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東洋ゴム、2016年に売上高4700億円、営業利益520億円を目指す新中期経営計画を発表
「中計'14 GO BEYOND~いまを超えていく」を策定
(2014/6/11 02:22)
東洋ゴム工業は6月10日、新中期経営計画「中計'14 GO BEYOND~いまを超えていく」を発表。都内で記者会見を行い、信木明代表取締役社長が新中期経営計画の概要について説明した。
同社は2011年5月に、2020年にありたい姿をまとめた長期経営ビジョン「ビジョン'20」、2015年までを展望した中期経営計画「中計'11」を発表したが、2013年12月期に「中計'11」で掲げた営業利益300億円、「ビジョン'20」で掲げた営業利益率10.0%を達成するとともに、2014年度中に「中計'11」で掲げた4000億円という売上目標を達成する見込みとなっている。5年をタームとして「中計'11」達成に向けた取り組みを進めてきたことについて、信木社長は「この間、新興国の高度成長に陰りが見え始め、一方では北米景気が力強く浮上してくるなど、世界経済に著しい潮目の変化が起こった。こうした経営環境の変化で当社は一貫して供給能力の増強をはじめ、当初計画に基づいた諸施策を着実に遂行してきた。円高の是正や原材料価格の安定推移といった外部環境の良化を追い風にできたことはもちろんだが、情勢の変化に応じて商品ミックス・市場ミックスの改善を行うなど独自のポートフォリオの強みを生かし、戦略的にリソースを活用したことで『中計'11』を前倒しで達成することができた」と振り返る。
この「中計'11」の達成を受け、今後予想される世界経済の動向を前提に、将来にわたる中期的な成長シナリオを新たに描き、さらなる高みを目指して策定されたのが、今回発表された「中計'14」となる。
「中計'14」は、2014年を起点に5年先の2018年にあるべき姿を見据えた上で、3年後の中間点である2016年に到達すべき具体的目標をまとめたもの。「弊社は来年に創業70周年を迎えるが、さらに30年後の2045年に100年企業として存続する企業を目指していく。現状に満足することなく、常に高いレベルを目指して企業力を磨くという強い意志を持ち、今回『GO BEYOND~いまを超えていく』とのスローガンを掲げた」と信木社長はいう。
具体的な経営目標としては、2016年12月期の連結業績として売上高4700億円、営業利益520億円、営業利益率11.1%、ROA(総資産営業利益率)10%以上が掲げられ、「今後、営業利益率10%超を確保し、さらなる事業拡大を目指す」(信木社長)と宣言するとともに「中計'14」の核となる「タイヤ事業」「ダイバーテック事業(ダイバーシティとテクノロジーを組み合わせて事業を行うという思想からできたセグメント)」などについて語られた。
タイヤ事業における事業方針は、「当社の強みであるSUV/CUV市場で確固たるブランドポジションを確立する」「差別化技術の具現化により、トップクラスの商品戦闘力を実現する」「トラック・バス用タイヤの商品開発力を強化」の3点を軸とした。世界的に見てタイヤの需要は旺盛だが、新興国企業の台頭によって市場獲得競争は激化しており、特に乗用車用タイヤのカテゴリーではその傾向が顕著だという。
一方、SUV/CUV/ピックアップトラックカテゴリーについては新興国企業の参入が限られていることから、「現時点で過当な競争には至っていない」と述べるとともに、「北米を中心とする同社のSUV/CUV/ピックアップトラックカテゴリーの製品は、性能・デザイン・品質においてその独創性を発揮するに十分なマーケティング力や高度な技術力の裏付けもあり、高い評価をいただいている。今後さらにこの市場環境に応じた商品構成を考え、市場攻略を図っていく」とし、同カテゴリーのタイヤ販売本数を2016年までに45%増(2013年比)とする考えを示した。
また、各市場での健全な成長を遂げるためには、地域ごとの自動車社会の成熟度、人とクルマの文化の違い、タイヤに対する理解度などによって市場攻略の優先度・商品戦略などが異なるため、「中計'14」では大きく3つの市場(北米、日本/欧州/中東、中国/東南アジア/中南米)に分け、それぞれの市場に合わせた戦略を立てている。
特に北米市場は“収入の源泉”ととらえ、「新車販売台数の伸びも著しく、なかでもSUV/CUV/ピックアップトラックは自動車メーカーが投入する新車販売の約4割を占めるなど、車種としてもすでにメジャーな存在。このカテゴリーにおいてさらに顧客支持を獲得するため、マーケティング力や商品力を強化するとともに、供給能力、販売力、顧客基盤など、あらゆる機能の強化を図る」としており、SUV/CUV/ピックアップトラック用タイヤのシェア率を2013年の4.5%から2016年までに6.0%まで高めたいとの目標が示された。
日本市場については「ミニバン専用タイヤ、軽自動車専用プレミアムタイヤ、低燃費タイヤ、スタッドレスタイヤなどで一味違う商品ラインアップを強化。付加価値の高い訴求力を持ち、市場での存在感を高めていく」と語られたほか、「欧州経済は底打ち感があり、評価の高い低燃費タイヤ、冬タイヤを活用した拡販を図る。とくにロシアにおいてはSUV/CUVカテゴリーのタイヤ販売をさらに強化する」「中近東は当社のタイヤに対する潜在需要が高いにも関わらず、十分な供給を行うことがこれまでできなかったが、供給能力の拡大に応じて現地代理店との連携をさらに図り、SUV/CUVカテゴリーの商品投入を積極化し、収益に寄与する安定的な成長市場として育成していきたい」との戦略が語られた。
また、グローバル市場での独自性を高めるためにイタリア セリエA「ACミラン」のプレミアムスポンサーになったこと、北米市場においてはオフロードレースへのスポンサードを行うなどしてブランド力を高めるという戦略が説明され、「各市場におけるブランド認知度の拡大と、イメージアップにつなげていく」(信木社長)とした。
そのほか、技術戦略においては「当社のSUV/CUV/ピックアップトラック用タイヤはその独自の意匠性と性能品質の優位性を強みとしているが、商品戦闘力の強化とコスト競争力の強化という双方を高い次元で両立するというのは、技術の裏付けによってはじめて実現可能なものであり、そこに当社の強みがある」と語り、今後さらに開発工数の低減、開発スピードのアップを図ることであらゆるセグメントにおける商品戦闘力を高め、素材技術や設計技術、生産技術の革新に取り組むとともに、「独創性、品質優位性、コスト競争力などを強化し、当社の目指す独自のポジションの強化を図っていく」との説明が行われている。
なお、今後の投資計画については2011年~2013年の810億円(タイヤ分野:690億円、ダイバーテック分野:90億円、その他:30億円)から、2014年~2016年には1300億円(タイヤ分野:1050億円、ダイバーテック分野:150億円、その他:100億円)に投資額が増強されることが明らかになっている。