ホンダ、新型「ASIMO」とパーソナルモビリティ「UNI-CUB」のデモを公開

2012年7月23日、24日開催
会場:Hondaウエルカムプラザ青山



デモンストレーションの様子

 本田技研工業は7月23日と24日に、ヒューマノイドロボット「ASIMO」と、その技術を応用したパーソナルモビリティ「UNI-CUB」のデモンストレーションを、ショールーム「Hondaウエルカムプラザ青山」の一般来場者に公開した。

 今回のイベントは、7月14日~28日に同会場で開催されている「Honda Robotics展」の一環として開催されたもの。「Honda Robotics」とは、同社がこれまで行ってきた「ヒューマノイドロボット」の研究・開発で得られた技術やその応用製品についての総称。同展では昨年11月に公開された最新型のASIMOのほか、今年5月に発表され、6月より日本科学未来館と共同実証実験が行われているパーソナルモビリティ「UNI-CUB」、「歩行アシスト」など、ホンダが開発した製品群を見ることができる。

「Honda Robotics展」に展示されている機材。新型ASIMO2009年発表のパーソナルモビリティ「U3-X」(写真左)と、今年5月に発表された「UNI-CUB」「リズム歩行アシスト」(写真左)と「体重支持型歩行アシスト」

 デモンストレーションは土日ともそれぞれ計3回ずつ行われた。デモではまず新型ASIMOがその能力を披露。新型ASIMOはヒューマノイドロボットとして世界で初めて自律行動制御技術を搭載したことが大きな特徴。受付業務などでロビーで活動する際、人の進行方向を自律的に予測してリアルタイムで回避運動を行うことができる。

 身体能力も強化され、脚の可動範囲を拡大。着地位置を動作中に変更することが可能な制御技術を導入したことで、従来では歩行動作から走行動作への移行は、ASIMOが一旦立ち止まってから移行していたが、新型ASIMOでは歩行動作から立ち止まることなく、そのまま走行動作へスムーズに移行できるようになった。凹凸面での歩行にもより柔軟に対応できるようになっている。

 また、手のひらに触覚センサーを搭載したほか、5指それぞれに力センサーを内蔵。各指は独立して制御可能で、水筒の蓋を開け、紙コップを手に持ってそこにジュースを注ぐ、という一連動作も単独で可能。

 デモでは新型ASIMOが器用な指先を使って手話で挨拶を行った後、手話で歌詞を再現しながら歌を披露。その後、水筒からジュースを実際に紙コップへ注ぐ動作や9km/hでの走行、片足ジャンプ、ボールキックなど披露して会場を盛り上げていた。

 新型ASIMOの後には、パーソナルモビリティ「UNI-CUB」が登場。人が乗らずにスマートフォンで遠隔操作をする様子や、コンパニオンが乗車して走行するデモなどが行われた。

オープニングで解説を手伝うASIMO。こちらは旧型ASIMOの制御技術は自動車のVSA(車両挙動安定化制御システム)にも応用されているとアピールASIMOの変遷。自動機械から自律機械へ進化
新型ASIMO新型ASIMOの上半身足まわり
手話で自己紹介するASIMO
水筒からジュースをコップに注ぐデモ。まずは水筒の蓋を外す外した蓋を置く紙コップをつかむ
ジュースを注ぐ水筒を置くジュースが入ったコップを渡す

歌を歌うASIMO

コップにジュースを注ぐ

走行デモ。歩行から走行へ移行する様子
ASIMOの走行デモ片足でジャンプした瞬間
後ろ姿デモを終えて手を振りながら帰るASIMO

 UNI-CUBは、人間のように全方向に自由な移動ができることを目標として開発されている乗り物。本体後部に旋回用の車輪を持つが、倒立振子制御によって基本的には1輪で走行が可能。旋回用車輪は本来なくても動作するが、よりスムーズな動作を実現するためにあえて取り付けたと言う。主輪は全方位駆動車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」を搭載。同社は2009年にも「U3-X」と呼ばれる同様のパーソナルモビリティを発表しているが、今回はさらに実用化に向けてリファインされたモデルとなる。1輪であるため横幅が短く、人が行き交う場所でも移動しやすい。また、何かにぶつかりそうな場合でも足を地面に着けばすぐに停止できる。

 本体サイズは520×345×745mm、最高速は6km/hで、航続距離は約6km。バッテリーはリチウムイオン充電池。

 UNI-CUBの操作はハンドルなどではなく、搭乗者の重心移動によって進行方向を決めるもの。たとえば、搭乗者が前屈みになれば前身、後ろに仰け反れば後進、というように移動する。足下にペダルはあるが、あくまで足を乗せるためのもので操作に使用することはない。また、スマートフォンでの操作にも対応。スマートフォンの画面に表示されたアイコンをなぞることで、体重移動するのと同様にUNI-CUBを操作できる。特に体重移動での操作ではその場旋回をする場合、操作にコツがいるため、スマートフォンを使ったほうが速やかに移動できるケースもあるそうだ。

 UNI-CUBは屋内のバリアフリー対応空間での運用を想定しており、将来的には空港やショッピングモールなど、人が行き交う空間での運用を目指している。

UNI-CUB。スマートフォンによる遠隔操作で登場乗車したところ。手にしているのは遠隔操作に使ったスマートフォン走行デモの様子
横から見たところ。後ろに突き出ているのが旋回用車輪後方の黒い部分は取り外し可能なバッテリーパックシートはレバー操作で上下位置を調整可能
足下のペダルは足を乗せるためだけのもの同社におけるパーソナルモビリティの歴史。1989年に開催されたアイデアコンテストですでに倒立振子を利用した乗り物が開発されていた全方位駆動車輪機構「Honda Omni Traction Drive System」

UNI-CUBの操作説明

6km/hでの走行と両足を着いて停止する様子

(清宮信志)
2012年 7月 24日