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富士スピードウェイ、10月18日~20日にWEC「6 Hours of Fuji」を開催

ル・マン24時間優勝のロイク・デュバル選手らが会見

WEC「6 Hours of Fuji」(写真は昨年開催時のもの)
2013年10月18日~20日開催

 富士スピードウェイは、スーパーフォーミュラ開催中の7月13日に記者会見を実施し、10月18日~20日に同スピードウェイで開催するFIA WEC「6 Hours of Fuji」の概要説明を行った。記者会見には、同レースに参加予定の中嶋一貴選手、ロイク・デュバル選手、アンドレ・ロッテラー選手が参加し、6月にフランスで行われたル・マン24時間レースの感想や、6 Hours of Fujiに向けた意気込みなどが語られた。

富士スピードウェイで10月18日~20日に開催するWEC「6 Hours of Fuji」の説明会を実施。左から富士スピードウェイ 社長 堤健吾氏、ロイク・デュバル選手、アンドレ・ロッテラー選手、中嶋一貴選手、クレインズ
堤社長からデュバル選手に、ル・マン24時間優勝を祝して花束贈呈が行われた

 また、ル・マン24時間レースの初優勝を遂げたロイク・デュバル選手には、富士スピードウェイからお祝いの花束が贈られるセレモニーも同時に行われた。

伝統のレースと言える10月のWEC in Japan

 WEC(World Endurance Championship)は世界耐久選手権という日本語訳のとおり、1000kmレースや6時間レースなど長距離フォーマットで、世界各地を転戦して争われる。F1世界選手権、WTCC、WRCなどと並んでFIA(世界自動車連盟)が世界タイトルをかけているレースシリーズとなる。ハイライトとなるのは、毎年6月の第3週前後に行われるル・マン24時間レースで、各メーカーともそこを天王山として毎年車の開発を行っているほどだ。

 これはル・マン24時間レースが、世界3大レース(ほかはF1モナコGPと、インディカー・シリーズのインディ500)の1つに数えられるほど歴史があり、著名なレースであるた。各メーカーともル・マン勝者という称号を目指して戦っている。

 そのル・マン24時間レースに次いで、格式があるWECのレースが、昨年も10月に行われたWEC in Japan。WECそのものは昨年から始まった選手権なのだが、実は1980年代にもWECや、WSPC(世界スポーツプロトタイプカー選手権)という名称で行われており、その時代にも毎年10月に富士スピードウェイで、1000kmレースや6時間レースが行われ、毎年熱いバトルが繰り広げられていた。

 今年も開催されるWEC「6 Hours of Fuji」は、そうした時代を受け継いでいるため、「ル・マン24時間レースに次ぐ重要レース」(中嶋一貴選手)とチームやドライバーからも位置づけられているのだ。

 現在のWECは、大きく分けて4つのクラスがある。

・LMP1
・LMP2
・LMGTE-Pro
・LMGTE-Am

 LPM1とLMP2がいわゆるスポーツプロトタイプカーと呼ばれる、ワンオフのレーシングカーのクラスになる。LMPというのはLe Mans Prototypeの略で、元々はル・マン24時間向けに作られたレーシングカーのクラス。LMP1は自動車メーカーのワークスチーム向けで、ハイブリッドも許可されているなどハイパフォーマンスなクラスとなる。現在はアウディ、トヨタという2大ワークスチームが参戦しており、毎戦激しく優勝が争われている。

 これに対してLMP2は市販されているレーシングカーを購入して参戦するプライベートチーム向けで、エンジンも上限価格が決められた状態で販売されるなど、コストに配慮したクラスとなる。

 GTEクラスは、市販のスポーツカーベースのレーシングカーで、フェラーリやアストンマーチン、コルベットなどのスポーツカーベースの車で争われている。

 GTEクラスにはプロドライバーが走るGTE-Proと、いわゆるジェントルマンドライバーと呼ばれる予算に余裕があるアマチュアドライバーが走るGTE-Amという2つのクラスが用意されている。

日本にゆかりのあるドライバーが多数参加するWEC

 こうしたWECには複数の日本人ドライバーと、日本のレース育ちのドライバーが走っている。メインクラスとなるLMP1では、アウディのアンドレ・ロッテラー選手(2011年のフォーミュラ・ニッポン王者、2006/2009年SUPER GT GT500王者)、ブノア・トレルイエ選手(2001年全日本F3選手権王者、2006年のフォーミュラ・ニッポン王者、2008年SUPER GT GT500王者)、ロイク・デュバル選手(2009年のフォーミュラ・ニッポン王者、2010年SUPER GT GT500王者)が参加。シーズンを通してドライブするレギュラードライバーとして加わっている。また、トヨタにはシーズンを通してではないものの、ル・マン24時間レースや富士など重要なラウンドのみ中嶋一貴選手がドライバーとして加わっている。

 GTE-Proクラスには昨年までザウバーF1をドライブしていた小林可夢偉選手がAFコルセというチームでフェラーリをドライブしている。小林可夢偉選手の契約は、F1チームのスクーデリア・フェラーリとの契約になっているが、今年はフェラーリ側のリクエストによりこのWECに参戦している。これまで小林可夢偉選手と言えば、シングルシーターのイメージが強かったと思うが、彼にとっても初めての箱車をドライブするシーズンとなっている。小林選手の希望どおり、来年以降にF1に復帰することができれば、その後は小林選手が箱車をドライブする姿を見ることは難しくなるだろう。その意味で、今年のFIA WEC「6 Hours of Fuji」は貴重な機会となる可能性が高い。

 WEC「6 Hours of Fuji」の開催の当日には、参戦ドライバーが参加するトークショーのほか、ピットウォーク、ステージでの音楽ライブなどさまざまなイベントも計画されており、6時間という長丁場のレースを楽しめるだけでなく、そうしたイベントを楽しむこともできそうだ。

 チケットはすでに販売が開始されており、富士スピードウェイの特設Webページ(http://www.fsw.tv/2ch/2_5ticket/info_wec/)で購入することができる。通常の観戦券のほかにも、アウディ、トヨタ応援席なども用意されており、特定のチームを応援したいならそちらを購入してみるのもよいだろう。

革命的に進化した車を武器に戦うアウディ勢と新しい空力アップグレードに期待するトヨタ勢

 富士スピードウェイで行われた記者会見には、ロイク・デュバル選手(アウディ)、アンドレ・ロッテラー選手(アウディ)、中嶋一貴選手(トヨタ)が参加した。以下、その記者会見の模様をダイジェストでお届けしたい。

ロイク・デュバル選手
アンドレ・ロッテラー選手
中嶋一貴選手

──デュバル選手、優勝おめでとうございます。ル・マン24時間の優勝の感想や富士のレースに向けた意気込みを教えてください。
デュバル選手:どんな時でも優勝するということは格別。特に今年は最初から最後まで競争が激しかったので大変だった。僕らにはスピードはあったけど、燃費には差があったので、どうなるのかわからなかった。また、天候もあまりよくなくて、トラックの状態は非常に難しかった。ただ、2周目のアクシデントで、ドライバーが一人亡くなってしまうという状況の中での優勝だったので、正直ちょっと奇妙な感じだった。

 富士のレースに関しては、昨年同様タイトな戦いになると考えている。去年僕はここで観戦しているだけだったけど、ファンも多かったし、トヨタの地元でもあるので、ここでレースすることが楽しみだよ。

──ロッテラー選手はいかがですか?
ロッテラー選手:僕個人としてはよいレースができたと思うけど、技術的な問題が出て優勝を逃したのは残念だった。オルタネータのトラブルだったんだけど、本当にまれにしか起きないトラブルで、車体の下の方を直さないといけなくなり修理に時間がかかりチャンスがなくなってしまった。その後頑張ってリカバリーして5位に入ってポイントを取れたのはよかった。でもまた来年があるので、次も優勝を目指して頑張りたい。

 選手権を考えると、LMP1クラスはル・マン24時間の時より車が減ってしまうので、失ったポイントを取り返すのは決して簡単なことではないけど、追いつけるように頑張りたい。富士スピードウェイに来るのはもちろん大好きだし、ファンは熱心でLMPに関する理解度も高いし、何よりここの雰囲気が大好きなんだ。

 あ、言い忘れてたけど、ロイクにはおめでとうを言いたいね(笑)

──中嶋選手はいかがですか?
中嶋選手:ル・マンは難しいレースになりました。ライバルに比べると燃費がいいという状況だったので、それを武器にと考えて戦っていました。最終的に8号車(筆者注:中嶋選手は7号車に搭乗)が表彰台に上がれたのはチームにとってよかったです。個人的には去年は本当に出ただけで、レースの厳しさを感じることもできなかったので、悔しいという感情もわいてきませんでしたが、今年の結果は非常に悔しい結果だったので、これをバネにして来年に向けてチーム一丸となって努力していきたいです。それから、ロイクが優勝したことは個人的には嬉しいですね。

 富士戦に向けてですが、去年は非常によいレースができました(筆者注:昨年は中嶋選手がドライブするトヨタ7号車が優勝)。今年はル・マンだけでなく、他のWECのレースでも厳しい戦いになっていますが、トヨタは次戦から車のパッケージも変わる予定で、それに期待しています。富士のレースは、ル・マンを除けば一番重点レースであることは間違いなく、お客さんも多いので、頑張りたいです。

──中嶋選手にお聞きしますが、昨年はル・マン24時間初出場でしたが、今年は2回目ということで、去年よりプレッシャーがありましたか?また、富士のレースでは昨年優勝されていますが、今年はいかがでしょうか?
中嶋選手:ル・マンでのプレッシャーは昨年よりは少なかったです。富士のレースですが、昨年非常に良いレースができたので、それ以下のレースはできないなと思っていますし、優勝しないことには満足していただけないだろうとは思っています。富士はストレートが長いサーキットなんですが、現在の僕たちの車はストレートのスピードに苦戦しているので、そこをどれだけ解消できているのかがポイントかなと思っています。

──各選手にお聞きしますが、富士のレース展開や、今シーズン仕様のマシンの特徴などについて教えてください。
デュバル選手:富士は本当に特別なサーキットなんで、予想は難しい。ただ、今年の車は昨年に比べると革命的に進化しているので、シルバーストン、スパ・フランコルシャン、ル・マンという異なるサーキットすべてで満足できる出来になっている。本当に大きなステップだったんだ。

ロッテラー選手:ロイクが言ったとおり、今年の車は本当に革命的な進化だったんだ。今年の車で最も進化した点は空力で、特にボディーワークがよくなっているんだ。どこかのメーカーと同じようなボディーの一部のウイングもついたしね(笑)。確かにシルバーストンやスパ・フランコルシャンのようなハイダウンフォースなサーキットで調子がよかったんだけど、課題としてはタイヤをうまく使う必要があることが挙げられる。

中嶋選手:次戦から投入されるパッケージはル・マンまでとかなり違ってくるらしいので、それで走ってみるまで正直どうなるのかはわかりません。現状としてはアウディに先行されている感があるので、それをひっくり返したいですね。今ファクトリーで空力部門の担当者が頑張ってくれているので、期待しています。

(笠原一輝)