もあり、警視庁高速道路交通警察隊、東京消防庁、東京都、首都高速道路および関連会社など、計11団体250名が参加する大規模な訓練となった。

 今回の訓練は「山手トンネル内回り(南行き)五反田出口付近において、複数車両による通行止めを伴う事故が発生。4t貨物車1台が横転したほか、乗用車5台、マイクロバス1台が関係し、うち1台の乗用車から火災がおこり、脱出不能者、負傷者多数」という状況を想定したもの。

 訓練はまず、火災車両の消化からスタート。先日の記事で紹介した施設管制システム(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150206_687267.html)により火災を確認すると、消火のために遠隔操作で水噴霧設備を稼働。その後、高速隊の白バイ、消防隊の赤バイ、首都高バイク隊の各隊員が機動力を生かして現場にいち早く到着し、現場の状況を確認。続いて警察、消防、救急の各本隊が到着して救助作業が進行する。といった流れで行われた。負傷者の救助には、災害現場に派遣される医療チーム「東京DMAT(Disaster Medical Assistance Team)」も参加し、トリアージおよび医療措置にあたった。

 大規模な事故を想定した訓練だったが、乗用車内に閉じ込められた乗員の救助や横転車両の引き起こし、事故車両の撤去、道路啓開作業まで、およそ1時間ほどでスムーズに終了。隊員個人個人の練度が高く、そして各団体の連携も非常にうまくとれているように感じられた。

参加隊員に訓示する首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏
事故の最前部。赤い車両が道路脇に接触してセンターライン上に停止したことが発端。後方ではトラックが横転している
後方でも追突が起き、右車線側では火災が発生(想定)
火災を発見した管制室により水噴霧による消火作業が行われる
高速隊の白バイがいち早くが現場に到着。乗員の安否を確認していく
続いて消防隊の赤バイも到着
自力で移動できるドライバーや同乗者を安全な車外に誘導
トラックのドライバー(マネキン人形)はクルマの下敷きになっていた
車外放出されたトラックの同乗者を発見
消防の救急隊が到着
トラックのドライバーに救命措置を実施
消防も到着して火災警戒。手前では救護所の設置作業が始まっている
“2”のクルマにはドライバーが閉じ込められていた。救助のため、まずはカッターでリアドアをこじ開けていく
各所で消防隊同士による状況の確認作業も行われていた
ドアがこじ開けられた車内に救急隊員が入り、ドライバーの救命作業が始まる
救護所とともに指揮所の設置がはじまる。同時に東京DMATが到着
フロントドアも開けられ救出作業が始まる
トラックドライバーの救命作業を東京DMATが引き継ぐ。DMATは医師1名、看護師等2名の3名(状況に応じて事務員1名が加わる)で1チーム
消防隊の重機により本線をふさいでいたクルマが排除される
“2”の車両ではフロントドアから救助できず、フロントウインドーのガラスを切断
こちらも東京DMATチームが救命措置を引き継ぐ
ついにはルーフまで切断してドライバーを救出した
搬送前に救命措置を実施
救出されたドライバーは担架で救急車まで運ばれる
救出作業が終了し、指揮本部の撤収作業がはじまる
道路啓開作業を開始。横転しているトラックの引き起こしは上部に看板があるためクレーン車が使えず、空気を送り込んで膨らませる「マットジャッキ」による作業を選択
マットジャッキをトラックの下に設置
コンプレッサーからエアーが送られるとトラックの大きな車体がゆっくり動き始める
復元までもう少し。反対側(車両フロア下側)には復元するときの衝撃を和らげるためのマット(青色)を設置
無事に復元完了
マットジャッキを道路脇に運んで撤収
道路が通行可能になり、レッカー車が現場に進入
乗用車をレッカーで移動させる
横転していたトラックも道路上から排除されていく
警察、消防の撤収後は、首都高作業班により道路上の清掃と設備点検を実施
事故現場の復旧が完了し、高速隊の白バイが先導して滞留車両が移動開始。通行止めが解除になった

 訓練終了後、東京消防庁 第2方面本部長 田中英夫氏は「我々消防隊は、一刻も早く人命を救出して、少しでも被害を軽減するのが仕事。実際に高速道路が開通してしまいますと、ここで訓練を行うことが不可能になりますので、この場所を知るという意味でも大変に素晴らしいことだと思います。消防隊のみなさんはこの経験を糧に頑張ってほしい」と述べた。

 次いで登壇した警視庁 高速道路交通警察隊 副隊長 岡村孝司氏は「山手トンネルは中央環状品川線の開通により18.2km。日本では最長、高速道路におけるトンネルとしては世界最長になり、危機管理が問われると考えます。警視庁高速隊は昨年の12月、大橋ジャンクション内にバイク隊を設置しまして、供用開始後に万全の体制をとれるよう訓練を積んで参りました」と語り、開通を前に準備万端の構え。しかし、今後予想される首都直下地震や2020年の東京オリンピックなどもあり、さらなる危機管理や訓練が重要であるとした。

東京消防庁 第2方面本部長 田中英夫氏
警視庁 高速道路交通警察隊 副隊長 岡村孝司氏
訓示を聞く参加隊員

 訓練終了後、報道陣の囲み取材に応じた首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏は、事故対策について「いろいろな設備が作動しているか、うまく使いこなせるかが大事。警視庁、東京消防庁との連携も重要」とした。その上で今回の訓練については「(開通前)最後の訓練としてはよい内容になったと思う。連携がうまくいっていることが示せたと思う」と、万全の体制であることをアピール。また、課題について尋ねられると「アナウンスがこだまして聞こえにくいことが課題。(スピーカーの設置場所によってタイミングを)少しずつズラしていくなど対策を考える必要がありそうだ」と述べた。

 首都高速道路によると道路の施工は完了しており、あとは細かな調整などを残すのみだという。今後、3月1日に一般向けのトンネルウォーク(参加募集は締め切り済み)が行われ、その1週間後には開通を迎えることになる。

首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏
山手トンネルにおける防災設備の概要
施設管制システムの概要
25m間隔で設置されている火災検知器
非常口を示す看板は350m間隔で設置される
50m間隔で設置される消火器と消火栓。消火器は2タイプ
消火栓

(安田 剛)