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【タイヤレビュー】ヨコハマタイヤの最高峰低燃費タイヤ「ブルーアース・ワン EF20」

転がり抵抗性能「AAA」、ウェットグリップ性能「a」を達成

低燃費タイヤの頂点に到達した「ブルーアース・ワン EF20」

 低燃費タイヤのラベリング制度がスタートし、燃費に効く転がり抵抗性能と雨の日のグリップ力であるウェットグリップ性能が一目瞭然となった中で、タイヤメーカー各社は、性能の向上にますます力を注いでいる。

 転がり抵抗性能に関しては、最高グレードである「AAA」もそれほど珍しくなくなってきたものの、その最高性能を維持しながらウェットグリップ性能も最上級の「a」を達成した「AAA/a」の商品というのは、それほど多くはない。

 そんな中、低燃費タイヤの先駆者であるヨコハマタイヤ(横浜ゴム)が、ついに「AAA/a」グレードを達成した「BluEarth-1 EF20(ブルーアース・ワン・イーエフ・ニーマル)」(以下、EF20)を発売した。

 EF20は、「AAA/c」グレードの従来品「BluEarth-1 AAA spec」(以下「AAA spec」)の後継モデルであり、ウェットグリップ性能は「c」から「a」へと一気に向上した。なお、AAA specでは3サイズがラインアップされていたところ、EF10は195/65 R15の、いわゆる「プリウスサイズ」と呼ばれる多くのコンパクトカーで採用されている1サイズのみの設定となる。

 EF20のトレッドパターンは、AAA specに比べていくぶんシンプルになっている。溝の深さについても、やや浅くなっているようだが、理由はウェットグリップと転がり抵抗を両立させるための最適なバランスを追求した結果とのことだ。

 また、イン側とアウト側の機能を最大限に活かすため、AAA specと同様、左右非対称パターンを採用しており、パターンだけでなくラグ溝の剛性についてもイン側とアウト側で変えているという。

ブルーアース・ワン EF20のトレッドパターン。最近のタイヤらしく、直線基調のブロックがベースとなっている
ブルーアース・ワン AAA specのトレッドパターン。パターンナンバーはEF10。イン側のトレッドパターンデザイン要素がEF20に引き継がれたのが分かる。アウト側のパターンはEF20で新設計された
EF20のトレッドパターン。右がアウト側。より緻密になったブロックデザインと、波形のストレートリブデザインが印象的
同じくEF20。アウト側(右側)の側面ディンプル数から、ブロックやラグのピッチバリエーションが行われているのが分かる
EF20のサイドウォール。近年のヨコハマタイヤが採り入れているフラットフェースロゴを採用。すっきりした仕上がりで高級感もある

 試乗したのは、ヨコハマタイヤのテストコース「D-PARC」内のスキッドパッド。AAA specとEF20を装着したプリウスで、それぞれ定常円を周回して比較するという限られた状況で、できることも限られていたが、それでも感じ取ることのできた両者の差は小さくなかった。

定常円旋回でハッキリ分かるタイヤの進化

 最初はAAA specを履くプリウスでコースイン。横滑り防止装置はONのまま、舵角一定で円旋回する。約30km/hから徐々に車速を上げていき、横滑り防止装置が作動した状態で旋回できる限界速度をチェックしたところ、40km/hまではなんとか持ちこたえるという感じ。

 ちなみにこの際、車両特性にもよるのだろうが、プリウスの場合はリアが先にブレイクし、わずかなタイムラグののち横滑り防止装置が作動するようになっている。

 さらに、操舵する速さや角度などを変えて、いろいろなパターンでステアリングを切ってみたり、同じくアクセルやブレーキの踏み方をいろいろ変えたり、旋回ブレーキを行ない完全停止するまでの感触を確かめたりするなどしてAAA specのフィーリングをチェックした。

定常円旋回中の筆者
AAA specだと約40km/hが限界だった
EF20では、限界が10km/h程度上がる。プリウスは電子制御による介入が早く、タイヤのグリップ限界の違いは誰にでも分かりやすい

 その感触がフレッシュなうちに、EF20を装着したプリウスに乗り換え。円旋回では、AAA specでは限界だった車速40km/hでも、同じ車速とは思えないほど磐石のグリップ感が得られ、まだまだ車速を高められそうな雰囲気。ウェットグリップが圧倒的に高いことは明らかだ。

 どこまで車速を高められるかを試してみると、ステアリングとアクセルペダルの操作に気を使わないと一定速度をキープするのは難しいが、AAA specを実に10km/hも上回る50km/hで旋回することが可能だった。

 その後は、AAA specで行なったのと同じように、いろいろな操作を行なって反応の違いをチェックした。左右にゆすってみたときの反応もまったく違って、AAA specでは転舵に対しては応答遅れが生じるところ、EF20はあまり遅れることなくヨーが発生してクルマが向きを変える。そして、転舵するスピードを速くするほど両者の差は大きくなっていく。

 また、その際にタイヤが路面を掴む感覚も大きな違いがある。雨の高速道路を走る際などのこうしたフィーリングの向上は、より高い安心感につながるに違いない。昨今の日本は急に雨が降ってくることも多いが、道路が冠水するような雨でもない限り、頼もしいパートナーとなってくれるはずだ。

 旋回ブレーキでの印象もまったく違う。ブレーキの踏み始めから制動感の強さが違う上、制動距離が短い。止まる直前には、よりきめ細かくABSが作動~解除を繰り返す。それだけしっかりグリップしているからだろう。

 開発者によるとウェットグリップについては20%以上は上がっているとのことだったが、感覚としてはもっと向上しているように感じられたほどだ。ゴム自体の性能を発揮する領域が変わっているため、もっとも差がつくという15度近辺の温度域では、40%以上もの差があるようだ。

 音に関しては、プリウスでスキッドパッドを走行した限りでは、EF20のほうがAAA specよりも若干大きく感じられた。ロードノイズについては同等とのことだが、ウェットグリップが高まったぶん、水を巻き上げることで生じるスプラッシュ系のノイズが増したのではないかと思われる。

 「AAA/a」グレードのタイヤというのは、ライバルメーカーを見てもサイズの設定が非常に限定的であり、タイヤメーカーにとって製造の難しいものなのだろうが、より高い付加価値を備えた、ユーザーメリットをもたらすものであることには違いない。このクラスのタイヤのサイズバリエーションが増え、多くのユーザーが低燃費性能と、この高いウェットグリップ性能を享受できるよう望みたい。

(岡本幸一郎)