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【インタビュー】ガソリン セダン市場で好調な販売を示す新型「シルフィ」

「新型シルフィは、セダンらしいデザインになりました」

 2012年12月に発売された日産自動車の「シルフィ」。開発コンセプトに「上質とくつろぎの本格派ジャストサイズセダン」を掲げ、ボディー形状はセダンのみ。搭載エンジンも、直列4気筒DOHC 1.8リッターのガソリンエンジンのみと、ほかの車種がハイブリッドやバリエーションボディーをラインナップするのに対し、「S」「X」「G」の3グレード、2WD(FF)のみとシンプルな構成になっている。

ガソリン車のセダンとして昨年末にデビューした新型「シルフィ」。セダンにこだわる人に向けて作られている

 価格も193万7250円~238万9800円と、ミドルクラスセダンとして購入しやすい価格帯にある。そのせいか、2012年12月の乗用車車名別販売ランキングでは19位、2013年1月は30位とガソリン車セダンとしてはトップを確保。30位でもトップになってしまうほど日本市場からはガソリン車のセダンという車種がなくなっており、希有な車種と言えるのかもしれない。

 ただ、世界に目を転じてみると、ハイブリッド車のメンテナンス能力などを完備しない国は数多くあり、シルフィはそれらグローバル市場を見据えて作られているモデルになる。このシルフィの日本市場での位置づけなどについて、日産自動車 マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィス 島田敬太氏と岡部龍太氏にお話をうかがった。

セダンにこだわりのあるお客様に向けたクルマ「シルフィ」

──日産車におけるシルフィの位置づけについて教えてください。
島田氏:シルフィというクルマは200万円~250万円前後の価格帯のMセダンに位置します。これは、上に300万円前後の「ティアナ」、下に200万円前後の「ラティオ」に挟まれたゾーンになります。お客様としては、今までMクラスに乗られた方がメインとなってきますが、今回のシルフィは非常に立派なモデルとして仕上がっており、また3ナンバーになりました。そのため、以前は「ローレル」や「セドリック」「グロリア」を含めた高級車に乗っていたお客様からの買い換えも期待しています。

日産自動車 マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィス 島田敬太氏
日産自動車 マーケティング本部 マーケティングダイレクターオフィス 岡部龍太氏

──セダンという試乗は縮小傾向にありますが、あえて新型のセダンを日本市場に投入した意図は?
島田氏:セダン市場は、確かにこの10年間で縮小傾向にあります。これは日本のクルマ市場が多様化しているためで、仕方のない部分でもあります。しかしながら、そのような状況の中で、セダンに乗られているお客様は非常にこだわりが強いお客様となっています。たとえば、「クルマはトランクがなければ」というお客様や、フォーマルな形にこだわるお客様などです。

 このようなこだわりのあるお客様は、セダンに対するこだわりが強く、中途半端なものでは、すぐに離れられてしまいます。新しいシルフィは、そういったこだわりの強いお客様にも「これは自分たち向けのクルマ」だと思ってもらえるクルマになっていますし、販売店でもそういったコミュニケーションを取っています。

──シルフィのセダンらしさはどこにありますか?
岡部氏:シルフィのセダンらしさは“上質感”と“快適性”にあります。これはどのセダンも同様なのですが、今まで乗っていたクルマよりも排気量やクラスを下げるダウンサイジングのお客様が増えてきています。先代シルフィでは先々代のシルフィからの代替えが多かったのですが、Lセダン(2.0リッターセダン。ローレルやスカイラインなど)や2Lセダン(2.0リッターを超えるセダン。セドリックやグロリア、フーガなど)からダウンサイジングされるお客様の比率が上がっております。

セダンらしさに配慮したインテリア

 そのためシルフィは、単純にMクラスに収まらず、クラスを超えた上質感やコミュニケーションが必要になっています。たとえば、トランクにゴルフバッグ(9インチサイズ)が4つ入るなど、価格帯こそMクラスですが、セダンに求められる機能をしっかり備えています。

9インチサイズのゴルフバッグが4つ入るトランク

 日産のクルマ作りは、グローバル市場を見ている関係もあり、日本市場のターゲットセグメントに対しやや大きめのクルマになっているかもしれません。現在はその点が、ダウンサイズされるお客様のニーズに合っているように感じています。

 また、デザインに関してですが、セダンらしい堂々としたフロントマスク、きれいなルーフラインなど、パッと見てかっこよいと思っていただけるものになっています。先代シルフィは、「室内は広くてモダンなのだけれど」という意見があったのですが、やはり5ナンバーの制約がありました。新型シルフィは5ナンバーの制約がなくなったので、セダンらしいデザインになりました。

──逆に言うと、それは車種のカバー範囲が大幅に重なっているということですか?
岡部氏:新型シルフィでは、上のクラスとなるティアナと(上質感などが)重なる部分が多くなっています。ティアナのお客様が年齢を重ねられて、より運転の容易なサイズの小さいクルマを求めるであるとか、お子さまが独立されて後席の広さがティアナほどなくてもよいであるとかです。

──小さいクルマでよいのであるとするなら、より小さなラティオという選択でよいのではないでしょうか。
島田氏:確かにそういうお客様もいらっしゃいますが、やはりLクラスセダンに乗っていたお客様は、“広さ”であるとか“高級感”などにこだわりがあるようです。ラティオは昔の「サニー」クラスになりますので、ラティオを選ぶお客様は“クルマは足”という意識が強いようです。その点、シルフィであればクルマに高級感を求めるお客様にも選んでもらえているようです。

 シルフィは、この新型から3ナンバーになり、大きくなったことを危惧したのですが、逆に3ナンバーになったことがお客様から評価されており、シルフィからの買い換えや、ティアナからの買い換えも多いです。今までのシルフィだと5ナンバーのため、ティアナクラスに乗られていたお客様から見ると格下感があったのですが、新型シルフィであれば自然に乗り換えていただけるようです。

──室内の広さは変わったのですか
島田氏:先代シルフィがもともと室内を広く作っていたので、新型シルフィの室内長は先代なみです。一方、幅方向に関しては、座席に座った状態の肩まわりで30mm増やしており、ゆとりが出ました。

──エンジンは2.0リッターから1.8リッターになりましたが、この変更はなぜですか?
島田氏:エンジンの技術開発も進み、より効率的なパワーが出るようになりました。実用域においては、1.8リッターでも以前の2.0リッターエンジンと遜色ないものになっていると思います。

 また、ハンドリングですが、3ナンバーになったことで運転がしづらくならないよう気をつけて仕上げました。最小回転半径についても、先代が5.3mだったのに対し、新型では5.2mと、より扱いやすいクルマにしています。

──販売台数についてはどうですか?
岡部氏:当初の販売台数の立ち上がりを心配したのですが、2012年12月は乗用車で19位と好調なスタートを切れました。新型シルフィの開発テーマとしてあったのは、パッケージングとデザインの両立というものがありました。シルフィはMクラスセダンという制約もあるため、コスト的には厳しい部分があるのですが、うまくできていると思います。

 これまでのシルフィでは、Lクラスからの乗り換えは難しかったのですが、新型シルフィではスカイラインのお客様からの乗り換えもあります。

島田氏:スカイラインは、V35型、V36型からの乗り換えが多くあります。V35スカイラインが出てから10年ほど経っており、クルマの保有年数が長期化していることもあって、その辺りの年代のクルマからの乗り換えがあるようです。

──高級感を気にされる人の乗り換えが多いとなるとインテリアがポイントになると思います。インテリアについての工夫点などはありますか?
島田氏:シートの縫製の部分など、丁寧な処理です。また、インストルメントパネルの合わせ目の段差を作らないような工夫もしています。また、メーターの文字盤は高級時計をイメージしたデザインとなっています。所有された方が「ああ、いいなぁ」と思っていただけるものにしています。エアコンの操作パネルなども普段から触れるものだけに気を使って専用にデザインしています。

高級時計をイメージしたと言うメーターパネル

岡部氏:シルフィのターゲットする販売地域には中国も含まれています。中国では高級感が求められていますが、分かりやすい高級感ではなく、つなぎ目のないパネルであるとか、劣化しない品質であるとか、そういった丁寧な作りを目指しています。内装の色に関しても、従来のベージュ色ではなく、あえてモダンな明るいベージュ系の色を使いました。

 ギラギラな高級感ではなく、品のよい上質感を目指しています。そこが日本市場にもマッチしたのかなと思っています。

(編集部:谷川 潔/Photo:清宮信志)