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首都高、3月7日16時に開通予定の中央環状品川線で「開通カウントダウンセレモニー」開催

日本最長の道路トンネル完成へ

2015年1月27日開催

中央環状品川線の開通は3月7日16時を予定

 首都高速道路は1月27日、3月7日16時に開通を予定している首都高 中央環状品川線(B湾岸線-3渋谷線)において、「開通カウントダウンセレモニーおよび大橋ジャンクション建設現場見学会」を報道陣向けに開催した。

 中央環状品川線は首都高と東京都が共同で建設しており、これが完成することで中央環状線(C2)が全通。首都圏はもちろん、間接的な効果も考慮すれば日本の物流全体を支えるといっても過言ではない「首都圏3環状道路(C2のほか、外環道[東京外かく環状道路]、圏央道[首都圏中央連絡自動車道])」の一角が、いよいよこの春に全線走行可能になる。

 今回の開通区間は約9.4kmで、そのうちの約8.4kmとほぼ大半がトンネルで構成される。このトンネル区間である「山手トンネル」は、すでに開通している渋谷線~池袋線区間と合わせると、その全長は約18.2km。これまで日本最長だった関越トンネルを大きく上まわり、道路トンネルとしては日本一の長さになる。

首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏
カウントダウンタイマーのアンベールを行う菅原氏
カウントダウンタイマーはこのセレモニーのためだけに作られたもので、今後展示の予定などはないという

 カウントダウンセレモニーに登場した首都高速道路 代表取締役社長 菅原秀夫氏は「3月7日土曜日に開通する中央環状の品川線。これによりまして、首都圏3環状道路の中で最初に中央環状線、全長47kmが開通します。振り返りますと昭和38年に、昭和39年の東京オリンピックの前年に計画されてから、実に50年という時間を要した大事業だった」と前置きしつつ、今回の開通により大きく3つの効果が見込まれるとした。

 1つ目が時間の短縮。例として新宿から羽田空港までの移動を挙げ「現在は40分ぐらいかかっているのが、20分程度で行けるようになる」と、開通による時短効果を説明。

 2つ目は首都高全体の効率化にも繋がる渋滞の緩和だ。現在、首都高の中心にある都心環状線の通過交通は1日40万台ほどで、そのうち2割(約9万台)が中央環状線の内側に目的を持たない車両だという。品川線が開通すると2万台がこちらを利用することが見込まれ、都心環状線の交通量は約5%減少するとの試算結果を公表した。「5%というと大したことはないと思われるかもしれないが、中央環状線から内側の渋滞は4割減少する。具体的には金曜日の渋滞が土曜日並みになり、経済的にも大変効果がある」と語り、大きな期待を寄せた。

 そして最後に、ルート選択の幅が広がるという点で防災力の強化を挙げた。「3号渋谷線で事故などがあって通行止めになった場合、(東名高速方面からは一般道しかルートがなく)大きく迂回する必要がある。品川線の開通により(レインボーブリッジ経由や9号線経由など)ルート選択の幅が広がる」とした。

 トンネルそのものにも触れ、今回の区間は「直径12.5mほどあるトンネルは、シールドマシンを使って8kmを一気にくりぬいた」もので、ジャンクション部分は「地中で2本のトンネルを1本にする、世界初の非常に高度な技術を使った工法」であると胸を張った。

 最後に菅原氏は、「3月7日まで残された時間はわずかだが、共同事業者の東京都ともしっかりと連携を強めて、首都高グループ全員一丸となって、3月7日に間違いなくお客様をお迎えしたい」と締めくくった。

首都高速道路 東京建設局 局長 遠山雄一氏

 カウントダウンセレモニーに次いで実施される大橋JCT(ジャンクション)見学会に先立ち、首都高速道路 東京建設局 局長 遠山雄一氏から同施設の概要が説明された。

 まず、大橋JCTの特長として「2回転するループ状の連結路を介して、地下の山手トンネルと高速3号線の全方向に行き来ができる」ことを挙げた。首都高の場合、大橋JCTを除くと全方向に行けるのは三郷JCT、川口JCTの2個所しかない。だが、大橋JCTはループの大きさが陸上競技の400mトラックと同程度。高低差は70mと大きいが、コンパクトにまとまっている。これは「密集市街地にフルジャンクションを建設するためにこういう設計になった」と解説した。

 このように規格外とも言える大橋JCTだが、さらに営業中の路線がある部分に新路線を接続するために採用されたのが「2つのシールドトンネルを地下だけで合体して1つにする」世界初の工法で、もう1つが「営業中のシールドトンネルの一部を切り取って拡大する」という前例のない工法だ。この2つの新しい技術を採用することで「世界最長の高速道路トンネルと世界一コンパクトな全方向移動可能なジャンクションが完成した」と説明している。

内回りの大橋JCT
本線(2車線)と連結路でトンネルの直径が異なる
大橋JCTの構造模型。シールドマシンで2本のトンネルを掘り、それを繋げることで大きな断面を持つ1本のトンネルとしている。この工法の採用は世界初
トンネルの掘削には、本線が外径φ12.550m、連結路が外径φ9.5mのシールドマシンを使用。本線用2機、連結路用1機の計3機が使われたという
シールド合体部分の施行記録(首都高速道路提供)
大橋JCT部分の概要。上下に並ぶトンネルの間隔はわずか1.3m
赤い矢印が新規開通部分
大橋JCTは70mの高低差を利用することで、全方向に移動できるジャンクションとしてはコンパクトな設計になっている
営業中の路線との合流部は上から掘削し、シールド部分をくり抜いて拡幅した
奥側のオレンジ色の部分が営業中の路線
非常口はどこからでも250m以内にあるよう設置されている
扉の内側は宇宙船の船内のような空間
地上への移動にはらせん階段を利用
トンネルが上下に並ぶ部分の壁面は、裏側が避難通路になるため耐火タイルを装着
避難通路のようす
壁面が耐火タイルからコンクリートに変わっている部分
約100m間隔で非常電話が設置されている
赤外線で煙(火災)を感知する自動火災検知器。約25m間隔で設置されている
大井方面から大橋JCTのループに向かう連絡路
本線部分は道路と平行(縦方向)に換気設備が設けられているが、連結路は横方向に設置。この写真では、右側から吸気し、左側から排気する
こちらが排気ダクト
こちらが吸気ダクト
内回り(北行き)の五反田入口。北行きが外回りでなく内回りとなるのは、IC(インターチェンジ)で左側から合流できるように左右逆転しているため。屋外だと対向車が反対側に見えてしまうため実現が難しいが、今回の開通区間はほぼトンネルなので可能となっている
工事予定は3月30日までになっている
案内看板の目隠しは開通当日に剥がされるという
料金所側から。排水路のグレーチングは右側のみ。つまり路面は向かって右側に若干傾斜した設計になっている
壁面の塗装は3層構造になっているようだ
内回りの五反田料金所
料金所から本線方向
合流部分。ここの照明はLEDとメタルハライドランプの混合
合流部分から大井方向。通常の本線部分はLED照明のみを使う
LED照明
メタルハライドランプ
こちらは1灯タイプのメタルハライドランプ
トンネル内にはAMおよびFMアンテナが用意され、ラジオ電波の受信が可能
消火設備&押ボタン式通報装置は約50m間隔で設置
テレビカメラも約100m間隔で設置されている

(安田 剛)