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草刈機や超高圧洗浄機など、ホンダ汎用エンジンが支える「人に役立つ喜び」を体感してきた
クルマやバイクだけじゃない! もう1つのPowerd by Honda
(2015/3/9 15:49)
自動車やバイクではすでに多くの人に馴染みのある本田技研工業だが、1953年に背負式散粉機の動力源として2サイクル単気筒エンジンを農機メーカーにOEM供給を始めてから62年と、実はホンダの歴史の中では自動車よりも長い。また生産台数では世界2位、中でも業務用エンジンは世界1位と押しも押されぬトップメーカーだ。年600万台を生産し、その約7割がOEMエンジンであり、2014年末には累計1.2億台に達している。
今回はそんなホンダ汎用エンジンを採用し、我々の豊かな日常生活を支える農業や漁業、そして工事現場などで活躍するOEM先の製品を体験してきたので紹介しよう。
傾斜地でもOKの乗用草刈機
オーレックの「ラビットモアRM830」(乗用草刈機)というモデルを試乗してきた。このモデルは、農地や果樹園に生える背の高く強靭な雑草も刈り取る乗用タイプの草刈機で、ホンダのGXV390という出力7.6kW(10.3PS)の汎用エンジンが搭載されている。
試乗会場は冬の芝生という条件で、その刈り取り能力を体感することはできなかったが、無段変速の簡単な操作系とサスペンションが装備されたシートで快適な乗り心地。農業において重労働な作業の1つである雑草の刈り取りの負担は軽減されるであろう。なお、このラビットモアシリーズはすべて軽トラックに積載可能とのことだ。
卸売市場や倉庫で活躍する構内運搬車(通称:ターレー)
関東農機の製造する「マイテーカーV3 CNG」は、市場など閉空間での使用を考慮し、空冷4サイクルの汎用エンジン「GX390」のCNG仕様を搭載したターレット式構内運搬自動車(通称:ターレー)だ。この小柄なボディーで最大積載量は1t。最大出力6.6kW(9PS)のこのターレー、試乗を空荷で行ったためかかなり速く感じた。
超高圧洗浄機はもはや破壊兵器?
国内唯一の高圧洗浄機の専門メーカー、スーパー工業が誇る超高圧(30MPa=305.9kgf/cm2)洗浄機「SER-1230i」。カタログにも「高性能エンジン搭載モデル」と謳ったこのモデルの搭載エンジンは「iGX390」。エンジン負荷に応じて自動で最適回転数を制御し、オートストップ機能や再使用時の自動で再始動を行う高性能タイプ。
実際使ってみるととにかくパワフルだが、決して扱いにくい訳ではなかったのは意外だった。余談だが、この体験に立ち会ってくれたスーパー工業の細川さんはかつて「ほこ×たて」という番組で放送された「絶対に剥がれない両面テープ VS どんなモノでも剥がす高圧洗浄機」対決を見て同社への入社を決意したとのことだ。
道路工事でよく見かけるアノ機械はタンピングランマー
ダダダダダ! と道路工事で作業員が地面を押し固める作業をしているアノ機械、それが「タンピングランマー」だ。その国内シェアのナンバー1の三笠産業も、ホンダの汎用エンジンを採用している。といっても、このタンピングランマーに採用されている耐震性が高く騒音の少ないホンダの「GX100」は、汎用というより共同開発による専用エンジンだという。タンピングランマーは新興国における大規模工事用というよりも、どちらかというと先進国の都市型の土木工事に向けられたもので、それゆえEUの騒音規制などさまざまな条件をクリアする必要があり、そのことから専用に開発されたそうだ。
なお、膨大なバリエーションを持つホンダの汎用エンジンだが、カスタムエンジンの製作や、このタンピングランマーの例のようなOEM先との共同開発による専用エンジンの開発など、OEM先の製品の心臓部を担うメーカーとしての柔軟な対応もホンダ汎用エンジンの大きな特徴であろう。
ホンダ自身が作る汎用エンジン搭載製品
もちろん、ホンダ自身も豊富な汎用製品をラインアップしていて、その歴史も長い。「モーターサイクル以外でも人に役立つ商品が何かあるはずだ。君たちは、農業や漁業などの重労働で困っている人たちに、技術、科学で貢献することを考えろ」と語った本田宗一郎の想いが形になったのが、1953年に初の汎用エンジンを世に送り出した6年後の1959年に発売された真っ赤なボディーを持つ「F150型耕うん機」。ホンダが自動車を発売する4年も前の話だ。
今でも進化し続ける汎用製品について、ホンダの技術者は「自社のものがなければノウハウの蓄積ができず、結果的にOEM先によいものがお届けできません」と語る。そこに、その70%をOEM先に届け、ともに歩むホンダ汎用エンジンの姿勢が現れているようだ。
今やホンダのパワーユニットは、ガソリンエンジンのみならずモータとのハイブリッドエンジンやEV(電気自動車)、水素を使ったFCV(燃料電池車)、汎用製品にはカセットガスで気軽に利用できる製品も登場した。そして今年はホンダジェットのデリバリーがついに始まる。その進化がいくら多様化しても、今回の体験を通じてやはりホンダはパワーユニットを中心に据えた会社なのだと感じた。