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ホンダと産総研、「高所調査用ロボット」を東電 福島第一原子力発電所で稼働開始

ヒューマノイドロボット「ASIMO」で培った技術を応用

高所調査用ロボット
2013年6月17日発表

 本田技研工業と産業技術総合研究所(以下、産総研)は6月17日、東京電力 福島第一原子力発電所向けに、遠隔操作で原子炉建屋内1階高所の狭い個所などの構造把握と現場調査を行う「高所調査用ロボット」を共同で開発したと発表した。同ロボットは6月18日より、建屋内での稼働開始を予定している。

ホンダ 福島第一原子力発電所用「高所調査用ロボット(High-access survey robot)」 模擬環境での実証実験の様子
高所調査用ロボット

 ホンダと産総研は、東京電力から提供された現場についての情報をもとに、ニーズに適合するロボットの開発を進めてきた。上部に設置した調査用アームロボット部分をホンダが、クローラー式高所作業台車を産総研が担当した。調査用アームロボットは、ヒューマノイドロボット「ASIMO」の開発で培った、下記の技術を応用している。

・三次元のポイントクラウド(点群座標)により、調査対象の周囲の構造物を立体的に表示する技術
・多関節を同時に制御するシステム
・アームが周囲の構造物に接触した際にその衝撃を吸収する制御技術

 これらの技術により、調査用アームロボットは、原子炉建屋内の構造物が入り組んだ状況でも、多数の関節を同時に制御することで、隠れていて見えない対象物も容易に捕捉し、アームの先端に設置したズームカメラやレーザーレンジファインダー、線量計を使い、詳細な画像や三次元形状データの確認、線源の特定などを可能にしている。

ホンダ 福島第一原子力発電所用「高所調査用ロボット(High-access survey robot)」 作業環境の3D表示技術
ホンダ 福島第一原子力発電所用「高所調査用ロボット(High-access survey robot)」 多関節を自在に制御する動き
ホンダ 福島第一原子力発電所用「高所調査用ロボット(High-access survey robot)」 周囲の構造物に接触した際にその衝撃を吸収する動き

 クローラー式高所作業台車は、産総研が培ってきた遠隔操作技術をもとに、低重心構造とし転倒安定性を高めた高所作業車にカメラ、ライト、レーザーマーカーなどの配置を工夫して取り付け、400mの光ファイバーを用いた有線LANおよび無線LANを介して遠隔操作できるようにしている。

 ホンダと産総研は、直感的に分かりやすい遠隔操作インターフェイスも共同開発。免震重要棟などから高所調査用ロボットを遠隔操作して、原子炉建屋内の暗くて狭い個所を移動させることができ、また調査個所にてアームロボットのマストを伸ばして、アームの先端が構造物にぶつかることなく、7mの高所に到達させ調査することを可能としている。

(編集部:谷川 潔)