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自工会、豊田章男会長の年頭の挨拶

自工会 豊田会長(写真は2013年の定例記者会見より)
2014年1月1日発表

 日本自動車工業会は1月1日、豊田章男会長の年頭の挨拶を発表した。以下にその全文を掲載する。


 新年明けましておめでとうございます。年頭にあたりご挨拶申し上げます。

 昨年は、リーマンショック以降、東日本大震災や超円高などの度重なる苦難を乗り越えようとする民間の頑張りを、政府のアベノミクスで後押し頂き、ようやく日本経済が回復に向けたスタートラインに立った年でした。

 また、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催決定は、日本に「夢」と「希望」を与えてくれました。

 一方、東日本大震災の爪痕は依然として消し去られておらず、復興も道半ばであり、まだ以前の生活を取り戻せていない被災者の方が多くおられます。本年はさらに復興が進展することをお祈り申し上げます。

 昨年の世界の自動車市場を見ると、米国市場は好調が続き、欧州市場はようやく回復基調となるなど、堅調に推移しました。他方、これまで急成長を遂げてきた新興国市場に減速感が見られ、本年は予断を許さない状況です。

 国内市場については、昨年前半は前年割れが続きましたが、後半には消費マインドの改善などにより、回復の兆しが見えてきました。しかしながらこの中には、本年4月の消費税増税前の駆け込み需要も含まれており、今後の国内市場の動向は楽観視できません。

 本年は、日本経済が回復基調から持続的成長へと転換を図り、2020年という未来に向けたスタートを切る大変重要な年です。自動車業界としても、日本の基幹産業という気概を持ち、日本の「元気」「笑顔」を取り戻すために邁進してまいります。

 当会としては、本年も「国内市場の活性化」「事業環境の改善」「安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造」に注力してまいります。

<国内市場の活性化>

 日本の自動車産業の競争力の源泉は、高い技術力を持つサプライヤーや優秀な人材などに代表される強固なものづくり基盤です。このものづくり基盤を守り続けるには、20年以上続く国内市場の縮小に歯止めをかけることが特に重要であり、昨年は、国内市場の活性化に向けた取り組みに注力致しました。

 昨秋には、「大学キャンパス出張授業~経営トップが語るクルマの魅力~」と題して、各社トップが大学に赴き、学生と直接対話するという試みを実施致しました。積極的に質問をする学生や、展示車両に笑顔で乗り込む学生の姿をたくさん目にし、私は、「若者は決してクルマに興味がないわけではない」「彼らが目を輝かせるようなクルマを造りたい」という思いを強くしました。

「第43回東京モーターショー」では、国内外のメーカーに初公開のクルマを積極的に披露頂き、ワールドプレミア76台と、非常に注目度の高いモーターショーになりました。加えて、クルマ・バイクを体感する新たな企画である「お台場モーターフェス」を同時開催致しました。東京モーターショーでクルマを見る「静」の楽しみと、お台場モーターフェスでクルマに乗る「動」のワクワク感を一度に感じることが出来る、言わば、「静と動」の織り成すハイブリッドモーターショーになりました。新たなメディアイベント「Mobilityscape Tokyo」では、会長副会長5人のリレートークにより「日本のものづくりのDNA」などをプレゼンしたのに加え、メーカー14社が協力した、鋼板製の「希望の一本松」の製作・披露など、多くの海外メディアの方々に、日本のものづくりの底力を感じていただくことができたと思います。

 その結果、モーターショーには前回(84万人)を上回る90万人のお客様にご来場いただき、クルマやバイクの魅力を間近でご覧いただくことができました。

 本年はモーターショーの休催年ですが、この勢いを絶やすことなく、クルマ・バイクの魅力を様々な形で積極的に発信してまいります。

 また、国内市場の活性化に向けては、過重な自動車ユーザーの税負担軽減が大変重要です。昨年末の税制改正大綱で、消費税8%時点における自動車取得税率の一部引き下げ、エコカー減税拡充等が決定され、自動車ユーザーの税負担が一定程度軽減されることとなりました。関係者のご尽力に感謝申し上げると共に、自動車業界としても、今後も魅力ある商品を投入していくことで国内市場の活性化を図ってまいります。

 しかしながら、二輪車、及び対象が限定されたといえ軽自動車が増税されることについては、極めて残念と言わざるを得ません。自動車業界としては、今後、消費税10%段階において、自動車取得税の確実な廃止を実現するとともに、今回提示された環境性能課税が、自動車ユーザーの確実な負担軽減に資する制度となるよう、引き続き活動してまいります。

<事業環境の改善>

 国内のものづくり基盤を守るためには、国内の事業環境を改善していくことも重要です。これまで私たち自動車業界は、歴史的な超円高をはじめとする、いわゆる「六重苦」の解消を政府にお願いしてまいりました。安倍政権発足以降、政府の大胆な政策により、最大の懸案であった超円高は是正されてきました。政府の取り組みに深く感謝申し上げます。

 一方、残された課題も存在します。自動車業界としては、自由貿易協定の更なる推進や、法人税の引き下げ、安全・安価な電力の安定供給などを、引き続き政府に強く求めてまいります。

<安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造>

「高齢化」や「エネルギー・環境問題」など、私たち自動車業界が直面する課題は、日々その深刻さを増しています。

 私たち自動車業界は、政府の進める「世界一安全な道路交通」の実現に向けた取り組みを推進しております。今後、高齢化が進展する中においても、交通事故死者数が着実に減少していくよう、私たち自動車業界として、クルマとインフラ、クルマとクルマ、クルマと人がつながることで実現する自動運転技術の実用化等、様々な安全技術の導入・普及により、高齢者を含む全ての人の安全・快適かつ自由な移動を実現したいと考えております。

 また、「エネルギー・環境問題」に対しても、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル車などの次世代自動車の開発・普及を積極的に行ってまいります。電気自動車や燃料電池自動車の普及には、充電インフラや水素供給インフラの整備が不可欠です。自動車業界としても、クルマの技術開発とともに、インフラ整備についても関連業界と協力し、「安全・快適で持続可能なクルマ社会の創造」に向けて邁進してまいります。

 このような新しい分野において、日本発の技術で世界をリードしていくためには、私たち自動車業界が未来を切り開くという気概を持って技術革新に取り組むのはもちろんのこと、これら社会的課題の解決を、成長戦略の中枢に位置づけ、産官学がオールジャパンで取り組んでいくことが重要です。

 今後とも政府に対し、「世界で一番イノベーションが起こりやすい国=日本」の実現に向け、成長戦略の着実な実行を強く求めてまいります。

<おわりに>

 2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定し、私たちは世界に向け日本の素晴らしさを発信していく絶好の機会を頂きました。これからは、様々なことが、2020年に向け動いていくことになると思います。2020年までの6年間で、日本が明るい未来に向け、着実に歩を進めていくことを期待しております。

 私たち自動車業界としても、2020年という一つの「納期」に向け、「夢のある豊かなクルマ社会」「未来のモビリティー」の実現に向けて取り組んでまいります。

 今後とも皆様方の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いします。

(編集部:谷川 潔)