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日産、電力駆動レーシングカー「Nissan ZEOD RC」をNISMO本社でジャパンプレミア

今週末のWECで予定していたデモ走行はキャンセル。展示のみ

電力駆動レーシングカー「Nissan ZEOD RC」とNISMOの宮谷正一取締役社長(右)、日産 ダイレクター・オブ・モータースポーツ・イノベーションのベン・ボウルビー氏(左)
2013年10月17日開催

NISMOグローバル本社

 日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は10月17日、NISMOのグローバル本社(神奈川県横浜市鶴見区)において、電力駆動レーシングカー「Nissan ZEOD RC(Zero Emission On Demand Racing Car)」を日本で初公開した。

 この公開に伴い行われた発表会には、NISMOの宮谷正一取締役社長とともにZEOD RCの開発チームから日産 グローバル・モータースポーツ・ダイレクターのダレン・コックス氏、ダイレクター・オブ・モータースポーツ・イノベーションのベン・ボウルビー氏、テストドライバーとしてZEOD RCの開発に携わったミハエル・クルム選手、そしてACO(フランス西部自動車クラブ)でスポーツディレクターを務めるヴィンセント・ボウメニル氏が出席した。

 なお、ZEOD RCは今週末(10月18日~20日)に富士スピードウェイで行われる「2013 FIA World Endurance Championship Round6“6 Hours of Fuji”」(2013 FIA世界耐久選手権 第6戦 富士6時間耐久レース)でデモ走行を行うことをアナウンスしていたが、車両がまだ完全形ではないことからキャンセルすると発表された。デモ走行は行われないが、車両は3日間とも展示される。

NISMOグローバル本社内に展示されていたNissan LEAF NISMO RC
こちらはNISMOが手がけるエアロパーツやホイールなどを装着したリーフ
マーチの高性能バージョン「マーチ NISMO S」。直列4気筒DOHC 1.5リッターエンジンに5速MTを組み合わせる。このほか直列3気筒DOHC 1.2リッターエンジンにCVTを組み合わせる「マーチ NISMO」もラインアップ。発売は12月を予定している
ZEOD RCのアンベール

EV走行でサルテサーキットを1周走れるZEOD RC

 ZEOD RCは、2012年のル・マン24時間レースに出場した実験レーサー「デルタウィング」に続くレース車両。2014年のル・マン24時間に出場することが明らかにされており、新技術を紹介する車両のために用意される「ガレージ56」枠からLMP1(ル・マン・プロトタイプ1)クラスに出場する予定。

 同社のEVレーシングカー「Nissan LEAF NISMO RC」で培ったリチウムイオンバッテリー技術が使われ、高効率な回生システムなどを採用。モーターとともに小型軽量ターボエンジン(確定ではないものの、現時点では1.5リッターガソリンエンジンの使用を想定している)を搭載し、状況に応じてドライバーがエンジン走行とEV走行をスイッチで切り替えながら走行すると言う。EV走行に関しては、ル・マン24時間レースが行われる仏ル・マン市内のサルテサーキット(約8.5マイル)を1周走行できるとアナウンスしており、この1周を走るのに12周走行してブレーキ回生でバッテリーに充電する必要があると言う。最高速は300km/h以上。

 なお、デルタウィングがブラックのカラーリングでオープンボディーだったのに対し、Nissan ZEOD RCはホワイトのカラーリングでクローズドボディーとなる。また、ZEOD RCは今年のル・マン24時間レースで世界初公開となったモデルだが、NISMO本社で今回公開されたモデルは新たに冷却用インテークの採用や、エアロダイナミクスの変更といった改良が行われている。

モーターとともに小型軽量ターボエンジンを搭載するZEOD RC。フランスのタイヤメーカーであるミシュランとパートナーシップを結び、共同でZEOD RC向けのタイヤ開発を行っている
ZEOD RCのインテリア。1人乗りだがシートやハンドルはセンターに配置せず右側にオフセットされている

「フルスピードでのデモ走行は断念することになった」

WEC富士でのデモ走行を断念したことを語る宮谷社長

 発表会で登壇した宮谷社長は、今週末のWECでのデモ走行をキャンセルしたことについて触れ、「ZEOD RCは、先月にイギリスでシェイクダウンして2週間にわたってテストを行ってきたが、フルパワーで富士スピードウェイを走行させるための開発を間に合わせることができなかった。このプロジェクトはすべてがこれまでにない新しい領域へのチャレンジであり、私たちはZEOD RCを最高の状態でお見せしたいと思っているが、最高の状態にできなかったためフルスピードでのデモ走行は断念することになった」と述べるとともに、「楽しみにしてくださったお客様には大変申し訳ないが、それだけ我々が極めてチャレンジングな課題に挑戦していることの証だとご理解いただければと思う」と説明した。

 また、ゲーマーをリアルなレーシングドライバーにする「GTアカデミー」出身のルーカス・オルドネス選手とともに、ZEOD RCの開発ドライバーを務めるミハエル・クルム選手は、ZEOD RCの特長について「EVは瞬時にパワーが出るのがエキサイティングで、1人乗りというのがスペシャル」と述べるとともに、エンジンとトランスミッションを搭載する通常のレーシングマシンと乗り方が異なると言い、「サーキットを走るにあたりブレーキングは非常に重要で、一般的なレーシングカーではエンジンブレーキも使って減速していけるが、電動自動車でのスローダウンはそれほど容易ではない」と課題も挙げたが、「NISMOが関わっているのでそれほど問題にはしていない」と言う。

 そして1998年に初めて出場したル・マン24時間レースについては、「このレースに出ることはドライバーにとってほかでは体験できないもので、そのル・マン24時間レースにZEOD RCで走るというのはエキサイティングな体験になると思う。ル・マン24時間レースはどのドライバーにとっても非常に大きなチャレンジで、F1ドライバーでも一生に一度は出てみたいと聞くものだが、そのようなル・マン24時間レースに何度も出られる機会を与えてくれた日産に感謝したい」と述べた。

 ACOのヴィンセント・ボウメニル氏は、ル・マン24時間レースが行われているサルテサーキットはコースが長く、速度域が高いという特徴を備え、こうした極端な条件下で新しい技術をテストして欲しかったと「ガレージ56」枠を用意した理由を説明するとともに、WECが行われる富士スピードウェイについては「ル・マン24時間レースにはこれまで多くの日本の自動車メーカーが参加しており、日本とル・マン24時間レースには非常に強力なつながりがある。富士でZEOD RCを公開することを嬉しく思っております」とし、週末のWECを楽しみにしてほしいと語った。

日産 グローバル・モータースポーツ・ダイレクターのダレン・コックス氏
日産 ダイレクター・オブ・モータースポーツ・イノベーションのベン・ボウルビー氏。氏はデルタウィングの設計者でもある
ACO スポーツディレクター ヴィンセント・ボウメニル氏
ZEOD RCの開発ドライバーを務めるミハエル・クルム選手。ル・マン24時間レースへの挑戦はエキサイティングと語る

【追記】記事初出時、ZEOD RCのデモ走行は中止と記載いたしましたが、レース当日に富士スピードウェイのホームストレートを使ったデモ走行が行われました。

(編集部:小林 隆)