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首都高、日本最長の山手トンネルを守る施設管制システムを公開
3月7日16時の中央環状線全線の開業を控え防災対策をアピール
(2015/2/6 15:16)
- 2015年2月5日開催
首都高速道路は2月5日、3月7日16時の中央環状線全線の開業を控え、山手トンネルなどの西東京エリア(全長129.9km、15トンネル、受電所17個所)をカバーする施設管制システムの公開と火災時のデモンストレーションを行った。
冒頭の挨拶で首都高速道路 西東京管理局長 半野久光氏は「旧システムは構築してから8年が経過し、経年劣化による機器の故障リスクの増大やメンテナンス部品の調達といった問題があり、3月の山手トンネルの全線開通に併せてリューアルすることにした。特に山手トンネルは18.2kmという道路トンネルとして日本一の長さとなるため、最新の防災機器を配置し、施設管制員と連携して24時間体制で安心・安全を確保すべく万全の対策を講じている。また本管制室には大型のモニターを配置し、より一層迅速に情報を収集・処理すると同時に、従来は施設管制とトンネル防災とに二分化していたシステムの統合化を図った。これらの工事は運用中の機器との調整で平成24年(2012年)8月から時間を掛けて行ってきたが、この度無事に完成し皆様に披露いたします。弊社は引き続きお客様へのサービス水準の向上に全力を挙げて取り組む所存です」と語った。なお、本リニューアルの総工費は約6.5億円とのこと。
次に中央環状品川線の概要とトンネル内の設備の説明が行われた。品川線の構造は全長の約9割はトンネル構造で、すでに開通している新宿線の9.8kmと品川線の8.4kmを合わせると山手トンネル全体で18.2kmの総延長となり、日本の道路用トンネルとしては関越トンネルの11kmを抜いて日本一となる。
品川線のトンネルは地下で右側通行になっているため、山手通りの中央分離帯にある入り口から入ると、安全な走行車線側で合流となる。なお、外回りと内回りの車線のトンネルは分離しているため、ドライバーからは左右が入れ替わっていても違和感なく走行できる。非常口は250~350m以下の間隔で設けられており、さらに非常口からは外回りと内回りのトンネルが避難通路で繋がっており、片側のトンネルで火災が起きた場合でももう片側のトンネルへ避難できる。
トンネル防災の設備では、ドライバーが使うものとしては非常電話と押しボタン式通報装置を100m間隔で、消化器や消火栓を50m間隔で設置している。また、管理用の設備として、死角がない間隔でのテレビカメラの設置、25m間隔で自動火災検知器の設置、拡声器やAM/FMラジオの再放送案内施設、警報板などがある。さらに全線に渡り水噴霧設備がある。また、LED照明は12~11mで1つ、換気のためのジェットファンや13個所の換気所があり、換気所には電気集じん装置や低濃度脱硝装置、受配電設備、自家発電設備などがある。山手トンネル全体での設備数は8600点にのぼるという。
さらに施設管制システムの説明が行われた、本システムは防災設備からの情報集約はもちろん、受電設備や照明設備などの状況を24時間365日監視し、道路設備に異常があれば、すぐに管制室へ通知される仕組みとなっている。通知を受けた管制は即座に保守部隊へ出動を要請し、設備を保守する。また、トンネル内の換気や初期消火の水噴霧、案内板の制御なども本管制室から行われる。
管制システムには、施設管制と防災管制の大きく2つの役割がある。施設管制システムは、配電や風向風速などの状態をリアルタイムで監視し情報を収集しており、この情報に基づいて、照明や路面排水ポンプなどの施設の出力制御を行う。監視項目は約3万2000点、制御は8000点、計測は3600地点にものぼる。防災システムとしては、通報装置が押された場合にどの地点で押されたのかを明確に表示し、その地点を撮影している監視カメラの映像が流れてくるため、情報が把握しやすくなっている。また、二次災害を防ぐため、拡声放送やトンネル信号機、警報板、煙を排出する換気装置、初期消火を行う水噴霧装置を管制からコントロールする役割がある。
従来のシステムから改修した点としては、本管制が何らかの状況で使用不能に陥った場合を想定し、大橋換気所に現場・副施設管制システムが設置された。また、管制のディスプレーも大型化、高解像度化(フルHD)され、より管制卓から見やすくなっている。従来は施設管制とトンネル防災が別システムになっており、それぞれオペレーターが必要だったが、新システムでは統合し、1人のオペレーターが1セットとして両方の制御が行えるようになった。本管制室ではこのセットが4セットあり、従来は2つしか同時対応できなかったが倍の4件同時の事故(火災)が起きても対応できるようになっている。被災規模の想定が難しい大規模な震災は別として、通常では4セットあれば十分に対応できるという。
また、山手トンネルは総延長が長いため夏場に温度が上がりやすい。このため、温湿度状況を監視し、必要に応じて約10km区間にあるミスト噴霧設備を稼働させてトンネル内部の環境を最適に維持できるようになった。
次に実際の車両火災を想定したデモンストレーションが行われた。このデモンストレーションでは、大井JCT(ジャンクション)近くの外回り線で車両火災が発生したという想定で行われている。
最後に受電設備や照明、換気設備のコントロール画面の説明が行われた。
なお、2月17日には警察庁高速道路交通警察隊、東京消防庁、東京都、首都高による山手トンネルでの合同訓練が行われる予定であり、品川線の開業に向けて運用面でも着々と準備と訓練が進められている。