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ホンダ、越後湯沢で除雪機の体験取材会を開催

実際に除雪機が活躍するシーンで従来型と新型除雪機を体験!

除雪機のサイズは除雪したい雪の高さが1つの目安となっており、50cm以内を小型、1m以内を中型、1m以上を大型が受け持つ。写真は小型の除雪機
2014年2月5日開催

除雪機市場について解説する志賀雄次氏(本田技研工業 取締役 汎用パワープロダクツ事業本部 本部長)

 本田技研工業の製品には大きく分けて3つの柱がある。2輪、4輪、そして汎用製品だ。ホンダにおける汎用製品とは、耕運機や発電機のほか電動カートなど生活に密着したものが多いことが特徴だが、その汎用製品ラインアップの中から除雪機にスポットをあてた体験取材会が2月5日に開催された。

 会場は雪深い越後湯沢の「NASPAスキーガーデン」(新潟県)で、広大な敷地に設けられた第4駐車場を占有して行われた。越後湯沢の雪質は水分が多く重いことで有名で、それ故、踏み固められると雪は非常に硬くなり人力での雪かきは重労働。そこで除雪機の登場というわけだ。

 用意された除雪機は、今シーズンの新型除雪機2タイプのほか、性能を比較するため従来型も用意された。除雪機の市場はグローバルで100万台規模と思いのほか大きい。そのうち80万台ほどが北米市場で、欧州、日本、豪州と続く。もっとも、除雪機は天候に左右されやすい製品でもあり、ひとたび暖冬となると市場規模は一気に落ち込み、50万台程度となることもめずらしくないという。

 日本では現在4.2万台の市場規模(ガソリンロータリー除雪機のみ/2013年12月末時点)で、4年連続で市場規模は拡大しているというが、その背景には異常気象による、いわゆる“ドカ雪”が降る回数が増えたこと、さらには降雪エリアの拡大や高齢化により人力による雪かきが難しくなってきたことが挙げられる。

 そうした中この10年間、シェア50%以上を占めるホンダの除雪機だが、その歴史は古く初代が登場したのは1981年のこと。4ストローク144ccのホンダ製汎用エンジンを搭載した小型軽量タイプの除雪機で、コストパフォーマンスに優れていた。初代「インサイト」の登場から2年後の2001年には、世界初のハイブリッド除雪機「スノーラiHS1390i」を発売。除雪機本来の機能である雪かきや、かいた雪を飛ばすための動力源にはこれまでと同じガソリンの汎用エンジンを使いながら、ゴム製ベルトで構成されるクローラ(クルマでいうタイヤ)をバッテリー駆動として化石燃料の消費量を減らす画期的なものだった。

 今シーズンの新型除雪機は昨年の夏に相次いで発売されたもので、売れ筋の小型と、業務用にも使われる大型の2タイプが用意されているが、単なる新製品というだけでなく、いずれも世界初の機構が組み込まれていることがトピックだ。

 ちなみに除雪機のサイズは、除雪したい雪の高さが1つの目安で、50cm以内を小型、1m以内を中型、1m以上を大型が受け持っており、国内でもっとも販売台数が多いのは小型の除雪機。そうしたことからホンダはこの小型の除雪機を国内市場の主軸とし、リーズブルなボトムグレードからハイブリッドタイプ、そして今回の新型と3タイプ計8種類を投入している。

 2輪、4輪、汎用とホンダが販売する製品のほとんどを体験していた筆者だが、除雪機は初体験。しかも体験取材用に集められた雪ではなく、今シーズン降り積もった雪の塊を除雪するという実際に除雪機が活躍するシーンでの体験ということもあり期待が高まる。

雪かき効率を向上させる新機能「クロスオーガ」とは?

小型の従来モデル「HSS970n」

 まずは小型の従来モデル「HSS970n」から体験する。クルマでいうところのパワー/トルクにあたる最大除雪量は1時間あたり55t、除雪幅は71cmを誇る。重量は125kgと見た目よりも重いのだが、軽ければ回転するオーガ(雪をかく刃)の勢いで機体(専門用語ではこう表記する)が浮いてしまうため、ある程度の重さが必要だ。

 掃除機のようにスイッチポンで除雪開始をイメージしていたものの、操作は予想よりもはるかに難しい。“除雪”という言葉の響きから、どことなく優しい印象があったのだが、小さいとはいえ鋭利なオーガを回転させながらの作業はかなりの緊張感を伴う。両手で常時、前後左右に別々の操作系統に指示を出しながら、ときにレバーを握りつつ、除雪する雪の塊具合や投雪の方向にも気を配らなければならず、慣れるまでどこに神経を集中させればよいのか分からなかった。その上、見た目には雪の硬さは判別しづらいため、無理に前に進めようとしてもオーガの回転力だけでは前に進まないこともある。そうこうしているうちに、今度は機体が雪の上に乗り上げてしまい立ち往生してしまうこともあった。

新型「HSS970n(JX)」
小型除雪機に世界初搭載された「クロスオーガ」技術。これにより、硬い雪でも深く、簡単に除雪ができるようになった

 続いて新型「HSS970n(JX)」で、さきほど立ち往生した雪の塊に向かうと、今度はウソのようにグングンと前に進み、雪を勢いよくかいていく。これを可能にしたのが世界初の「クロスオーガ」だ。「クロスオーガとは、オーガを同軸上で正転と逆転を行うことで、硬い雪の塊などで機体が浮き上がってしまう反力をおさえます」と語るのは北条宏氏(本田技術研究所 第2開発室 室長)。オーガの中央部を正転として雪をかき出しながら、オーガの左右部分を逆転させることで機体を雪に押さえつけ浮き上がりを防止し、雪かき効率を向上させるのが新機能「クロスオーガ」の狙いだ。

 「正転と逆転の場所を現在とは逆の位置に入れ替えるなど、さまざまなテストを繰り返しましたが、これがベストでした。じつはホンダの耕運機にもこのクロスオーガを採用しているのですが、除雪機用に各部の設計を見直しています。もちろん特許も複数取得済です」(同)と胸を張る。

「クロスオーガ」を搭載した小型除雪機である新型「HSS970n(JX)」を紹介する神原史吉氏(本田技術研究所 第1開発室 完成機設計ブロック)。回転するオーガに注目。正転する中央部分と、逆転する左右部分(オーガの色が違う)が同軸で行われる
こちらが従来型の小型除雪機。オーガ部分は進行方向に向かって回転する正転するのみ
想定以上の高さがある雪に対して、従来型ではこのようにオーガの回転で機体が持ち上がってしまう。「クロスオーガ」には、こうした浮き上がりを抑える働きがある
大型除雪機の新型「HSL2511(J)」

 次に体験した大型除雪機の新型「HSL2511(J)」は、世界初のオーガアシスト機能と、ガソリンエンジン除雪機では世界初となるFI(電子制御燃料噴射)を採用した4ストロークV型2気筒エンジン(688cc)が特徴だ。

 「効率よく除雪するには、任意で定めたオーガ角度を一定に保ち続けることが重要ですが、雪路に傾斜がある場合、オーガ角度を傾斜に合わせて変化させなければならず、これが操作を難しくする要因でした。オーガアシスト機能では、上方10°、下方/左方/右方にそれぞれ5°、雪面の傾斜角度に応じて自動で一定の角度を保つようにオーガ角度を調整します。これにより熟練技術が必要だった1mを超える大きな塊の除雪が簡単に行えるようになりました」(同)という。実際、オーガアシスト機能が装着された新型と、この機能がない従来型とで同じ高さの塊を除雪してみたが、従来型で1m前進する時間で、新型では1.5mは優に前進することができた。また、キャブレター&チョーク式の従来型からFI化された新型エンジンへ換装されたことで、始動性の向上はもとより、15%ほど燃料消費量が節約できるようになっている。

大型除雪機「HSL2511(J)」は、農地に見られるビニールハウスの屋根を超えるほどの投雪性能がある
「HSL2511(J)」の操作パネル。誤操作を避けるため、レバーは機能ごとに分かれている。操作時はオレンジレバーを握ることが前提となっており、緊急時にオレンジレバーを離すことで機体の移動/オーガの回転などといった動作が止まる設計となっている
こちらはブレード除雪機「ユキオス」。ゴム製のスクレーパーで雪をかき集め、サイドプレートでかき集めた雪が左右にこぼれてしまうことを防ぐ。回転するオーガがないので安心して除雪ができるためお年寄りでも安心だ
大型除雪機の世界初は2つ。1つはエンジンのFI(電子制御燃料噴射)化で、もう1つが「オーガアシスト機能」の搭載だ

(西村直人:NAC)