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氷上でクワトロを体感「アウディ ドライビング エクスペリエンス」
(2013/3/22 15:50)
アウディ ジャパンは2012年12月25日、雪上でのドライビングレッスン「アウディ ドライビング エクスペリエンス」(ADE)を、北海道 士別市の交通科学総合研究所 寒冷地技術研究会 士別試験場で開催した。
ADEは、アウディ車のパフォーマンスと安全性を体験しつつ、ドライビングテクニックを学べるイベント。アウディオーナーでなくても参加できる。サーキットや特設コースなどさまざまな状況で開催されているが、今回は寒冷地の圧雪路面で同社の4WDシステム「クワトロ」の威力を体験するのが趣旨。
このADEにCar Watchも参加させてもらえたので、リポートしたい。
シンプルで扱いやすいシステム
会場の寒冷地技術研究会 士別試験場は、士別市中心部からクルマで15分ほどのところにあるテストコースで、平坦な圧雪路や氷盤路のほか、登坂試験路やハンドリングコースを備える。我々は主に圧雪路と氷盤路で、インストラクターの齋藤聡氏にレッスンを受けた。
用意された車両は「S8」「A6 アバント」「S4」の3台。A6 アバントはV型6気筒DOHC2.8リッター直噴エンジンを搭載する「2.8 FSI クワトロ」だ。この中でもっともおとなしいA6 アバントでも150kW(204PS)、280Nm、V型6気筒DOHC3リッタースーパーチャージャーのS4は245kW(333PS)、440Nm、S8に至ってはV型8気筒DOHC4リッターツインターボから382kW(520PS)、650Nmものパワーを叩き出せる。舗装路でも冷や汗が出そうなスペックだが、これらに低μ路面で乗ろうというわけだ。
クワトロシステムは、フォルクスワーゲンが1970年代に開発した軍用車「イルティス」のフルタイム4WDシステムを、民生用乗用車に転用したものだ。
当時の4WDシステムはクロスカントリーカーのもので、「曲がらない、重い」というイメージがあった。しかしアウディはこれを世界ラリー選手権(WRC)に投入、ハンヌ・ミッコラ、スティグ・ブロンクビスト、ミシェル・ムートンらの手により、2度のメイクスと1度のドライバータイトルを獲得している。
クワトロシステムを搭載したWRCマシンは2WD車より100kgほど重かったようだが、それよりもトラクション性能の優位が効果的だったというわけだ。その後のWRCマシンが4WD一色になっていったのは御存知のとおり。
斎藤氏によれば、アウディのクワトロシステムの特徴は、センターデフにロック機構を備えること。多くのフルタイム4WDシステムは前後デフにロック機構を持たせているが、クワトロの方式は機構も車両の挙動もシンプルになり、扱いやすいと言う。
最新のクワトロシステムはセンターデフにクラウンギアを用い、メカニカルなトルク配分機構により前後トルク配分が40:60からフロント70、リア85まで変えることで、低μ路での安定性と自然なハンドリングを両立している。
ドライビング エクスペリエンスでは、ドライビングポジションのインストラクションを受けてから、圧雪路で50km/hからのフルブレーキ、凍結路で20km/hからのフルブレーキ、圧雪路で60km/hからのフルブレーキと回避、凍結路で20km/hからのフルブレーキと回避、凍結路で定常円旋回、坂でのスラロームといったメニューをこなし、最後はスラロームコースでタイムアタックに挑戦した。斎藤氏のインストラクションと、クワトロシステムのおかげで、アクセルワークの雑さには定評のある筆者でも、1周程度の定常円旋回はできた。
低μ路、しかも気温が-15度を下回るという条件下といういわば極限状態での車両の挙動を体感できる機会はそうそうない。興味のある向きは来シーズンの開催に期待されたい。